届いた言葉
そのメッセージは、夜遅くに届いた。
通知に名前が表示された瞬間、心臓が少し跳ねた。
もう連絡は来ないと思っていたし、来ないほうがいいと思っていた。
だけど、開かずにはいられなかった。
「今までありがとう」
「迷惑かけてごめんなさい」
「でもそれが精一杯でした」
言葉は短く、そして少し揺れていた。
順番も、気持ちも、整っていなかった。
だけど、まっすぐだった。
画面を見つめながら、いくつかの記憶がよみがえってくる。
あの笑い声。
うまく言えずに黙り込んだ横顔。
自分が気づけなかったサインの数々。
何度も、すれ違った日々。
もしかすると、あの時からもう限界だったのかもしれない。
でも、それでも一緒にいようとしてくれたこと、
そして、最後に言葉をくれたこと。
「ありがとう」と言われたけど、
本当は、こちらこそだった。
どうか、あの言葉で終わらせたあなたが、
少しでも軽くなっていますように。
そして、誰よりもあなた自身が、
「精一杯だった」と、自分を許せていますように。
返事は送らなかった。
それがたぶん、あの人の望んだ「終わり方」だったから。
だけど、ひとりになった部屋の中で、
そっとスマホの画面を閉じながら、心の中でだけ言葉を返した。
「ありがとう。大丈夫。もう大丈夫だよ」って。