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プロローグ
崖の上に一人の少年と少女が佇んでいる。
お互い向かい合っているが、二人とも悲しい顔で口を開こうとしない。
風が吹き、少女の長い金髪を撫でる。
彼女は唇を噛んで涙を堪えているようだった。
少年は悔しそうに両のこぶしを握り締めている。
わかっていても、避けられない別れ――。
自分達で選んだ道――。
夕日が少女の背後で紅く煌めく。
少年の背後から黒い翼が現れ、少年をゆっくりと覆っていく。
少女は耐え切れず、少年に手を伸ばした。
しかし、その手は届かず空を切る。
黒い翼が少年を覆いきる寸前、彼は悲しそうな微笑をみせた。
「さよなら」
それが、少年が少女に向けた最初で最後だろう別れの言葉。
少年の姿は黒い翼とともに消え去った。
別れを告げられた少女は、堪え切れずに涙を流した。
――そして、時は流れて……。