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散逸した草稿 - 短編集。  作者: 毒島複廊
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題:TOWER

塔のお話です。

 雲を貫き天まで伸びるその塔の頂上には、一生遊んで暮らしていけるほどの富があるとも、一振りで国を滅ぼせる武具があるとも、一切病と縁の失せる秘薬があるとも、様々な噂がまことしやかにささやかれている。


 だから当然、登ろうとするものが後を絶たない。しかし誰も登り切ったものはいない。大抵は持ち込んだ食料が半分になったところで引き返すか、塔の窓から飛び降りるか。とにかく、途中で諦める。

 別に、中に番人がいるわけでも難題があるわけでもない。ただひたすら階段が伸びているだけ。天井が見えないほど遠くまで。壁には松明があるから足元が見えないなんてこともないし、途中に広い踊り場があるから休憩することもできる。ただ、高い。長い。それだけだ。


 子どもの頃に話を聞いて「入るな」と言われたときは、誰もが馬鹿馬鹿しいと思う。そんなのすぐ登り切ってしまえばいいじゃないか、と。食料の問題はあるけれど、それだって節約すればなんとかなるんじゃないかと。それでも未だに踏破したものはいない。


 そんな塔に、これから挑む。別に頂上にあるものに目が眩んだわけじゃない。踏破するつもりなんてさらさらない。ただ塔を登ると言って行方知れずの友達を探すだけだ。既に一週間経っているが、別れ際に見せられた荷物ではもって三日だった。それならもう帰ってきていないとおかしいが、家を訪ねてもいないという。念のために失楽園──塔から飛び降りた人を弔うための場所だ──も調べてみたけど、それらしい人はいなかった。もしかすると、中で誰かと協力して一緒に登らんとしているのかもしれない。

 あいつは怖がりだ。いざ塔に登らんと意気込んでみても、すぐ戻ってくると思ったのに。その性格上、もうダメだと思っても飛ぶことはないだろうが、万が一ということもある。誰に唆されているかはしらないが、早いところ連れ戻さないと。一ヶ月分の色々を詰め込んだカバンを背に、最初の一段に足をかけた。


***


 どうしよう、もう一週間だ。怖がりなのを克服したいがあまり塔を登るなんて大口を叩いてしまったけれど、いざ塔の中から上を見たら怖くて逃げてしまった。それから家に帰ることもできずに、一週間。持っていた食料は二日で尽きて、いつもの場所から少し離れた宿に泊まってやり過ごしている。今帰ったらどうなるだろうか。バカにされるのは間違いないと思う。どうせできないことをやるなんて言って、案の定尻尾を巻いて逃げたんだから。そう考えると嫌になって、ベッドにうつ伏せになる。いいさ。もうちょっと時間をかけてから帰ろう。適当な言い訳をお土産に。

読了ありがとうございました。

張らない方がいい意地もありますよ多分。

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