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君にしか伝わらない。だって僕は・・・

作者: 矢光翼

一日一筆複数連題です!

お題「目玉焼き」「留守番わんこ」「西にいるあいつ」

ふと気付いて気が逸れる。朝ごはんだ。今日は目玉焼きかな。

昨日は卵焼きで一昨日はゆで卵。卵は朝に欠かせないから色んなバリエーションで卵を朝に食べる。お母さんが元々卵好きなのもあって家族みんな卵好き。最初は文句を言っていたらしいお父さんも、今となっては朝になったら卵を待つ始末。休日なんかはうるさいくらい。

さぁて出てきた朝ごはん。食卓の中心に醤油を置いて、ソースを置いて、塩を置いて。でも使われるのは醤油だけ。みんなそう。この家族は全員そろって醤油好き。これはお母さんの影響とかじゃなくて、ただ単に偶然が重なったのみで、ソースは味が濃いだとか、塩は刺激が強いだとか。

そんなこんなでご飯を食べ終える。そしてせっせと準備をしてる。各々好きな色のリュックを背負って、期待をリュックに詰め込んで、赤、黒、ベージュ、緑。みんなの個性が伺える。

「じゃあ、時間もちょうどいいし、行こっか?」

お父さんの言葉で家族全員リュックの紐を握ります。まだ車にすら乗っていないのに。ワクワクしてしまうんだね。いい家族。

「カーテン閉めなきゃね、泥棒に目をつけられたら大変」

シャラララ、カーテンが閉められて部屋は一旦暗くなる。太陽の光で明るかったんだねこの部屋。ますますみんな外が恋しくなったみたい。

「じゃあ、いってきます」

はい、いってらっしゃい・・・早く帰ってきてね?

「いってくるね」

いってらっしゃい、怪我しないようにね。

「いいこにしててな」

うん、心配いらないよ。楽しんできてね。

ガチャ、ガチャン、カチャッ。

・・・静か。

僕はみんなと行かないよ。だって僕はお留守番。

この家に飼われる、ペットだから。


犬としては不満は無いんだ。だってこれは家を任されてるってことだもんね。僕は張り切ってずっと扉の前で変な人が来ないか見てるよ・・・・・・・・・疲れちゃうからやーめた。

今日みんなは遠くへピクニック・・・あれ?キャンプだったっけな?たし、か・・・お泊りもするんだったなぁ・・・お泊りはピクニックだっけキャンプだっけ。お母さんが僕にちゃんと教えてくれたのにな。忘れちゃった。

どちらにせよみんなは今日から明日の夕方まで居ないんだ。その間僕は頑張ってこの家を守らないと。

ご飯はどうするかって、その疑問は案外あっさり解けちゃうんだ。

今日は特別に僕の食卓を見せてあげます。

・・・ほら見て!ずっと前買ってくれた自動でお水が出てくる機械!これのお陰で僕はいつでもお水がのめるんだ!そしてその横にはね、お母さんがおいていってくれたご飯が三つ!

目玉焼き、目玉焼き、目玉焼き!僕は三食目玉焼きです!飽きないよ。だってお母さんの作る目玉焼きは天下一品!僕は三食どころか六食でも不満を感じません!!

ま、まだ一つも食べないけどね。大事に大事に取っておく。いざ!という時に一つずつ食べてこの家を守るんだ!


さて、僕の紹介を少ししかしてなかった。僕の名前はコタロー。由来は良くわからないけど、みんな愛情込めて呼んでくれるからいいんだ!

僕が好きなのは目玉焼きと、お姉ちゃんの抱っこと、散歩!同じ景色だろうとお外の空気は美味しいから問題なし!・・・あ、家の中が嫌って訳じゃなくて、外のほうが色んな匂いがあっていいな~って・・・

こ、この話は無かったことにしてもらっていいですか・・・

さ、さぁ!えっとじゃあ、パトロールしよう!そうだね!

