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復讐者D  作者: 木下 太一
Dの復讐
1/2

目には目を、歯には歯を

 冷たい鉄の床に寝転がり、粗末なシーツを頭から被る。私たちの小さな体が何とか入る位の大きさで、とても寝床とは思えない。


「ディー、寒くない?」


 一緒にシーツにくるまっていたエルフのエスが、心配そうに声をかけてかれる。

 彼の金色の瞳に移った自分を見て、思わずため息が漏れた。

 お母さんが褒めてくれた薄茶色の瞳も、お父さんが撫でてくれた黒髪も、くすんでしまってかつての面影はまるでなかった。


「寒いし、固いし、最悪」


「あはは……床冷たいもんね。ちょっと待ってて」


 ボウッ。と、エスの手のひらに炎が灯る。

 マッチの火程の小さな炎。それでも、ここでは十分に暖かかった。


「ありがとう。でもこれ、疲れるでしょ?」


「寒いよりは良い。それに人間のディーは寒さに弱いんだから、遠慮しなくて良いよ」


「ありがと……」


 ここは孤島の研究所。

 ある日住んでいた村から浚われたは、何日もかけてこの研究所に運ばれてきた。

 エスや周りにいるたくさんの多種多様な種族の子供たちも、同じ様な境遇だ。


 エスとディーと言うのは、アルファベットのSとDだ。この研究所では、私たちはそう呼ばれている。

 あんまりその記号で呼ばれるものだから、いつの間にか本当の名前で呼び会う事を忘れてしまった。


「こんなところ、早く抜け出したい……」


 粗末な食事や科学者たちからの暴力など、私たちはこの場所で人とは思えない扱いを受けていた。

 初めは助けを期待したけれど、この場所は巧みに隠されているようで誰かが助けに来てくれる様子はない。

 それにもう長いことここに閉じ込められている。外では死んだことになっているだろう。


「研究が終わったら解放してくれるさ、きっと」


「そうだと良いけど。全く、私たちが何だって言うんだろ」


 私たちが浚われた理由は、エスの炎の様な『異能』である。

 練習すれば誰でも使えるようになる魔法とは違う、特殊な力。それを研究するために連れてこられたのだと、科学者の誰かが話していた。


 小さな炎に身を寄せていると、ビュウッという冷たい風が吹いてシーツが捲れる。

 かと思うと、大きな一対の純白の翼がシーツの中に滑り込んできた。


「私も入ーれて!」


 勢いよく現れたのは有翼人のアイ。

 私よりも小柄な彼女は、その背丈の2倍はある背中の大きな翼を広げて、私たちを包み込んだ。


「アイ!? 寒いから風吹かせないでよ! 火も消えちゃう!」


 彼女の『異能』は風。

 アイはしょっちゅう風を吹かせては、私たちにイタズラを仕掛けてくるのだ。


「ごめん、ごめん。でもほら、これ持ってきたからさ」


 悪びれる様子の無いアイが胸に抱えているのは、一つの絵本。

 ここに入った時にこう言う物は全て没収された筈だが……。


「どうしたの? それ」


「盗んできちゃった」


「ぬすっ……」


 アイの行動力に、私は顔をひきつらせてしまう。


「あはは。相変わらず手癖が悪いね」


 エスは笑っているが、私は全く笑えなかった。


「笑い事じゃないわよ。もし見つかったら……」


「大丈夫だよ。読んだらエスに燃やしてもらうから」


「もう……」


 確かにそれならバレないだろうが……。

 雑談もそこそこといった様子で、アイは絵本を広げる。

 仰々しく咳をすると、アイはコロコロと鈴が鳴るような声で本の朗読を始めた。


『昔々、世界を大きな災いが襲いました。

 神々は災いへと挑み、勇ましく戦いました。

 しかし災いは止まらず、世界は滅びました。

 その世界の神々は酷く悲しみ、或いは敗北を恥じ、次々と天へと還って行きました。

 しかし、一人の神様がこう言ったのです。


「もう一度世界をやり直そう。今度は失敗しないように」

 

