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陰陽師朝霧、異世界にクレームをつけにいく ~勇者召喚の裏で女神が雑すぎる件~  作者: 和幸雄大


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第7話 勇者と狐面(ミツネ)  

 エリシアと別れ、交易都市を出発し北西の街道を、符で馬を作りサトリと一緒に駆け走る。

 進行方向の安全確保は、馬にまかせて私は、遠見の術を使い先を見通す。

そして草原の向こう、崩れた砦跡で閃光が弾けるのがみえた。

「――はぁっ!」

 裂帛の気合いと共に打ち込む少年の声。

 光を帯びた剣が、黒い鎧の魔族と激しく打ち合っている。

 金属が軋む音。  

 魔力の衝突。  

 空気が震える。

 私は小高い丘に移動し、その戦いの様子を観察するこことにしたのだ。

 「……均衡ね」

 ぽつりと、戦いを見ながら私は呟く。

 勇者は強い。  

 確かに強い。

 だが、押し切れていない。

 相手は、漆黒の外殻を纏い、瘴気を盾にしている。

 勇者の剣は光を帯びている。  

 けれど、剣速が鈍い。

 呼吸が荒い。

 後衛の魔法使いが援護する。  

 僧侶が、防御結界を維持する。  

 闘気を纏った格闘家が側面から殴りかかる。

 編成は悪くない。

 でも――

「……前に出すぎ」

 勇者が踏み込みすぎた。

 魔族の刃が、横薙ぎに閃く。

 防げる。  

 だが、消耗が増える。

 このままでは、勝てても崩れる。

「京ちゃん、どうする?」

 肩のサトリが小声で聞く。

 私は一枚、霊符を指に挟んだ。

「均衡を崩すだけ」

 それでいい。

 霊符が空に舞う。

「――青龍」

 風が走った。

 勇者の背後を狙った瘴気の刃が、見えない力に弾かれる。

「っ!?」

 黒い鎧の魔族の顔が、驚愕に包まれる。

 勇者が、好機とみて踏み込む。

 その一瞬。

 魔族の障壁が揺らぐ。

「今よ」

 小さく呟く。

 さらに青龍の風が、瘴気の循環を乱す。

 魔族の鎧の外殻に亀裂が走る。

「うおおおおっ!」

 勇者が吠える。

 光の剣が、まっすぐに振り下ろされる。

 砕ける音。  

 瘴気が散る。

 魔族は崩れ落ち、黒い粒子となって消えた。

 静寂。

 草が揺れる音だけが残る。

 勇者があたりを、探る。

 真っ直ぐな目。  

 汗に濡れた額。  

 まだ幼さの残る顔。

 私は、丘を降り勇者の元へ駆ける。

 周囲を警戒していた勇者が、私の姿を見つけると狐面越しに視線が交わる。

「誰ですか」

 警戒。  

 でも敵意は薄い。

「通りすがりの術者よ」

「助けてくれたんですか?」

「均衡を少し動かしただけだよ」

 勇者の仲間たちが身構える。  

 魔法使いが杖を握り直す。  

 騎士が半歩前に出る。

 悪くない反応。

 私は勇者を見る。

 呼吸が荒い。  

 魔力の流れが強引。  

 消耗が大きい。

「あなた、休んでないでしょう」

「……そんな暇、ありません」

 即答。

 焦り。

 私は少しだけ首を傾げる。

「急いでるの?」

「魔王軍幹部を追っています。ここで止まれば、被害が増える」

 正しい。  

 でも。

「撤退は?」

「……」

 一瞬の沈黙。

 その隙に、全部見える。

「勇敢ね」

 狐面の奥で、私は目を細める。

「でも、それは持続しない戦い方よ」

 勇者の目が揺れる。

「あなたは、何を知ってるんですか」

「まだ何もしらない」

 本当だ。

 確証はない。

 だから。

「これから確認するところ」

 風が吹く。

 勇者は、少しだけ肩の力を抜いた。

「あなたは敵じゃないんですね」

 勇者は、念を押す。

「今のところは」

 それだけ言って、私は背を向ける。

「待ってください!」

 勇者が呼ぶ。

「名前を……」

 足を止める。

「狐面でいいわ」

「僕は――」

「知ってる」

 振り返らない。

 少年の背に、光がまだ残っている。

 強い。

 優秀。

 でも、何か急かされている感じがする。

 誰に。

 女神の力か別の何かか。  

 それとも。

「次は、もう少し余力を残す戦い方をしないと」

 それだけを残し、私は歩き出した。

 結論をだすには、まだ早い。

 まずは調査。

 戦場には、証拠が落ちている。

 そして少年の背中には――

 過剰な期待が、重すぎるほど乗っている。

 北西の空に、再び遠い閃光が走った。

 とにかく、最初の段階。

 神谷悠真の生存確認と所在確認はできた。

 物語は、ここから加速する。

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