夜明け2
その後、ローゼン伯爵ことミシェルはカイル将軍に強引頼んで今回の夜会に代わりに出席してもらうことに成功した。まあ、代償は高くついたが…。
ミシェルは、夜会に参加しないわけではない。ただ、ローゼン伯爵としては参加するつもりはないだけである。
ミシェルは、自宅に帰ると今夜の夜会に参加する父ロベルトが支度を終え、家を出る寸前のところだった。
「父上、今夜の夜会では計画通りに。」
「ああ、そなたもそのように計らうように。」
そう、ロベルトは言うとそのまま侍従を連れて出て行った。
そして、その夜の夜会はミシェルや父ロベルトにとって思わぬ事態を引き起こすのである。
「フランツ、今日は付き合ってくれてありがとう。」
カイル将軍は、結局フランツを連れて、ワーレンベルグ子爵の夜会にやってきた。
「いいや、かまわない。君の力、もといローゼン伯爵の手助け出来て幸いだよ。」
「ローゼン伯爵は、父親のローゼン侯爵、いやローゼン外務大臣のお手伝いで忙しいようだ。」
ミシェルが情報部にいることは極秘なので、カイル将軍はフランツに情報部の仕事が忙しいとは言えなかったのである。
「それに、彼の祖父ローゼン公爵は、宰相を務めている。その仕事も、ミシェルは手伝っているのではないか?」
「そうかもしれない、ミシェルはあまり俺に公務について語らないしなぁ~。」
夜会はまだ始まったばかりであった。
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「今日の夜会にはあの方が来る…。」
ワーレンベルグ子爵は、メレヌス帝国からくるとある要人について思いを馳せていた。
その要人は本来なら決してこの国に足を踏み入れることが出来ないはずの人だった。
「失礼します。旦那さま、皆さまが下でお待ちになっています。」
「ああ、わかった。」
そうワーレンベルグ子爵は、その時自分を呼びに来たメイドを一瞥した。黒い髪に茶色の目、あまり見たことないが端正な顔立ちだ。最近入ったのだろうか…。
「ああ、そうだ!あのメイドなら使えそうだ。」
ワーレンベルグ子爵は、突然思いついた秘策に目を輝かせた。
そして、一方廊下を歩く先ほどの侍女の方はと言うと、ワーレンベルグ子爵がこれから迎える要人の事を考えていた。
「さて、いったい何する気なのか?物騒なことが起きなければいいが…。」
そう心配するメイドは、今日自分が参加できなかった夜会の事を思い浮かべた。もちろん、夜会に出たかったわけでない。しかし、今のようなメイドのお仕着せをきてこんな成金趣味の夜会に出たかった訳ではない。全ては、国王陛下のために…。情報部の格言を思い浮かべながらメイド、ことミシェルはため息を着いた