 残った神々は賛同し、再び世界を創り直しました。

 土を捏ね、海を潤し、太陽で照らし、月を浮かべました。


 そうして完成した【方舟】は、美しい光で包まれていました。


 最後に神々は自分の眷属として様々な種族を作り出し、その中でも特に優秀だった12人にこう言いました。


「世界を守れ。二度と滅びないように」


 12人の眷属は【12賢人】と呼ばれ、その意思を継ぐ者たちが今も世界を守っているのです』


 そこに描かれていたのは、誰もが知っているこの世界の始まりに関する話だった。

 私たちはそれぞれの種族を産み出した神様を崇拝し、加護を得ている。

 神様はそれぞれの"御殿"に住んでいるのだが、神様によっては世界中を練り歩いたり、御殿から抜け出して隠れ住んでいたりしている。

 直接神様に出会ったことは無いが、私の村では年の始めに祈りを捧げるのが伝統となっていた。


「いつものお話じゃない、つまんないの」


 所々変わっているが、大方昔から聞かされてきた話と同じだ。それが私の感想だった。

 しかしアイはそうでもなかった様で、えー。と唇を尖らせて不満げである。


「折角気合い入れて読んだのに~。私このお話好きだよ? いつ読んでもワクワクしちゃう!」


「僕も好きだな。アイの声も透き通ってて……最高だったよ」


「そう? エヘヘ~」


「エスは優しすぎるんだから……」


 照れるアイを見て、今度は私が唇を尖らせる番だった。

 ここでの実験は辛いが、それでも二人のお陰で何とか希望を持てる。

 それはエスやアイもきっと同じだっただろう。






 だから、目の前の光景は地獄そのものだった。

 エスとアイが殺された。

 あまりにも呆気なく、たった二発の銃弾で。

 目の前の科学者に。

 それだけではない。今も私の後ろでは、子供たちが悲鳴を上げながら逃げ惑っている。

 私たちが休憩室として与えられていた部屋で、数人の科学者が皆を追いかけて、銃を押し付け、ナイフで切り裂き、ハンマーで殴り、殺していく。


「おや、これでもDの能力は発現しないのか?」


 硝煙が立ち上る拳銃を弄びながら、そいつはため息をつく。

 予想通りの結果が得られずに、不服だと言わんばかりだ。

 やがて悲鳴が止んだ頃に、ようやく私は口を開いた。


「なんで……」


「なんで? まぁ、そうだな。研究の為だ。お前の『異能』は近くで死んだ者の『異能』を取り込むと言うもの。親しい奴らを殺せば若しくはと思ったがやはりお前は……」


 そいつの言葉は半分ほどは聞こえてなかったと思う。

 或いはそいつが半分喋る前に、私の手が動いたのかもしれない。

 次の瞬間には、私は研究員に殴りかかっていた。

 どこからそんな力が出たのだと思うほど、凄まじい力で私は大の大人を殴り飛ばしたのだ。


「ぐあっ!?」


 情けない声で、研究員は地面に転がる。

 そいつは何が起きたのか分からないという風に、目を白黒させている。

 こんなやつらに、二人は、皆は殺されたのだ。


「ふざけるな……」


 ボコボコと、腹の底の熱い何かが全身に広がっていく。

 これは、怒りだ。


「ふざけるなぁぁあぁああぁあああ!」


 ボオッ!

 体の熱が弾けるような感覚と共に、私の体から炎と風が撒き散らされた。


「……っ! ギャァァアアア!?」


 風で壁に叩き付けられ、炎で焼かれ、研究員たちはのたうち回っている。

 だがまだだ。まだ死んでいない。


「""死ね""」


 怒りのままに炎を吐き出し、部屋一体が明るい光で包まれた。

 ビィーーーーーーーーー!

 緊急事態を知らせる警報が鳴り響き、部屋が真っ赤に染まる。

 備え付けのスプリンクラーが作動して、火を止めようと勢いよく大量の水が放出された。


 ジュウジュウと音を立てて、研究員を焼いた火が消えていく。

 急激に温度が下がっていく部屋の中で、私の体からは水蒸気が立ち上っていた。


「熱い」


 こんな水では決して収まらない程、私の体からは熱が溢れてくる。

 頬を伝う水滴が、蒸発して消えていくのを感じていた。


「熱いよ……」


 冷ましてくれる冷たい風が吹く様子はない。

 この熱は……どうすれば消える?

 私は何をするべきだろう?

 にわかに辺りが騒がしくなってきたのに気付いて、私は廊下の方に振り返る。


「あぁ、そっか」


 私は溢れてくる激情に任せ、破壊と殺戮を開始した。






 ギギギギギ……。

 鈍い音を立てて、研究所の表門が焼け落ちた。

 熱で留め具を焼かれたコンクリートの扉は、あっさりと地面に倒れ伏す。

 ふと孤島の先を見つめると、ヘリコプターがふらふらと遠退いていくのが見えた。

 何人かの研究者が、この燃え盛る孤島から脱出したようだ。


「逃がさない……!」


 私が少し念じれば、海上に風が吹き荒れる。

 風はごうごうと音を立ててヘリコプターを揺らし、傾いたかと思うと回転しながら海に墜落していった。


「はは……、はははは……」


 気付けば私は随分と、『異能』の扱いが上手になっていた。

 当然だ。私はこの研究所の全てを『異能』で破壊してしまったのだから。

 これで良かったのだろうか?

