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散逸した草稿 - 短編集。  作者: 毒島複廊
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題:ナイフ

カッターなお話です。

 鞄にカッターナイフが入っていることを確認して、家を出る。


 別にいじめられている訳じゃない。僕は確かにクラスの中でカーストは低い方だが、触れられることすらなくただ空気として存在している。

 でもわかる。バカにされていることくらいは。僕が本を読んでいるとき、他の奴に椅子を取られて困っているとき、体育の授業で気づかれないようにサボっているとき、誰かが僕を指差して笑っている。


 そこで、カッターナイフの出番というわけだ。

 とはいえ僕も実際にこれを振るおうと思ってはいない。そんなことをしたら僕が一方的に悪ということになり、与えた傷よりも大きなダメージを受けることになるだろう。本当に悪いのは僕じゃないのに。


 本当に強い奴は喧嘩しない、という話がある。強いが故に誰も挑まないのだ。それと同じ。抑止力を持つことによって争いを未然に防ぐ。力を実際に使うのは二流、一流は使わずして力を示す。


 歩を進めるたび、鼓動が速くなっていくのを感じる。あいつらの首を一閃してやれたら。別に切り落とす必要はない。ただ傷つけられたら。そこから血が溢れて倒れるだろう。そしてあいつらは僕を恐れるようになるのだ。もちろん、そんなことはしない。最終的には損だから。


 教室に着いて自分の席に真っ直ぐ進む時もそれは変わらず、心臓が爆発してしまいそうになる。腰を下ろして大きい息を吐く。鞄を恐る恐る机の横にかける。爆発物でも扱うかのような動きに隣の席の奴が不審そうな目で見てくるが気にしない。こいつは第一候補だ。何とは言わないが。


 ふと不安になり、鞄の中を手でかき回す。入っていることを確認する。その瞬間、解放されたかのように落ち着きを取り戻す。妄想でしかなかったそれが確かな形を持って手の中にある。これなら大丈夫だ。刃を出すまでもない。チラつかせるだけで十分。僕は強い。


 少しして、ホームルームが始まる。まだこれを手の中で転がしているが、僕の席は後ろの方だから多分バレない。話は全然入って来ないけど。と思っていたら知らない先生が教室に入ってきた。多分別学年の担任だろう。共有し損ねた連絡事項でもあったのだろうか。


 その疑問にはすぐ答えが出た。そいつは使者じゃなかった。


「おし、じゃカバン上げろ。モチケン始めるぞー」


 抜き打ちの持ち物検査だった。

読了ありがとうございました。

タイミング悪いことってありますよね~。

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