・・・違うよ。別に好きな子が外に居るからとかそんなんじゃなくてただ、その・・・はい、早く二階行くよ。


この閉じてる扉はお父さんの部屋!ついてって中に入ったことはあるけど、僕だけで入ったことはないなぁ・・・この扉どうしてか押しても開かないんだ。だから隣の部屋、お母さんの部屋!ここはお母さんのお洋服がいっぱいあって、凄く女の人の匂いがするんだ。よし、異常は無いね。最後はお姉ちゃんの部屋、なんだけど・・・僕気が進まない・・・だってお姉ちゃんの部屋、僕以外の犬がいっぱい居て、なんか寂しい・・・

あ、でも本物の犬じゃなくてその、動かない?そして平べったい?そんな犬がいっぱいなんだ。

おそるおそる覗いて~・・・よし何も居ない!じゃあ一階に戻ろっか!


じゃあまずはお風呂場~ここは僕の苦手な場所です。だってお父さんが乱暴に僕の体わしゃわしゃするし、なんか変な味の泡がいっぱいでてきて怖い・・・でも今はパトロール!そんな心配もない!

次はトイレだけど扉閉まってるし・・・いっか。リビング行こうリビング!

ここはさっきまで僕が居た場所ね、この家で一番広いからみんなと遊ぶスペースなんだ!ここはなんかあったら僕が気づくし、なんともないね!

じゃあ最後はお母さんのキッチン!ここは僕を含めたみんなのご飯を作る非常に大事な場所です!ここがなくなったら僕らはみんな家を失ってしまいます・・・その時は僕がみんなを助けるって決めてるんだ!だから心配しないでね、みんな。


さて、案内・・・じゃなくてパトロールしたら疲れちゃった・・・一旦お休みする・・・


さて、起きたよ。ここでいきなりですが問題が発生しています。僕の家の西側の窓をコンコンする音が聞こえてるんだ・・・不審者。不審者だよ。

カーテン薄いから見えてはいるけど・・・う~ん・・・

「見てるだろ、み~て~る~だ~ろ~」

う、うるさい・・・

「な、なにさ」

窓の向こうのそいつは嬉しそうに声を返してくる。帰って欲しいんだけどなぁ・・・

「暇になったからよ、入れてくれ!な?」

さっきからコンコンうるさいのは、あいつのくちばし。

文鳥の、ブンのすけ。お隣で飼われてて、ちょくちょく放されてるよくわからない文鳥。

「ごめん、生憎今日は誰も居ないんだ」

するとブンのすけは残念そうに、めいっぱい残念そうに、

「えぇ~~~なんでだよぉ~~本当はどこかに隠してるんだろぉ~~?」

って更にコンコンしながら言ってくる。

ち、違うんだってばぁ・・・本当に居ないのに・・・他の窓から見ればいいのにあいつはあの窓にしか止まらない・・・ちょうどいい止り場所が無いんだってさ。

「ごめんね、今日は君の相手をしてられないんだ。ほら見て、見える?僕のご飯」

僕はちょうど死角になってる僕のご飯を見せる。

「・・・あぁああーーー!!ズル!ズルいぞコタロー!」

「ずっ!?ズルくないもんね!これは僕が家を守る証なんだから!」

ブンのすけと話してるとつい言い返してしまう・・・毎度疲れて僕は寝てしまうんだけど、今日はそういうわけにもいかない!

「じゃ、じゃあね、バイバイ!」

半ば無理矢理ブンのすけから目を背ける。い、いいんだあいつにもたまにはこういうことを経験させておかなくちゃ!いつまでも僕が君の相手してるとは思・・・うぅ罪悪感・・・

う、後ろを見ても、いいよ・・・ね?

あ、しょんぼりしてる・・・

「コタロー・・・」

へ?え、あ、ん?

「な、なに・・・?」

「空き巣に気をつけてな~・・・」

パタパタとブンのすけは飛んで家に帰ってしまった・・・空き巣。わざわざそれを伝えるために・・・?

な、なんだ、いい所もあるじゃん。ちょっと見直した。


・・・まだかなぁ・・・お日様まだ落ちないし、まだ帰ってこないかぁ・・・お父さ~ん、お母さ~ん、お姉ちゃ~ん・・・

おなかすいた!お母さんの目玉焼き食べよっと。

美味しい・・・やっぱりお母さんの目玉焼き大好き!