 いや、これしか無かったのだ。

 フラフラと孤島の断崖へ向かいながら、私は叫んだ。


「あはははは! ざまあ見ろ! 全部壊してやった! 科学者の糞野郎も! 研究所の施設も! これでもう研究なんて出来ないだろ! これで、もう……!」


 もう、孤島には私以外誰も居なかった。

 文字通り、誰もだ。

 ペタン。と座り込んで、空を見上げる。


 丁度地平線の向こうからは朝日が昇っており、久しぶりのその眩しさに目を細めていると、頭上から羽がひらりと落ちた。


「……アイ?」


 私が上を見上げると、そこにいたのは一人の長身な女性の有翼人。アイではなかった。


「おめでとう。見事復讐を達成したのね」


 彼女はゆっくりと羽ばたきながら私の隣に降り立つ。

 小綺麗な身なりをしており、彼女の立派な羽同様、ふわりとした服を身に纏っていた。

 白衣を着た研究員でも、実験で集められた貧相な子供たちでも無いようだ。


「誰? あんた」


「私はマーナード。とある組織に所属していて、貴方を……復讐者を迎えに来たの」


「なら一歩遅かったね。復讐は終わっちゃったよ」


「あら、言ったでしょう? 『おめでとう』と。復讐を終えたら復讐者じゃ無くなるのかしら? 貴方の中にある熱は、もう冷えきってしまったのかしら?」


「……あんた何なの?」


 クスクス。と、マーナードは笑っている。

 マーナードの言う通り、私の中の熱は灰になって尚、熱く燻っている。

 だがそれが何だと言うのか。私はもう、何をする気力も起きない。


「私は秘密結社『B』のメンバー。そこはね、復讐者を集めているの。それも復讐を終えた者達だけを」


「何のために?」


「リーダーの復讐の為によ」


 マーナードはそう言って、私にナイフを差し出した。


「二つ、選ばせてあげる。ここで首を切って自害するか、それとも『B』に入るか」


「……」


 私は無言でナイフを受け取り、見つめる。

 正直に言えば、私はもうここで死ぬつもりだった。

 餓死か身投げか……何にせよこの孤島で死のうと思っていたのだ。


「あんたは、私に生きる価値はあると思う?」


「無いんじゃないかしら。でも、少なくとも私たちは貴方を必要としている」


「……あっそ」


 振りかぶり、ナイフを崖の向こうに思いっきりぶん投げた。

 想像よりも遠くまで飛んだナイフは、ボチャンと音を立てて、私の代わりに海に沈んでいく。


「そのリーダーの復讐、手伝ってあげる」


 マーナードはただ満足げに頷いて、微笑んだ。


「ようこそ『B』へ。歓迎するわよ、復讐者ディー」


 昇ってきた朝日はその明るさと裏腹に、私たちの影をただただ濃く写し出していた。






ハッ。と目を覚ますと、そこは柔らかいベッドの上だった。隣には看病用の椅子と、その上にはお見舞いのつもりか、リンゴが一つ置かれている。

 かすかな薬品の匂いと清潔なベッドが、ここが病院だと物語っていた。


「おや、目を覚ましたかね~」


 そんなことを良いながら、マーナードが病室に入ってきた。

 どこかのんびりとした雰囲気のマーナードは、リンゴを取り上げるとこちらに投げて寄越す。


「三日も寝てたから、起きるかどうか心配だったのよ。あ、そのリンゴ食べて良いよ。豪快にガブッといっちゃって」


 そんなことを言われても、急にリンゴを丸かじりする様な気分ではない。

 と言うか三日も寝ていたのか。孤島からマーナードに抱えられて目を閉じた辺りから、まるで何も覚えていない。

 私の微妙な顔を見ているのかいないのか、マーナードは椅子に座ると、私の手首を掴んで脈を取り始める。


「うん、脈は大丈夫だね~。意識はハッキリしてる? 名前とか言えるかな」


 名前。なんと名乗るべきだろうか。

 故郷にいた頃の名前を覚えていない訳ではないが、今さらそれを名乗るのもおかしい気がする。


「……ディー」


「よしよし、ちゃんと名前は言えるね」


 私の手首から手を離して、マーナードは微笑む。


「私の事覚えてる?」


「えぇと……マーナードだっけ? 確か『B』とか言う……」


「記憶もハッキリしてるね。良かった、良かった。それじゃ、早速だけど拘束させてもらうね?」


「は?」


 顔をしかめた私の影から、何本もの細長い影が伸びてきた。

 影はあっという間に私の体に巻き付いて、身動きを封じてしまった。


「ちょ、何だこれ! あんたらが呼んだのにこの仕打ちはないでしょ!?」


「じっとしていろ。余計食い込むぞ」


 そんなクサイ台詞と共に、マーナードの影から鼬族の男が現れた。

