殺伐
掲載日:2026/03/08
「さつばつ」ってことばの響きがまた。
干からびた花弁へと
寄りつく気まぐれな蝶など居ない
しゃがれ声の人魚が歌う岩礁へと
舳先を向ける船乗りも居ない
誰も優しい言葉だけ かけて欲しくて
疲れた背中を晒したのかもしれないと
わかったぶんくらいはおとなになった気がした
流せるうちに涙は流しておけ
渇いた砂に心が埋まる前に今を惜しんだ
流せるうちに涙は流しておけ
もの想いに軋まない面影はただの記憶で
やがて過去という名の墓標に成り果てるけれど
こけ落ちた頬をしても
愛しく可愛らしいあなたが居ない
つののはえた天女に惹かれ雲をのぼり
たどり着いても天国などはない
どうも優しい手触りに欠けた世界だ
気休めばかりでありがたいかと問われても
頷いてみせるたび賢くなったつもりか
流せるうちに涙は流しておけ
渇いた砂で心が埋まりかけた今じゃなおさら
流せるうちに涙は流しておけ
ものもらいで腫れあがる視界すらほんの刹那で
いずれ意味をなさない景色にあせてゆくだろう




