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悪の矜持  作者: runa
5/12

肆*逃げ道は自分で作るモノです。駄目なら、立ち向かうのみ。


予告してました、例のあの人登場編ですヽ(´o`;

後半は別視点が出張ってきます。


………あれ、何だかデジャヴ。

最近はこんなのばっかりな気がします。




ただ、自己分析は必要ありません。

それもこれも、ヒロインこと穂香さんの死んだ目を見るのが二度目になるからです。


ガッツリそれを視界におさめた時点で、何か色々なものを失った気持ちになるのは私だけなのかな…




因みにこれ、思わぬ余波をもたらしました。

私をここまで引き摺ってきた元軽男君の顔にドン引きと書かれてます。



……まぁ、そうですよね。



同姓の自分にさえ、それはちょっとと思わせる顔色の悪さと暗黒のオーラと虚ろな眼差し。

単独でもあれですが、まして三拍子揃っては。

うん。余程の物好きならいざ知らず、好意は持たれにくいですよね。




……あれ、何だろう。段々ヒロインへの感情が七割同情、二割虚しさ、一割その他まで比率が変わってきている気がします。


そうそう、その他については突っ込まないことをお願いしたいです。

ほら、あれですよ。



人には割合は違えど、灰色の部分がありますから。




さて、そろそろ心の準備はいいでしょうか。

気持ちの整理は付きましたか?

…………ええ、はい。そうですよね。

それはお前だろ、と。

そして早いとこ状況を説明しろと。




ヒロインが死んだ目をして、保健室のベッドに撃沈している理由。


それは恐らく、彼女の側に立つ保険医の存在に依るものと考えられます。

因みに作中における保険医の基本情報とビジュアルデザインが本来どのようなモノだったか。




初っ端から遠慮無く言いましょう。



隠れロリコンです。

それが紛う事なき事実です。

…………いやいやいや。その目は止めて。少なくとも私には向けないで頂きたいです。


あと容姿についてですが、双眸は琥珀色。髪は蜂蜜色のさらさらヘア。1/4仏ハーフです。


…………少し思い返しただけで胸焼けしてきた。


以上です。

ええ、それ以上でもそれ以下でもありません。

寧ろ察して。これ以上細部まで語りたくない。


うん? だってそうでしょう?


職権乱用に留まらず、ルートによってはヒロインの拉致監禁(これ犯罪)に加えて保健室のベッドを血塗れにする狂人ですからね。


そうなんです。狂人なんですよ。

この作中で最も危うい面を秘めたヤンデる人です。


勿論、透子様も多大な被害を被ります。

最大の被害者です。


その上で、正直に言います。

この人のことは、メインヒーローを除外すれば作中で一番嫌いでした。

何故二番目に数えない……?

それは、あの最大の元凶が嫌いを超えた上の扱いになるからですね。

それはさておき。


過去形で語るのは、けして今は嫌いではないからという話ではないです。

ただ、まだ未知数というだけですね。


それは何故か?

ええ、そうなんです。今回も例外無くバグですね。


なんか違う。

方向性……いや、雰囲気。寧ろ全てかな。

全体に欠片も攻略対象オーラが見出だせないんですよね。



一言で言えば。


……髭もじゃである。

紛う事なき、そのふさふさ。

なんかサンタレベル………いや、森の精的な。

緑に染めたら取り返しがつかなくなりそうだな。



そんな様々をつらつらと考えて現実逃避していたというのに。




「ねぇ、せんせー? 具合悪いみたいだからこの子にベッド貸してあげてよ」



元軽男君、空気を読んでください。



「いえ何だか急に元気になりましたこのまま教室へ戻ります失礼します」


うん、ばっちり。

殆ど息継ぎ無く言い終えて、そのまま踵を返します。

…………いや、うん。まぁね、何というか肩を後方からガッチリ固定されたよ?

一歩も進めてないよね。


というか、速いね。

髭もじゃ思ったより動きが機敏。


あとね、正面で顔を覗き込んでくる元軽男君に言いたい。

切実に止めてほしいな。




「もう、…無理しちゃ駄目だよぉ? 顔色真っ青だし」



それはそうですよ。

この状況に青ざめているんです。


ほんと勘弁して。

誰が好き好んで狂人設定に関わりたいと思うのかな。




…………現にもう、何だか不穏な呟きが髭の奥から漏れ聞こえてきてますから。



「……うん。やっぱりまともな方がイイ……」

「……生臭いのは勘弁。食欲も失せるよね……」



知らんがな。


生臭いのが嫌いな男が、何故ベッドを血塗れにするのを躊躇わなかったのか。

寧ろそちらが疑問です。


後方から至近距離で髭に覗き込まれて、最早生きた心地がしないのですが。




……これセクハラで訴えたら、解雇出来ないかな?


