序章
「・・・・・・」
少し、緊張していた。
女の子のケータイに連絡することなんて何でもなかったはずなのに。
保坂優斗は、自分がそんなことを考えていることに少し、驚いた。
「なんでだろ・・・。」
優斗はひとりつぶやいた。けれど、理由は自分自身が一番よく知っていた。
彼女は初恋の人であり(ついでに言うと小学校以来連絡も取ってないし)、しかも得体の知れない不思議な力を持っているからだった。
「覚悟決めるか。どうせ、このままじゃ俺の手には負えなくなるし・・・」
そう言って、やっと覚悟か決まったのか、優斗はケータイをいじり始める。
慣れた手つきでアイコンを彼女の名前に合わせる。
「おしっ、いくぞっ!」
何をそんなに尻込みしているのか・・・。
そんな自分に情けなさを感じながらも、ケータイの決定ボタンを押す。
トゥルルル・・・・。
『はい。こちら雫ですが〜』
少し気の抜けたような女の子の声が聞こえた。
「俺・・・優斗だけど。覚えてる?」
一瞬、驚いたような気配が、電話越しに伝わってきた。
が、それもほんの数秒、すぐに彼女―――雫は気を取り直したように答えた。
『覚えてるに決まってるでしょ。それで、用件は何?』
雫の比較的普通な態度に内心ほっとしながら、優斗は用件を伝えた。
「里中煉が、霊に取り憑かれてる。・・・・しかも他の霊を、どんどん取り込んで強くなってる。―――助けてほしい。」