題:負登校
不登校の子のお話です。
これもなんかこう、シリーズというか、そういう感じにできたら嬉しいです。
新しい朝がまた来やがった。くどいセールスでもこんなに来たら飽きたらしい素振りの一つでも見せるのに、太陽とかいうのは素知らぬふりしてまた昇ってくる。眩しくって叶わない。
たった十三の身そらでも、いや、むしろ、だからこそ?鬱陶しくてたまらない。月が変わって血が流れて、仲良しあの子は垢ぬけて、来るもの全てが愛されて。私だけが、取り残された。ランドセルのまんま。
「みんな」は知らない言葉で喋って、意味を尋ねると眉をひそめる。まるで異星人を見るような目で、あるいは気遣い憐れむ目で、いずれにしても気持ちのいいものではなくて、私は私の聖域に隠れることにした。
日に三度、諸悪の根源がドアをノックしに来る。たまに諸悪の根源(1)も来る。どちらも言うことはほとんど同じなんだけど、最近はもうただ優しくしてくるようになった。私はそれが本心ではないことを、トイレの帰りに見た本で知っている。
あのシャワー室に行かないことを世間は異常だと断ずるけれど、あんな息苦しいところでたむろするあいつらの方がおかしいに決まっている。化生だか依正だか知らないが、人のなりした人ならざるものが闊歩しているのに、それがあるべき姿だと言わんばかりの扱いで。規則もへったくれもあったもんじゃない。
大体、あいつらはズルい。不真面目を踏まえたうえで、贔屓されて区域内。ただ外れないように努めているだけのあたしたちは、そこに居場所を作れない。当てられたときのドキっとした感じも、浮かべられる笑みの意味も真反対。嘲笑と哄笑の違いの理由は長考してもわからない。
暗黙の了解を逃したら越えられない境界。誤りに気付いても、もうどうしようもない。繰り返す自己嫌悪と、明日が来ることの恐怖。それでもいつしか日は暮れて、去年まで私のいたランドセルの列が道を行く。
布団を抱いて天井を見つけて、また今日が終わる。そしてきっと太陽は昇る。嫌だ。枕を頭にセットする。
ノックの音と、保健室の先生が待ってるという話が聞こえてくる。これは私に言ってるのか、私を守る扉に言ってるのか。多分彼らもわかってないけど、そこに大した違いはないからいいよ。
明日、ちょっとくらい、なんて聞こえてくるけど、何もかもが聞こえないふりをして、気配が消えるのをひたすら待つ。
太陽が昇っても、その明日が来ることはない。いつまでも。あるいは、
この扉が破られるまで。
読了ありがとうございました。またよろしくお願いしますね。