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散逸した草稿 - 短編集。  作者: 毒島複廊
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題:一時停止

標識に従う話です。

 何度、この角を曲がっただろうか。一時停止の標識が嘲笑うように僕を見ている。並び立つ塀は、向こう側にあるはずの家を書き割りのように遠ざけている。

 子供向けのつまらない迷路に入り込んでしまったような、どこに終わりがあるのかわからずに気の遠くなる感覚。それも、ずっと同じ道を歩かされてるんだからたまったもんじゃない。


 分岐がないのはまだありがたいが、その分だけ徒労感も大きくなる。またダメか、のため息が一回ごとに重くなる。きっとダメだ、の絶望が一歩ごとに増していく。


 ついにはもう歩く気すらしなくなって、標識の下で立ち止まった。腹立ちまぎれに標識を蹴る。もちろんびくともせずに、足を少し痛めただけ。何度角を曲がっても逆走してみても当たり前の顔をして立っているこいつが憎くなってきた。


 この閉じられた回廊で、標識だけが生きているように見える。他はそう見えるだけの偽物で、ただの背景に過ぎないのだ。

 そんなわけはないな。また一つため息をついて標識をにらみつける。


 左折可に変わっていた。先の道を見遣ると、左右に分岐している。これまでなかった変化。そこで気づく。標識の意味に。


 僕は、次の角を迷わず左に進んだ。

読了ありがとうございました。

またよろしくね。

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