 鼬族は鼬をそのまま巨大化して二足歩行にしたような見た目をしていて、彼はそれに加えて全身を真っ黒で奇妙な服で覆っている。


「それは拙者の『異能』である。容易にほどけると思わないことだな」


「また『異能』か……」


 もしやまた研究材料として集められた訳ではあるまいな。


「あらあら、そんなに警戒しないでよ。言ったでしょ? 復讐を手伝ってもらうって」


「それで私はここに連れてこられたって事?」


「そういうこと。リーダーが貴方を待ってるの……ついてきてくれる?」


「どうせ無理やり連れて行くんでしょ?」


 拘束されている今、私に抵抗する力は無い。


「嫌だって言ったら、警察に引き渡すだけよ」


「余計たちがわるい」


 むすっ。としてみるが、マーナードは微笑みを崩さない。


「じゃあ行こっか。リーダーの気分が変わらない内に、チームに入ってもらわなきゃ」


 拘束されたまま病室を出たかと思うと、エレベーターに乗って下へと降りていく。


「地下に基地が在るの。こういうのワクワクしない?」


「しない。こう言う場所は嫌い」


 病院もそうだが、研究所を思い起こしてしまう。

 マーナードは、あらそう。と軽く言って黙り込んでしまった。


「ねぇ、あんたは何者なの?」


 先ほど影を操っていた鼬族の男に話しかけると、そいつは、ふむ。と唸って口を開いた。


「拙者はトナト、鼬族である」


「そんだけ?」


「それ以上の物は持ち合わせていない」


 嘘つけ。と思ったが、あまり言及しないでおく。僅かだが、私を縛る影が強く締まったからだ。

 詮索するなと言うことだろう。


「お主は、あの島にあった物を皆燃やしてしまったらしいな」


「まぁね」


「マーナードから聞いたが、あそこには無数の違法な研究の跡が残っていたそうだ。お主もその実験に参加していたのか?」


「参加させられてたんだよ。そんで、友達が殺されてムカついたから全部燃やした」


「なるほど」


「あ?」


 まさか納得されるとは思っていなかった。

 次第によってはこのまま縛り殺されると思っていたが、トナトから感じたのは同情の念である。

 意外そうにトナトを眺めていると


「拙者も同類よ」


 と小さく呟く。


「はっ、なるほど。あんたたちはそういう集まりか。社会からはぐれた復讐者たちって訳ね」


 二人が答える代わりに、ポーン。と気の抜ける音を鳴らしてエレベーターが停止する。

 階数を現すランプはどこも灯っていない。正攻法でここに来ることは出来ないのだろう。


 ドアが開いた先には、いくつも扉が並んだ廊下が広がっていた。10m程の廊下はカーペットが敷き詰められ、天井にはお洒落な照明器具。小さなシャンデリアの様だが、見たところ金で出来ている。

 よく見れば廊下に並ぶ扉のノブも金色に光っていた。


「豪勢な場所だね」


「リーダーが雰囲気作りが大事だって言うから」


 柔らかいカーペットの先には一際大きな扉があり、私たちが近づくと自動的に開いていく。

 魔法でもかけられているのだろう。

 勿体ぶる様に開いた扉の先に居たのは、羊の獣人の男性と龍人の女性。


 獣人は、大きな円卓の一番奥に、不敵な笑みを浮かべて座っている。顔は人間と同じだが、その頭の横には大きな二本の角が渦を巻いていた。

 龍人の女性は一見すると蜥蜴族と見分けがつかないが、その体には銀色の鱗がところ狭しと並んでおり、鈍い黄土色の甲冑も相まって凄まじい威圧感を感じる。


「リーダー、連れてきたよ。ディーちゃんって言うんだって」


 マーナードの紹介に頷くと、ギザギザの歯を見せて、男は笑う。


「ようこそ、復讐者よ。聞きしに勝る可憐さだな。ここに来たと言うことは、俺の復讐に協力してくれる……と言うことで良いかな?」


「良いけど、協力するからには私にも何かメリットが欲しい」


 お世辞を無視して、エリーニュスを睨み付ける。


「無論だ。俺の下で動く限り、衣食住とその身を保証しよう」


「それはどうも……」


 悪くない条件だ。どうせ行く宛もない。ここでこの人たちの協力をするのが懸命だろう。


「トナト。影を解いてやれ」


「良いのか?」


「良い」


 スルリと影がほどけて、私の足元に消えていく。

 『異能』、不思議な力だ。


「さてっと……」


 ダンッ!と円卓に飛び乗ると、その男は大きく両手を広げた。

 男はニヤリと歯を見せて笑い、大きく息を吸って、声を張り上げた。


「ようこそ! 復讐者ディーよ! ここは秘密結社『B』! 復讐の『ブラック・リリー』だ! 俺はここのリーダーのエリーニュス。この俺が求めるのはただ一つ。ある者への復讐! そのために、燃えカスとなった貴様の力を貸して欲しい」


