36/36
題:の仮面
仮面のお話です。前回の続き。
仮面から放たれた靄が顔を覆いつくしたと思ったら、一瞬にしてかき消えた。怖くなって顔に手をやるも、別段変わったことがないように見える。
なんだ。ただの虚仮威しか。あるいは単なる幻覚か。いずれにしてもこいつはただの不審者だ。幽霊の正体見たり枯れ尾花というように、こいつも仮面をつけた単なる人間でしかない。そう思うと笑みさえこぼれてくる。よく考えたら──というか考えるまでもなく──私は警察を呼ぶべきだった。最初から。ポケットからスマホを取り出し、一を二回、零を一回入力する。後は通話ボタンを押すだけ。
「……ッ!!」
その瞬間、仮面のそいつが襲い掛かってきた。警察を呼ばれるとなればさすがに焦るか。でも、もう遅い。通話が開始されたスマホに向かって私は現状を叫ぶ。すぐに向かいます!なんて心強い声なんだ。
それからほどなくして、警察が来てくれた。奴は何かを訴えるように身振りをしていたが、抵抗することなく連行されていった。いい気味だ。とはいえ一度侵入されたのは心配だから、引っ越しを考えないといけないけど。
その後、内見を済ませた頃。警察から連絡が来た。
私が、逮捕されたと。
読了ありがとうございました。
相手の気持ちに立つことも大事ですよね。