さ~てもっと頑張らなきゃね。

空き巣、かぁ。ブンのすけもいってたし、気をつけなきゃ。


・・・あっ、ね、寝てた!え!?真っ暗、ま、真っ暗だ!!・・・あ、そっか電気点いてなかった。

みんな居ないから当たり前だね。ふむぅ・・・つまんないなぁ・・・ブンのすけを入れられれば・・・いやいや、それじゃ僕が疲れちゃうだけじゃないか。

まぁ暗くても見えるからね、もう一回パトロールしよう!・・・お姉ちゃんの部屋以外。


やっぱ何もないね、それにしても綺麗だから、僕特に見る必要ないんじゃ・・・

ガチャガチャ。

・・・え?

ガチャ。ガチャガチャ。

ま、まさか、帰ってきたのかな!!

「お、おかえり!早かったね、どうしたの?」

あれ、扉開いてない・・・

「チッ、犬か。まぁいい」

・・・誰?聞いたことも無い声・・・お父さんじゃ、ない。

カチャ、カチャ。

なに、な、に?まさか・・・あ、空き巣、空き巣!?

「ちょ、ちょっと!空き巣なの!?ね・・・ねぇ!」

な、なんで!?なんで僕の家に!??

「うるっせぇ犬だな、少しは静かにできねぇのか」

「だ、誰だよぉ!!なんで僕の家に入ろうとしてるの!?だ、誰も居ないよ!!!」

・・・カチャ。

そして、僕の家の扉が開いて、空き巣が入ってきた。


はぁ・・・こりゃ嫌われたかもな・・・

考えてみればいつもしつこかったし、コタローは俺の相手するの、頑張ってくれてたんだな。はぁ・・・

「なぁ、どう思う?俺コタローに嫌われたかな?」

「ん~?ブンのすけご飯?ご飯はさっきあげたよ?」

いや、えっと・・・そうじゃなくてあぁあまたケージ開けたよ違うんだって今はそういう気分じゃ・・・

「・・・元気ないね、コタローくんとなんかあった?」

そ、そう、それだよ!

「いやさ、今日コタローの家全員居ないみたいだから話し相手になってやろうと思ったんだけどなんか、愛想尽かされちゃったみたいでさぁ!俺どうしたらいいんだろ・・・」

「あら元気じゃない。も~騙されちゃった」

え?いや俺元気じゃないよ!?いやえっと自分で言うのもなんだけど・・・相当へこんでるよ・・・?

「はい、戻ってね。おなかもいっぱいでしょ?」

いや、そりゃおなかはいっぱいだけどさ・・・違くて!俺の話通じないもんかなぁ・・・

「----!!---!」

ん?今の、コタローの声だよな。どうしたんだろ・・・もう帰ってきたとかかな。

・・・なら、コタローの機嫌も直るだろうしいっか・・・

「-----!----の!?ね・・・ねぇ!」

あれ、なんか、おかしいな。いつものコタローじゃない。

いや、でもずっとコタローだけだったし、まぁ俺も話しには行ったけどやっぱ家族が一番。喜びは大きいもんな。

・・・明日、謝りに行こう。俺もご主人にケージに戻されそうだし。

「だ、誰だよぉ!!なんで僕の家に入ろうとしてるの!?だ、誰も居ないよ!!!」

明らかに、おかしいだろぉぉ!!?すまんご主人!手荒な真似する!!部屋の窓は・・・開いてる!ちょうど良かった!

「きゃっ、いっつ・・・ブンのすけ?ブンのすけ!どこいくの!?」

遠くへは行かない!隣だ!!

コタローが、危ない!!!

えっといつもの窓、はダメか!じゃあ他の入り口・・・いや家の人居ないんだから開いてる訳・・・

いや、玄関開いてるのか?

さっきコタロー・・・空き巣、家の中に入ってるのか!?

「コタロー!!」


「コタロー!!」

ブンのすけ!?な、なんで・・・?

め、目の前には空き巣がいるし、ブンのすけの声も聞こえる、なんで!?

「大丈夫かコタロー!」

「ブンのすけ!なんで!?」

コタローが空き巣に襲い掛かってる・・・?ぼ、僕も!!

空き巣の足に噛み付く・・・!うぐっ、絶対放さないぞ!

「なにしてんだコタロー!逃げろよ!」

「邪魔だ!!!」

「キャウンッ!?」

いっ、痛い・・・!なんで・・・僕壁にいるの・・・?

「邪魔な鳥だな・・・っ!」

「コタロー!!早く俺の家に!早く!」

ブ、ブンのすけも!!な、なんで声が出ない!!?

