第10話 勇者の戦い方
森へ入ると、周囲の空気が少し重く感じられた。
木々の間を進みながら、私は足を止める。
「止まって」
悠真が振り返る。
「どうしました?」
私は袖から一枚、霊符を取り出した。
「索敵」
霊符が淡く光り、空へ舞う。
霊力が森の奥へ広がる。
肩の上のサトリが小さく言った。
「京ちゃん、三つ」
「ええ」
私は頷く。
「この殺意――魔族ね」
ガルドが笑う。
「ちょうどいい」
拳を鳴らした。
その瞬間――
茂みが揺れた。
黒い影が飛び出してくる。
魔族兵。
悠真が剣を抜く。
「来た!」
鞘から剣を抜き放つ。
光が剣に宿る。
勇者の加護。
そして突っ込もうとした。
「待ちなさい」
私は言った。
悠真が止まる。
「え?」
その間に魔族が襲いかかる。
ガルドが拳で一体目を吹き飛ばす。
ルークが盾で受け止める。
リゼが火球を放つ。
フィーナが結界を展開する。
戦闘は、すぐ終わった。
魔族は三体とも倒れた。
森に静寂が戻る。
私は悠真を見る。
(……だめね)
「今の」
悠真がビクッとする。
「はい」
私は指を立てる。
「全部ダメ」
悠真が固まる。
リゼが吹き出した。
「いきなり厳しい」
ガルドが笑う。
「悠真ダメ出しだな」
私は指を一本立てる。
「一つ」
「突っ込みすぎ」
二本目。
「二つ」
「魔力使いすぎ」
三本目。
「三つ」
「撤退判断ゼロ」
悠真が苦笑する。
「……全部じゃないですか」
「そう」
私は頷く。
「全部」
リゼが肩を震わせる。
「容赦ない」
悠真は少し真面目な顔になる。
「でも、撤退判断は早すぎます」
「今まではこれで戦ってきました」
「ええ」
私は頷く。
「でもそれ」
「勇者の戦い方じゃない」
悠真が目を瞬かせる。
「え?」
ルークが静かに言う。
「確かに」
「勇者は隊長だ」
私は続ける。
「一人で突っ込むのは兵士」
「勇者は違う」
悠真は黙る。
私は言う。
「勇者が倒れたら」
「世界終わる」
ガルドが笑う。
「それは重いな」
リゼが言う。
「笑い事じゃない」
私は悠真を見る。
「だから」
「戦い方を変える」
悠真が驚く。
「え?」
「次の戦闘」
「あなた前出るの禁止」
「ええ!?」
ガルドが大笑いする。
「勇者ベンチ入り!」
リゼが笑う。
「それ斬新」
私はルークを見る。
「盾前」
「了解」
ガルドを見る。
「側面」
「任せろ」
リゼを見る。
「魔法先行」
「面白い」
フィーナを見る。
「回復待機」
「はい!」
最後に悠真を見る。
「あなた」
「中央」
悠真が言う。
「勇者なのに?」
「勇者だから」
私は答える。
「あなたは切り札」
「味方のピンチに出る」
悠真は少し黙る。
そして苦笑した。
「……慣れません」
「慣れなさい」
私は歩き出す。
森の奥から、また魔物の気配が漂ってくる。
そして私は思う。
この世界は――
戦い方まで、雑すぎる。




