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散逸した草稿 - 短編集。  作者: 毒島複廊
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題:CLOCK

時計のお話です。

 時計の針は進み続け、結果として元の位置に戻ったように見えても、逆に進むことはない。時間がそうであるように。ただ刻一刻と時を重ね標し続ける。


***


 書架を整理していると、変な本を見つけた。

 『我が国の歴史』と題されたその本には突拍子のないことばかりが記されていた。

 人間が低次な武器で大規模な戦争を繰り広げていたり、明らかに健康状態に悪い衛生環境で暮らしていたり。それが貧困層であるならばまだわかるが、裕福で権威もある人間がそうしていたのだという。そんなわけないだろう。物語にしてもつまらない。

 くわえて、随所に誤字脱字がみられる。これを出版した人間は校正を知らなかったのだろうか。恐らく「う」と書きたかったであろう場所に「ふ」が入っているなど、見ればすぐにわかる間違いなのに。


 あの壁掛け時計を貰ってきてから、蔵書に変なものが混じることが増えてきている。この間は古生代なんていう存在しない世界の生物がさも実在のように記載された図鑑もあった。ん?この間……?そんなことあっただろうか?まあいい、変な本を読んで少し疲れてしまったのだろう。少しお腹も空いてきたことだし、昨日作ったカレーが残っているから温めて食べることにする。キッチンに立って気づく。カレーを作った記憶はある。だがそれがいつだったのかがわからない。昨日ってなんだ?私の思考に知らない単語が入り込んでいる。壁掛け時計に目を遣ると、秒針がカチカチと時を刻んでいた。

読了ありがとうございました。

前だけ見て生きてたいもんですねえ。

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