いや、でも実際は決定的な行為が立証出来ないと難しいらしいね。

それに仮に訴えたとしても。

風評被害を受けるのは双方になる。

被害者であっても、それからは逃れられない。

泣き寝入りの現実はこうした背景も影響するから。


しかし、誰だ。

こんな危うい奴を採用したばかりか絶好の狩り場を与えるとは。

狂気の沙汰だよ。

……教職員のモラルは大事だ。見に染みて感じる。

だから助けてください。

もうこの際、贅沢は言わない。

元軽男君。君でも構わないよ?



チキンの自分が明確な拒否を口に出来ると思っているなら、それは大変な間違いである。


目は口ほどにものを言う………

今こそそれを証明してみせようじゃないか………!!





じっと見る。

それはもう、瞬き一つせずに涙目。

気付いてね、元軽男君。

そうだよ、君だよ。

これで読み取れないなら、それはもう人として終わっていると判断するが宜しいか………?!



そしてSOS目線を送ること暫し。

幸運にも、元軽男君は人として終わってはいなかった。




「……ちょっとー。せんせー? セクハラだよ、それ。近すぎ」



その指摘で、ようやく肩の拘束が解けた。

それはもう、名残惜しげな指先の熱を感じましたよ。

でも、それはさておき。



元軽男君、代弁ありがとう。

君にはとても感謝してるよ。

そもそもここへ引き摺ってきたのは君だけどね。

今更それは気にしないよ。

さあ、拘束はもう無い。

とにかく今は、ここを脱出して平穏な教室へ戻ることだけが最優先である。



しかし、である。

実際はこの程度で退くような髭もじゃではなかった。



「待って。……顔色悪いね。取りあえず熱を測ろう……」



後方から掛かる声。

え、なんで急にまともな発言をと混乱したところからはた、と我に返る。


唐突かも知れないが、作中設定から説明しよう。



これは奴の罠である。十八番だ。

この保健室には、実際のところ2つの温度計があるが一方は壊れている。

それはわざと壊れたものを置いているのだ。


それを口実に保健室に留め置かれたら、奴の思う壺である。

その後に起こるであろう悲劇については口にするのもおぞましいものだ。



…………やばい。ここで流されたら、透子様を守るどころか先に自分が壊される。




何故にこんな地味顔に目を付けたのかは知らないが、やはり現状のヒロインとの落差分が本来の選定眼を曇らせているのだろうと察する。


普段のヒロインビジュアルなら、奴は目移りするまでもなく狙いを一点に定めたことだろう。

それが、この不測の事態。


……銀縁君。君のバグがまさかこんな形で火の粉を飛ばす結果になるとはね……




もう、いいや。

面倒だからここは第三者を巻き込んで終わらせよう。

許せよ、元軽男君。

でも、君には本当に感謝しているからこの借りは必ず返すよ。



内心の呟き。

心のなかで彼に頭を下げてから、行動に移した。
















うん?

結果はまずまずでしたね。

取りあえず解放された今は、ひたすらに安堵です。




ただ、やはり元軽男君には悪いことをしましたね。









あの後。

渡された体温計を脇に挟まず、手に持ったまま直接切り込みました。



「先生? この体温計壊れてはいませんか」


この発言に顔色一つ変えず、口許に僅かの動揺も見せないあたりは流石です。

やはり、一筋縄でいくはずもない。


しかし、こちらも伊達に記憶を思い出したわけではないんですよ。先生?