 燃えカスとはよく言ったものだ。復讐を果たした復讐者が行き着く先として、それ以上の言葉は無いだろう。

 私も笑い、言葉を返す。


「良いよ。私で良ければ……何でも燃やしてあげる」


「頼もしい限りだ。マーナード! 部屋に案内してやれ!」


「はーい。じゃ、行こっか」


「あ、ちょっと待って、最後にもう一つ良い?」


 マーナードに手を引かれてその部屋を後にする前に、言いたい事があった。


「なんだ、言ってみろ」


「リンゴを切るナイフをくれない? 丸かじりはしたくないんだよね」






「……」


 マーナードに案内された部屋で、エリーニュスの後ろに立っていた龍人が、無言でシャリシャリとリンゴを剥いている。


「あー……なんかごめんね。その……鱗が変形してるけど、それも『異能』?」


 龍人はナイフの代わりに、変形させた自分の鱗でリンゴを剥いている。龍人は、コクリ。と頷いてまた作業に戻る。


「ねー絶対リンゴを剥くような能力じゃないよね、それ。あぁ、ありがと」


 剥き終わったリンゴの欠片を渡されて、口に放り込む。


「うわ、美味し」


 そう言えば、まともな食べ物を食べたのはいつ以来だろうか、研究所の食事はどれもこれも粗末だった。


「じゃなくて……あんたもさ、リーダーの言うことだからってこんな下らない事に『異能』を使わなくて良いんだよ? 私だったら断るけどな~ムグッ」


 口を塞ぐように、リンゴの切れ端を押し込まれる。

 ごちゃごちゃ言うなと言うことだろうか。


「あんた、名前は?」


「……ガーニール・メークアウト」


 ようやく口を開いたガーニールは、それだけ言ってまた、スン。としてしまう。


「ふーん、可愛い名前だね」


 ガチンッ。とガーニールの手元から金属音が鳴る。

 まさか手元でも狂ったのだろうか。


「大丈夫~?」


「問題ない」


 若干声が震えている。あの鱗は固そうだが、やはり多少は衝撃が響くのだろう。


「メーちゃんはさ」


 ガチンッ。また金属音が鳴る。


「……大丈夫だ」


「……。メーちゃんはさ、誰に復讐したんだ?」


「親」


 一言で纏められてしまった。これ以上詮索するのも野暮かと、ため息をついてベッドに寝転がる。


「私は私を実験してた科学者を燃やしたんだ。正直、スカッとしたね」


「同意だ」


 一言だけ返して、メーちゃんは最後のリンゴの欠片を私の口にそっと置くと、スタスタと部屋を出ていってしまった。

 寡黙だな~。などとメーちゃんの出ていった方を見ていると、バンッ!と勢いよくドアを開け、エリーニュスが飛び込んできた。


「新人! 挨拶周りに行くぞ! ついてこい!」


「あ?」


「挨拶周りだ。普段は便利屋をやって日銭を稼いでいるからな。今日はお得意様、兼、支援者と貴様との顔合わせだ」


 なぜそんな面倒くさいことをしなければいけないのか。そもそも復讐を目標に掲げている集団が便利屋として日銭を稼ぐとは……


「て言うかこのアジトをもう少し質素にすれば良いんじゃないの?」


「それは出来ん!」


 言い切られてしまった。

 出来ないわけないだろうに。


「さっさと行くぞ! 先方を待たせているのだ!」


「私が知るかよ! いてて……! わかった! わかったから引っ張らないで! 獣人は力が強いから嫌なんだ!」


 エリーニュスに引っ張られるまま、エレベーターで上に上がり、そのままズルズルと繁華街まで引きずられていく。


「そういや、ここってどこなの? どっかの町?」


「ここは世界最大の王国、『パンゲア』だ」


「『パンゲア』!?」


 それは【方舟】最大の大陸に存在し、世界人口の四割が住む巨大な王国の名前だ。

 悪魔族を産み出した神である【魔王】が治めており、この世界で最も発展した国と言って良い。

