1:開幕
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目が覚めた時、視界は暗かった。
頭が重い。意識が霧の中を漂うように不明瞭で、最後の記憶が思い出せない。ただ一つ確かなのは――首に、何か冷たく硬いものが嵌められているということだ。
「……っ」
アリサ・ストームハートは首筋に手をやった。金属の感触。指二本分くらいの太さの、継ぎ目のない首輪。引っ張っても、爪を立てても、びくともしない。言いようのない危機感が背筋を走る。
「ここは……」
周囲を見渡す。薄暗い広間。床は古びた板張りで、壁には「HOPE TOWN COMMUNITY CENTER」という色褪せた文字らしき模様。天井から吊り下がった灯は消えており、唯一の光源は正面のステージ上に設置された大型の板が放つ青白い光だけだった。
そして――自分以外にも、人がいる。
「……何だ、これは」
低く抑制された声。逞しい体格の女が立ち上がり、自らの首輪に手をかけた。その赤い瞳が一瞬光を帯びる。異様な気配にアリサの肌が一瞬粟立つ。だが――何も起こらない。
「力が……封じられている?」
「あれ? あれれ?」黒髪の少女が首輪を触りながら不思議そうに首を傾げた。「これ、取れないんだけど。面白い仕掛けだね」
「面白い、だと……?」細身の少女が冷たい視線を向ける。「状況を理解していないのか。これは明らかに――」
「拘束だ」
長髪の女が淡々と言い切った。彼女は既に立ち上がり、広間全体を観察している。
「出入口は三つ。全て施錠されている。窓は高所にあり、鉄格子。我々は完全に閉じ込められている」
「なんてこと……」
素朴な作業着を着た女が深く息を吐いた。彼女の優し気な顔にも、動揺が浮かんでいる。「誰が、何のために……」
「おい、誰かいるのか!」
赤い鎧のような服を着た女が大声で叫んだ。「こんな真似して、タダで済むと思うなよ! さっさと出てこい!」
その瞬間――
ブツン。
ステージの板が点滅した。
そこに現れたのは、顔の見えない人影だった。シルエットだけが浮かび上がり、声は不自然に歪んでいる。
『皆さん、ようこそ。無人島"アバドン・アイランド"へ』
「……っ!」
生地を重ねた豪勢な服の女が僅かに息を呑んだ。彼女の冷静な表情が僅かに歪む。「無人島……拉致されたということでございますか」
『これより、皆さんには特別なゲームに参加していただきます。ルールは極めてシンプル――』
『制限時間72時間以内に、最後の1名になること。それが、このゲームの唯一の勝利条件です』
「……最後の、1名?」
不吉な予感が一気に加速する。アリサは思わず声を出していた。
『はい。つまり――他の参加者を全て殺害してください。殺し合い、最後に生き残った者の勝利です』
『勝者には、十分な治療と元の場所への帰還をお約束します。どうぞ存分に殺し合ってください』
静寂。
誰も、何も言えなかった。
『皆さんの首に装着されているのは、爆弾内蔵型の首輪です。次の条件で、自動的に起爆します』
人影は淡々と言葉を続ける。
【起爆条件】
1. 首輪の分解を試みた場合
2. 島からの脱出を試みた場合
3. 指定された「禁止エリア」に一分以上留まった場合
4. ゲーム開始から72時間経過しても、生存者が2名以上いる場合
「……嘘だろ」
赤い女の声が震えた。彼女の拳が、ギリリと音を立てる。
『起爆すれば即死します。逃げる術はありません』
華奢な少女の淡い銀白色の髪が、わずかに発光した。「……死……処分? い、嫌……! 外して!」
「……落ち着いて。怖いと思うけど、今は――」
白衣を着た女が、震える手で華奢な少女の肩に触れようとする。しかし少女は微かに悲鳴を上げて避け、床に蹲った。
「そう?」
この場で特に小柄な少女が首輪を引っ張りながら呟いた。「結構かっこいいじゃん、これ。あはは」
『首輪には、地図と参加者名簿の表示機能も搭載されています。禁止エリアや生存者の確認にお使いください』
「……親切なこと。無駄に死なれては困るとでも」
豪勢な服の女が挑発するように言う。人影は、無視して続けた。
『最後に。皆さんには、それぞれ"支給品"が配布されています。ゲーム開始と同時に、この島のランダムな地点へ転送されます。支給品は、転送先で確認してください』
黒髪の少女が小さく笑った。「へえ……本格的だね」
「笑ってる場合か!」赤い女が叫ぶ。「こんなふざけたゲーム、誰が――」
『なお』
冷たい機械音声が、赤い女の言葉を遮った。
『このゲームへの参加を拒否することはできません。ゲーム開始を妨害する行為、あるいはルール説明中の暴力行為も、首輪の起爆対象となります』
赤い女の体が硬直した。彼女は拳を握りしめたまま、動けない。
『それでは――』
画面の中の人影が、ゆっくりと手を掲げた。
『ゲームを――開始します』
ピピピピピッ――
全員の首輪から、冷たい高音が鳴り響いた。
「待て! ふざけ――」
床が光った。
いや、正確には床の下から光が溢れ出し、11人全員を包み込んだ。視界が真っ白に染まる。
「くっ……!」
アリサは目を閉じた。体が浮遊する感覚。重力が消失し、方向感覚が失われる。
そして次の瞬間――
土の地面に叩きつけられた。
「……っ、痛ぁ……」
目を開ける。そこは先程の広間ではなかった。
木々に囲まれた森の中。亜熱帯性の植物が生い茂り、湿った空気が肌に纏わりつく。遠くで鳥の鳴き声。風が葉を揺らす音。
そして――足元に、黒い布袋が一つ。
「これが……支給品?」
アリサは袋を開けた。中には――
戦術ナイフ。
刃渡り20センチほどの、実戦向けのナイフだ。
「……マジかよ」
彼女は周囲を警戒しながら、ナイフを腰に差した。
首輪から、再び冷たい高音。
ピピッ。
『ゲーム開始。現在時刻12:00。制限時間72時間。生存者11名』
抑揚のない音声が、無慈悲に宣言する。
『地図と名簿は音声で呼び出してください。健闘を祈ります』
音声が途切れた。
森が、静寂に包まれる。
アリサ・ストームハートは、拳を握りしめた。
「……冗談じゃない」
彼女の脳裏に、この場に居ない相棒の顔が浮かぶ。
傭兵として、同じ戦場で共に戦った日々。依頼の報酬を分け、笑い合った時間。
たった二人で大量の敵を切り伏せ包囲を潜り抜けた後、「お前となら、どこまでも行けるぜ」――そう言った、あの日。
「絶対に……生き残る。あの影野郎をブッ殺してな!」
アリサは走り出した。
ゲームが、始まった。
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【初日 12:00】
【生存者: 11名】
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あまり参加者が多いとキャラを生成・登録する手間と使用量だけで終わってしまうので全十一名という少数で行うことにしました。
開幕は「見せしめ」として一人死亡させるのがお約束。
しかしAIがやってくれず、私もすっぱり忘れてたせいでそのまま進行することに。さっそく古典から外れてしまった。
支給品はAIに決めてもらいました。各自一つずつ、食料や水も無し。ケチなAIですね。
ちなみに禁止エリアと放送はAIじゃ扱えないだろうと思ったのでルールから外したんですが、禁止エリアはAIが本文生成時に勝手にルールに入れてきました。後から考えるとやっぱりあった方が良かった。ありがとうAI。