すかさず、次の手に打って出る。

ここで肝心なのは、合間に介入を許さないことだ。



「縹さん…? 一度試しに体温を測ってもらえないかな。その後なら私も安心して測れるから。お願いできますか?」



納得、ではなく安心と言い換えたのは牽制の意味合いもあったりする。

現に、この発言を受けた髭もじゃの口許は完璧に引きつっている。




縹 尚人。

その名前が誰を指しているかは言うまでもありません。

決意通り、こうして元軽男君を巻き込んだのはこの方法以外、この場を穏便に脱出する手段が思い付かなかったからに他ならない。

それでも一種の賭けだった。

恐らく、名指しで嘆願された以上は彼もそれを無下にはしない。

その予測に賭けて、敢えて巻き込んだのだ。

結果として、その読みは正しかった。



名を呼ばれた彼は、束の間目を瞠ったけれど。

次には花開くように微笑んで見せた。



「うん、いいよぉー。 体温計貸して」



こうして縹君の手に渡った体温計が一体何度を叩き出したかと言えば。


…………聞いて驚け39度9分である。

…………おいおい、である。



これに爆笑した縹君と、髭に覆われて尚も不機嫌さを隠せないままの保険医を後に残してようやく自分は保健室を脱出したという経緯である。



やれやれ、疲弊したよ。

今の自分は何よりも心の潤いを望みます。

はぁ………、出来ることなら今日中に透子様の姿を遠目でいいから眺めておきたい。

やってられないよ、全く。

それ以外にこの砂漠化した心を潤す術は無いように思われる。






つらつらと考えながら『鵲橋』を中程まで渡ってきたところで足が止まる。



思いがけず、視界に入ってきたそれに思考は完全に空白に染まった。










それは、圧倒的存在感を主張しながら嗤う。



笑みというにはあまりに凶悪なものを感じさせるそれであり。


その姿を前にして、考える間もなくその名が脳裏を過った。





天正院 暁人。





この作中のメインヒーローにして、透子様を裏切り死に追いやる元凶かつ災厄。



『鵲橋』で意図せず向き合った状況で、放たれた一言目は完全に想定外だった。







「よォ。………待ってたぜ、前世持ち。初日から散々だなァ?………」


「………………?!!」




予想を越えた事態に絶句した少女。

それを満足げに観察していた彼は、しかし続く表情の変化に僅かに眉を上げる。




少女は、それはもう晴れやかな笑みを浮かべて見せたのだ。





ただし、それは好意的な色を一欠片も含まない。

純粋な敵意から作られた表情だった。


そこを履き違えれば最期、その笑顔のままで刺殺されそうな純度の悪意だ。



それを確認した彼は、久方ぶりに覚える興奮に口の端を歪め、再び嗤う。




端から見れば、微笑みあっているように見えるかもしれない。

しかしその実、互いの真意を知れば一転してうすら寒ささえ覚える光景である。




そして、少女がとうとう口火を切った。



「先の発言を聞いて、正直肩の荷がおりました。これでようやく、欠片の罪悪も覚えずに貴方を引き摺り下ろすことができます」



その発言に対し、彼はその笑みを一層深める。



「………言うねェ。悪くない。………お前の存在についてはアイツから聞いていたから、それとなく行動は見せてもらったぜ。その上で、総評だ。お前なかなかイイ味出してるわ。………光栄に思えよ、前世持ち。お前はもう俺の獲物だ」



凄惨な笑みを浮かべたままそう言い放ち、少女を見据えるヒーロー。


一方で、凄絶な笑みを欠片も崩さない少女は地を這うような声で告げた。




「それは此方の台詞です。貴方こそ覚悟してください。…………天正院 暁人」







まさに善と対峙し、悪を地で行く台詞を読み上げるのにはこれ以上望めないほど凶悪な声。


しかし少女はこの時点で気付かない。

根本的にはどちらも善とは似ても似つかぬ様相であることに。



こうして火蓋は切って落とされた。


そして、それを遠方から見守る影が一つ。






***



彼女は双眼鏡を手に、呟きを溢す。




「やっぱり来てくれたね………蒼太。 姉さんは嬉しい」


彼女は呟いた口許を緩やかに綻ばせ、近いうちに叶うであろう弟との再会を夢見る。


嘗ても今も、彼女が本当の意味で愛してやまないのは事実ただ一人であり。

この世界で、この姿に生まれ落ちたことも全ては必然であったと思っている。




久遠寺 透子。

彼女に生まれ落ちた私。


一度は絶望しかけたけれど、ただ一つ残されていた希望を胸にこれまで生きてこれた。



あの子は、きっと私を『久遠寺 透子』を守りにやって来る。


もし、その時が来たら躊躇わない。

あの子と共に戦って、今度こそ共に生きられる世界を勝ち取ってみせる。


その思い一つ。

ただそれだけが、この世界で私を支える希望。



時は来た。

姿は変わり、少女の姿で入学してきた弟。

けれど、不思議ね。

あの目だけは間違えない。

あの、年に見合わない凪いだ水面のような双眸。

一目で分かった。




「………それにしてもヒロインが役に立たない。これだから夢見る少女は駄目だわ。お陰であの子にフラグが乱立………あぁ、もう。面倒ね。でも仕方ないか………あの子を囲む害獣は順々に駆逐していくとして……まずは、顔合わせよ。ふふ、違うか。再会ね。楽しみだわ………」





少女を巡る攻防は、まだ始まったばかりだ。



ここまで読んで頂いた方々へ感謝を込めて。


ここまでで、一端一区切りですヽ(´o`;


変人変態バグまみれの、このカオス……

何とか手綱をとって最後まで主人公には、頑張って貰おうと思います。


次回は回想編、続いては逃亡編に入っていく予定です。

少なくともあと一人、バグ持ちが登場予定です。


宜しければ、今しばらくお付き合いくださいませ。

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