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散逸した草稿 - 短編集。  作者: 毒島複廊
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題:金槌

カナヅチのお話です。

 まちのホームセンターで買ってこられた金槌は、一ヶ月もの間使われることなく作業机の上に放置されていた。使われない道具に価値はあるのだろうか。これが置物であったなら、それはそこにあることで、あるいはその見た目が優れているかどうかなどで評価されるだろう。しかしこれはあくまで道具で、その機能によって良し悪しが決まることが多い。割れ鍋も綴じ蓋も、単体なら捨てられて然るべしものだ。それならば、長いことその機能が行使されていない道具はどうなのか?手入れが必要というわけではないから損なわれるということもないだろうが、振るわれない刀は鈍に等しい。されどそのことを気にすることはなかった。金槌だから。


 人がドリルを求めるとき、真に求めているのは穴である──そんな話がある。ドリルというのは穴を開けるために使うのだから、極論自由に移動させられる穴があればドリルは不要であると。であれば、金槌にとっての穴とは何なのか?金槌は打つためにある。だが何を打つかはわからない。それは釘かもしれないし、あるいはもっと別の何かかもしれない。ならば求められているのは()だろうか。金槌の頭がそれとぶつかり合ったときに生じる力こそが、金槌が使われる理由?しかし、そんなことを金槌は気にも留めない。金槌だから。


 金槌は何をもって金槌と言えるのだろうか。丁字型ならば金槌たるか?そんなことはない。辞書を引いてみれば、槌の頭を金属で作ったものだという。名前に金が入っていることからも(もっとも、これは命名が後であろうから因果としては逆だろうが)納得である。果たして金槌は金属の頭に木製の柄を持っている。どこに出しても恥ずかしくない金槌だ。だが、そうでなくとも金槌は気にしない。金槌だから。


 

 そうしてついに振り下ろされた金槌のその先にあったのは、人間の頭部であった。つまるところ、金槌は包丁でよかった。

読了ありがとうございました。

大じゃなくても小を兼ねるみたいなことはありますよ。

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