 私が誘拐される前に住んでいた場所は、『パンゲア』から遠く離れた土地だったはずだが……。私は私が知らない間に一体どれだけ移動したのだろうか。


「なんだ貴様、そんなに驚いて……前はどこに住んでいたのだ?」


「大陸の端っこ……『世界樹』の奥」


 『世界樹』は、大陸において『パンゲア』の対角線上にある巨大な木だ。そのさらに奥に、私は住んでいた。


「なんとまぁ、中々遠くから来たのだな」


 感嘆するような、呆れるような声音でエリーニュスは言う。


「それなら今度王国を案内してやろう……。さぁそろそろ自分で歩け。先方の家に着いたぞ」


 エリーニュスに連れられたどり着いたのは、豪勢な屋敷である。繁華街は様々な店が並んでいるが、それらを押し退けるように屋敷はドッシリと居を構えていた。

 おずおずと門をくぐると、屋敷の庭で花に水をやっていた人間の男の子がこちらに振り替える。


「いらっしゃいませ、エリーニュスさん! トリエントさんがお待ちですよ。『三日も待たされた』と不機嫌ですが……」


 男の子はそう言いながら、パタパタとこちらに走ってきた。

 よく見ると男の子は使用人の服を着ている。ここで働いているのだろうか。


「よぉハル、悪かったな。新人のディーが寝坊助で起きるのに時間かかっちまった」


「人が好きで寝てたみたいに言わないでくれない?」


「寝てただろ。三日もお前の体持たせるの大変だったんだぜ?」


「あ、そういや点滴とかしてなかったよね。何で私死んでないの?」


「マーナードの『異能』で回復させてたんだ。後で礼でも言っておけ」


「えーあのヒト私苦手なんだけど」


 門に入ったところで駄弁っていると、カツンッ!と不機嫌そうな音が屋敷の方から聞こえてきた。

 そちらを振り向けば、両の目を閉じた男が不機嫌そうにこちらを"見つめていた"。

 開かない左右の目ではなく、額にある第三の目でだ。


「何を駄弁っている。三日も待たせてようやく来たと思ったら……いつまで私を待たせるつもりだ」


 青いローブを羽織ったその男性は、イライラとした手つきで杖を突いている。

 杖と言い、ローブと言い、明らかに魔法使いといった出で立ちだ。


「まーまートリエントさん。メンバーが増えたんだ、祝ってくれたまえ」


「お前はなぜそんなに不遜なのだ……まぁ良い。ではそこの新人、かりても良いんだな?」


「は?」


「ど~ぞ。好きに使ってくれ」


「はぁ!?」


 こんな展開になるとは聞いていない。まさか、私ははめられたのか。


「じゃあなディーちゃん。夕方には迎えに来る」


「ちょっと待って! そもそも私はさっき目覚めたばかりで……!」


 獣人の脚力で走り去るエリーニュスを追いかけようとした私の肩を、トリエントの杖が引き留める。


「貴様らには貸しがあってな。いつか返す返すと言い続けて、一向に返す気配がなかったのだ。ディー、お前には悪いがしっかり払ってもらうぞ」


「うっ……!」


 一体何をさせられるのか……人身売買?臓器でも売られるのか?もしくはまた実験か、トリエントが男だとすると……

 ゾッとした感覚に足を止めていると、トリエントの後ろからひょっこりとハルが顔を出した。


 その腕にはメイド服が乗っている。


「こ、これを着るの?」


「そうだ。屋敷の掃除をするのだからな、私服が汚れたら困るだろう?」


 常識的な言葉で返され、色々と想像していた私は少し恥ずかしくなる。

 あの研究所で色々とされたせいで、少し思考回路がおかしくなってしまっているらしい。


「えっと……別にこれもらった服だしこのままでも良いんだけど。このメイド服着る必要あるの?」


「特にはない」


「ないのかよ」


「私の趣味だ。人間に可愛い服を着せるのが好きなのだよ」