「ご主人に助けを求めろ!!隣だろうが!!俺がこいつを足止めするから!!!」

「なっ、かはっ・・・じゃあブンのすけが行ったほうが早いじゃんか!!」

「俺じゃダメだ!!ご主人に俺の気持ちは伝わらない!!お前が行かないと・・・!」

ブンのすけは必死に空き巣の腕を避けながら僕にこう叫んだ。


「この家、誰も守れないぞ!!!!」


ブンのすけ・・・!!

「す、少しの辛抱だから!!すぐ戻ってくるから!!」

「うるせぇんだよ、殺すぞ・・・!」

「や、べぇ!コタロー!早く!!」

僕は走り出す。動き回る空き巣の足の間をすり抜けて玄関へ!家を出たらすぐブンのすけの家に・・・!

「こ、コタロー!?」

ちょうど良かった!ブンのすけのご主人っ!

「ぼ、僕の家が、僕の家に空き巣が・・・そ、それより!!!」

僕は全ての願いを込めて最大の声で叫ぶ。


「ブンのすけが!!!!!!!」


僕ら動物の声が人間に届かないなんて知ってる。今まで僕が言ったこと、理解されないことなんていくらでもあった。でもこれだけは、伝わらなくても伝えなきゃ!早く、空き巣をどうにかしないとブンのすけが危ないってことを!!!


ご主人を家に連れると中には空き巣の姿、そして、まだ戦ってるブンのすけの姿。

「あ、空き巣!?」

そうだよ、ご主人!!空き巣からブンのすけは僕を助けてくれたんだ!!!だからお願い!ブンのすけを助けて!!!

「つ、通報しますよ!!!」

空き巣はご主人の存在に気付いたらしい。咄嗟に僕らの間を割って逃げていった・・・

ご主人はそれを見届ける前に家に入った。

「ぶ、ブンのすけ・・・?」

ブンのすけは力を使い切ったみたいで床に倒れてた。大丈夫、生きてて良かった。

「は、はぁ・・・生きてる・・・よく頑張ったね・・・」

優しそうにブンのすけを両手で包むご主人・・・僕のほうへ向かってくる。

「コタロー、危なかったね、ありがとう。私を呼んでくれて。コタローが居てくれてよかった・・・」

ち、違うよ、ご主人。僕は、コタローに助けられたんだ。コタローが居なくちゃ僕は、この家を守れてなかったんだ。

「コタローの、お陰だよ!」

するとコタローは疲れ果てた声で、

「・・・いいってこと」

そう言って寝てしまった。


次の日、みんなはご主人からの連絡でピクニック(?)を中断して帰ってきたらしい。僕も疲れて寝てたんだけど、突然抱きかかえられて驚いた。いつもよりもずっと強い抱きしめ・・・お姉ちゃんらしくないなぁ・・・

「よく頑張ったね、よく頑張ったねコタロー・・・!」

そ、そんなきつく抱きしめないでよ・・・嬉しくなっちゃうよ、えへへ。

お母さんもお父さんも僕のことを褒めてくれた。

でも僕は必死に、コタローが頑張ってくれたことを説明した伝わらなかった。きっとご主人はそのことを言わず、僕だけが頑張ったことにしたんだろうなぁ。

そんなことしなくてもいいのにな・・・

コンコン。

西の窓がなる。僕が気付くとお姉ちゃんも気付く。

「あ、ブンのすけ!おいで」

お姉ちゃんが手を出すとブンのすけはその上に乗る。

「コタロー、怪我とか無いか?」

・・・本当は心配性なんだろうか?

「ううん、ないよ。ブンのすけこそ」

コタローは胸を張って答えた。

「俺は強いからな!あんな空き巣へっちゃらだ!」

よかった、いつもの・・・ブンのすけだ。

「はいはいそうだね、じゃあ次からもよろしくね」

「つ、次ぃ!?い、いや~・・・それはちょっと・・・」

たじろぐコタローにお姉ちゃんは気付いてないみたいだ。当たり前。動物の気持ちが全部伝わるわけないもん。

だから僕の気持ちも伝わらないよ、コタロー以外には。


「嘘だよ、ねぇコタロー、一緒に目玉焼き食べよう?」

如何でしたか?楽しくかけました!やっぱ動物を表現するのは楽しいですね。

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