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散逸した草稿 - 短編集。  作者: 毒島複廊
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題:CLOCK TOWER

時計塔のお話です。

 世界五分前仮説、というものがある。

 森羅万象は五分前に作られたものであって、それ以前の時間帯が存在するように見えるものも一緒に生成された、という仮説だ。子どもの頃の記憶とか、沸いてすぐのお風呂とか、そういったものは全て反証にならない。作られたものかもしれないから。


 馬鹿馬鹿しい、と思う。それが通るならなんでも通る。だが一方で正しいとも思う。楔でも打ち込まれていない限り、その時間が本当に存在していたかなんて証明しようもないのだ。どこぞの気まぐれな神様が指を鳴らして生み出したのかもしれない。


 俺自身だってそうだ。俺は()、時計塔内部の螺旋階段を登っている。目的はもう覚えていない。もしかしたら最初からなかったのかもしれない。そして、登ってきた段差がわからない。足を踏みしめた瞬間、俺はその瞬間に作られている。作られ続けている。


 降りる、という単語を知っている。引き返すという単語も。登ると進むの逆だ。でもそれが具体的にどうやって行われるものなのかはわからない。結果として、俺にできるのは歩き続けることだけ。止まるはわかるしできる、が──とてつもない不安に駆られる。足が勝手に動くくらいの。


 これまでがわからないから、どれだけ登ってきたのかもわからない。そして、この時計塔がどこまで伸びているのかも。そういえば、なんで時計塔を登っているなんてことはわかるんだ?窓とライトはあれど、俺が今いるのはただの螺旋階段で、時計の針がカチカチ刻む音も聞こえやしないのに。ただそれだけを覚えている。そういう風に作られている。


 どこまで続くかわからない階段を、いつから始まったのかもわからず、登り続ける。頂上に何かがあることを、否、そもそも頂上があることを、信じて。

読了ありがとうございました。

立ち止まったら最後

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