「変態じゃん」


 真顔で淡々と言うなよ、そんなこと。

 トリエントが何族かは知らないが、恐らく寿命が長い種だろう。

 寿命の長いエルフや竜族といった種族が、寿命の短い人間や妖精を愛でるのはよくあることだ。

 今思えばエスにもそう言った感情があったのかもしれない。


「まぁ、別に着ないなら良い。さっさと始めろ。次第によっては明日も来てもらうからな」


「うげー……」


「恨むんなら『今度来た新人に全部やらせるから!』なんて言ったエリーニュスを恨め」


 つっけどんに言うと、トリエントは屋敷の中に戻っていってしまった。後に残された私は、ハルをチラッと見る。


「何かな?」


「あんた、その服好きで着てるの?」


「……僕、この服しか持たされてないので」


「なるほどね……」


 逃げ道を防がれているということか。なんと不憫な……。


「ま、まぁ僕はトリエントさんに拾われた身なので……」


「だからって流されてちゃダメだろ~。嫌なことは嫌って言わなきゃダメじゃない?」


「あ、あはは……」


 いくら言っても、ハルは微妙な笑みを浮かべるだけである。まさかとは思うが……


「……その服気に入ってる?」


「そんなこと……いや、はい。すみません」


「謝んないでよ」


「じゃ、じゃあこっちに……先ずは館の案内から始めよっか」


 ハルの耳が赤くなっている。好きで着てるのなら、そこまで恥ずかしがらなくても良いの思うのだが……

 どこか気まずい雰囲気を纏ったまま、ハルについて屋敷に入る。


 屋敷の中は、外見通りかなり豪奢だった。

 いかにも金持ちの洋館といったきらびやかさだが、そこら辺にゴミ箱が置いてあったり、細部に庶民の気配を感じる。


「一階の右が応接間で、左が食堂。二階にはベッドがある部屋がずらーっと並んでて、その奥に倉庫があるよ。三階以降は……使われてなくて埃だらけなんだ」


 屋敷の説明を受けながら、ハルは二階を素通りして階段を上がっていく。


「その三階を掃除するの?」


「そうそう。僕も少しずつ掃除してるけどどうしても一人じゃ中々進まなくてね」


 三階に着くと、直ぐに埃っぽい匂いが鼻に襲いかかってくる。

 それだけではない。階段とそこから約2m程はある程度綺麗にされていたが、そこから先は本やら机やらぬいぐるみやら……様々な物が積み上げられている。


「これまさか奥の方まで全部つまってるの?」


「二階もそうだったから多分……」


「はぁ!?」


「トリエントさん、片付けるの苦手でとにかく積み上げちゃうんだよね。二階には二百年前の【12議席】の勲章とかあったよ」


「え、あの人【12議席】なの?」


 それは『パンゲア』の政治を行っている、【12賢人】の流れを汲む12人の総称だ。

 この地を治める【魔王】直々に任命され、『パンゲア』の意志決定を行うのだ。

 世界人口の四割が住む『パンゲア』の意志は、そのまま世界の方針となることも多く、2ヶ月に一回の会議には世界中の注目が集まる。


「で、その勲章をこんな風に積み上げてたのかあの人」


「あ、あはは……一応箱に入れて棚にしまってあったけどね」


「普通手元に置いとくでしょ」


 確か、売れば数百万は下らない品の筈だ。

 場合によっては家宝として代々受け継がれていたりする。


「まー良いや。グダグダ言っても仕方ない……掃除しようか」


「だね。あ、先ずはこの荷物を下の倉庫まで運んでくれる? 僕は右をやるからディーちゃんは左を……」


「了解~」


 はぁ……。とため息をついて、荷物の山と向かい合う。

 埃っぽいし、どうみても何年も使われていない様子だ。先ほど二階に置いてあった勲章が二百年前の物と言っていたので、もしかしたらここにあるのはもっと前の物かもしれない。


