殺気
「私の名前はアリス、あなたの名前は?あなたはどうして怪我をしているの?あなたは何で泣いているの?」
これが、アリスと俺の初めての出会いだった。
俺が初めてアリスに会ったときは引っ越しする前、家の近くの公園だった。
アリスは俺と同じくらいの身長で年も同じくらいだったのだろう。
そして、俺が当時住んでいた家は魔女たちが住んでいる世界のすぐ近くでもあった。
「いちいち、あなた、あなたってうるさいよ‥‥
僕は鷹弥だよ、心に穴が開いちゃってそれからずっと涙が止まらないんだ」
あのときは確か、妹を同じ人間に殺され、妹は魔女が殺したことにされた、小さかった頃の俺にはとても衝撃的な体験だった。
「そっかぁ、たかくん、私がその心の穴にすぽって入って
たかくんの涙をこんとろーるしてあげるよ!」
僕はそのときは何を言っているんだろう、としか思えなかった。だけど、アリスのその言葉を聞いたあとは一度も勝手に涙が、流れてきたことはなかった。
「もう、あのときにはアリスが魔女ってことを感覚的にわかっていたのだろうか、俺は。」
俺は魔女は嫌いじゃない、人間も嫌いではない、
俺は魔女の一部、人間の一部が嫌いだ。
その人間の一部が、まだ幼かった俺の妹を殺し、そして魔女のしわざにした。
「私がこの公園にいないときはどこの、どんな石でもいいの、石を2回叩いて、そのあとにその石を胸に当てながらわたしの事を考えて?、そしたら私がここにすぐ行くから」
俺はこの言葉をよく覚えていた。
俺が公園に着いて、それでもまだ彼女が公園にいないときはその石を2回叩き、胸に当て、彼女の事を考えると決まって5分としないうちに彼女が現れた。
「たかくん、いた!」
「今日は何して遊ぶ?お砂のお城をつくらない?いいお城を考えたの!」
彼女は男の子がよくやるような、汚れるような遊びばかりを選んできた。
「お城?ぼくもつくりたい!」
まだ小さかった頃の俺は彼女と遊ぶ内容が毎日新鮮でとても楽しかった。
だが、彼女と初めてあってから1年ほどが過ぎた、
そしてあの事件が起きた。
「ふざけんな!!俺はガキは嫌いなんだ!
なんだてめぇ!その目はよ!」
俺の母親が再婚したのだ、それも突然。
母親もろくな人ではなかったと思ってしまう俺がいるが、それでも育ててくれただけ、感謝。なのだろうか。
「てめぇ、次そんな態度をとってみろ!、どうなるかわかってるだろうなぁぁ!!」
俺と姉さんの義父はとても暴力的だった。
俺は怒られるのが怖くて関わらずにいた。
そんな日が数ヵ月続いた。
ある日、俺と姉さんは勇気を振り絞り、家でずっと酒を飲み、仕事をせずに過ごしているその悪に一言ぶつけた。
「あなた、ずっと家に居られても迷惑なの。出ていくか、仕事をして。」
「毎日、大きな声を出さないで‥‥」
「はぁ‥‥
あぁ?俺は前に言ったよな?どうなっても知らないぞって?」
「この家の中の王様は誰だ?
俺だよ!、王様は偉いから何をしてもいいんだよ!
それにしてもお前らのその目はムカつくな‥‥」
俺はこのとき本能的にこのままだと姉さんが危ないと察した。だけど子供が大人に勝てるわけがない。
だけど助けがほしい、だけど助けなんて呼べない。
「ん?、フフフ‥‥
何でこんな良いところにビール瓶があるんだろーなぁー??
あぁ、俺がさっきまで飲んでたからかぁぁ!」
俺にはこのとき言っている意味はわからなかった。
だが、ガキ一人でもすぐにわかったことがあった。
「逃げないと殺される。」
本能だ、本能としか言いようがない。
姉さんの手を掴み、本気で逃げるしかなかった。
王様だから何でもありはなしですよぉぉぉ‥‥。