「もういっそ燃やした方が早くない?」


「も、燃やさないでね? 屋敷も燃えちゃうよ」


 さすがに冗談だが、これは掃除を完了するのに一体何年かかるのか……。

 手始めに手前にあるぬいぐるみと箱を持って二階の倉庫に放り投げたが、これを何往復もすると思うと気が滅入ってしまう。


「……そういや、私風を操れるんだったっけ」


 風で荷物を持ち上げたり出来ないだろうか。

 試しに風を起こすと、何をどう制御を間違ったのか、とんでもない突風が巻き起こり、ガシャーン!と荷物を奥の方に押し込んでしまう。

 しかも同時に埃が舞い上がり、私の方に覆い被さってくる。


「あ、やべ……ゴホッ、ケホッ!」


「ディーちゃん、何して……うわぁ!? ディーちゃんが埃の塊に!」


 毛玉になっちゃってるよ~。と言いながら、ハルは埃を払ってくれる。


「ごめん……荷物奥に押し込んじゃった。何個か壊れたかも」


「あ、いや。トリエントさんは荷物は全部捨てても良いって言ってたし、気にしなくて良いよ。でも押し込めたってことはそこまで奥には詰まってないのかな」


「あ、確かに……」


 埃の晴れた廊下を見てみると、突風によって手前にあった荷物が吹き飛び、奥の方まで見えるようになっている。

 どうやら荷物が積まれていたのは手前だけのようだ。


「ラッキーだね。トリエントさん、三階の奥まで荷物を詰めるのめんどくさかったんだね。これなら速く終わりそうだ」


 確かに三階まで上がってさらに荷物を廊下の奥まで運ぶのは骨が折れるだろうが、にしてもなんと言う物臭だろう。

 今回は助かったが、こんなトリエントに仕えるハルは疲れないのだろうか。


「仕事してるときはかっこいいんだよ?」


 ハルを問い詰めると、困ったような表情でそう返された。


「仕事してるとき"は"か……」


 今度は、あははー。と曖昧な笑いで返される。


 それから二人は三階の掃除に専念し、辛い埃っぽさも少しずつ和らいでいった。

 夕日が窓から差し込んでくる頃、三階はすっかり綺麗になっていた。


 終わった、終わったと二人が欠伸をしながら下に降りると、トリエントとエリーニュスが優雅に紅茶を飲んでいた。


「おや、もう終わったのか。早かったな」


「てっきり数ヶ月はかかると思ってたぞ!」


「トリエントさんはともかく、そこのあほリーダーは紅茶飲んでんじゃないよ」


 誰のせいでこんな目にあったと思っているのか……。


「辛辣だな。もう終わったことだし良いだろう?」


「お前がそれを言う資格はないんだって!」


「おい、人の屋敷で喧嘩するな。エリーニュスも、ディーが戻ってきたんだからさっさと帰るんだな」


 トリエントに不機嫌に追い出され、私とエリーニュスは屋敷を後にする。

 屋敷の門を潜るや否や、エリーニュスはワクワクした様子で顔を近づけてくる。


「どうだった! なんか金目のものとかあったか!?」


「あ? そんなもん知らないよ。私目利きなんて出来ないし」


「かーっ! お前何個かくすねとけよ! 常識だぞ!」


「どこの?」


「世界のだ」


 そんな訳ない。


「どうせ何百年も前のでしょ? 大抵脆かったし持ちかえっても直ぐ壊れると思うけど」


「なんだ、つまらん」


 唇を尖らせ、エリーニュスはため息をつく。

 私は速くも『B』に加入したことを悔やんでいるが、他に行くところも無い。

 多少文句があれど、このリーダーに着いていく他無いだろう。

 たが一つ、確認したいことがあった。


「ねぇ、あんた一体誰を殺したいの?」


「ん?」


 エリーニュスは立ち止まると、訝しげにこちらに振り返る。


「知りたいか?」


「当たり前でしょ」


 エリーニュスは勿体ぶるように少しだけ歩みを進め、うっすらと見える月を背景に口を開く。


「なんてことはない。村を滅ぼしたやつを探してるんだ」


「へぇ?」


 案外普通の動機だった。

 あんな組織まで作っておいて、やりたいことは村の人たちの敵討ちと言うことか。


「どんなやつなの?」


「目に七つの星を輝かせた人間の女だ」


「目に星?」


「そうだ。それだけ特徴的な見た目をしておきながら、未だに一切の手がかりを掴めていない」


「なるほどね。そいつを探すために人を集めてるって訳か」


「それもあるが……『異能』の中には探索や捜索に特化したものもあると聞く。ずっと、そいつを探しているのだ」


 わざわざ『異能』を持つヒトを集めているのはその為か。

 しかしそう簡単に見つかるものでもないだろう。


「じゃあ私は外れだったね」


「そうでもない」


 ニヤリとエリーニュスは口の端を歪ませる。


「貴様、聞けば二つ以上の『異能』を有しているそうではないか」


「え、何でバレてんの?」


 彼らの前では『異能』を見せてない筈だが……。


「マーナードが持ち帰った資料に書かれていたぞ。貴様の『異能』が最重要研究対象とされていたとな」


「げっ……」


 またあの有翼人か。

 やはりあいつは苦手だ。


「死んだ者の『異能』を取り込むそうじゃないか! しかも、貴様の研究所では大量に『異能』を持つ子供が死んでいる。俺の望む力を持っててもおかしくない」


「私で『異能』ルーレットしようとしてる?」


「その通りだ」


 言い切りやがった、くそ野郎かこいつ。


「言っとくけどちゃんと『異能』が使えるかは分かんないよ? 今も、風と炎しか扱えない」


「世界中を探し回るよりよっぽど効率的だ。違うか?」


 チッ。と舌打ちしてしまう。

 こいつ、アホそうに見えてかなり打算を組んでやがる。


「わざわざ貴様を迎え入れたのはその為だ。精々俺のために力を引き出せ」


「まぁ、良いよ。あんたの村の復讐、手伝ってあげる」


「頼もしい限りだ」


 クックッ。と笑って、エリーニュスは道のど真ん中で大きく手を広げた。


「改めてようこそ! 復讐者ディーよ! 貴様には期待しているぞ?」


 空に浮かぶ月が太陽が隠れたのを見計らって、白く輝き始めていた。

 私はきっと、元の場所には戻れない。

 ならばひたすら沈んでいこう。深く、ただ深く、誰も居ないような奥深くまで……。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

※更新は不定期です。

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