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散逸した草稿 - 短編集。  作者: 毒島複廊
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題:浮足立つ

翼を授かった人のお話です。

 小さい頃から、ずっと空を飛びたかった。

 飛行機やら気球があるじゃん、なんて野暮でつまらないこと言う人ばかりで今まで本当に私を理解してくれる人はいなかった。それでも科学と技術の力によって、私の望みは叶えられた。


 二千百二十万円。手術にかかった諸々の費用の合計。寝食を惜しんで働いて、体を壊してでも頑張った。


 そして私は翼を手に入れた。最新鋭のマニピュレータと神経接合技術によって腕を動かすかのように飛ぶことができる……はずだった。


 実際のところ、そんなに太っているわけでもない私の体重を支えるには力不足で、出力を最大にすれば不可能ではないにしてもすぐにバッテリーが切れてしまう。

 そして何より、コントロールが困難であること。これが問題だった。翼を手に入れてすぐの私は病院の中庭で飛行を試みて、背中を地面に思いっきり打ち付けた。いくら腕のように動かせるとはいえ全体のバランスを取るにはかなりの平衡感覚が必要で、安定させるには揚力も利用しなければならない。が、バッテリーの問題により高く飛ぶことはできない。


 翼を付けるにあたって、私は色々なことを諦めた。背中に大きなものが付くのだから、それまでとは違う生活になるのは必然だろう。そして、私はそれを受け入れていた。なにしろ夢が叶うのだから。


 私は今、およそ一日に一度、二分間、高さ二メートル程度の飛行ができる。それと引き換えに失ったものは数えることができないくらい多く、大きい。


 こんなことなら、と思う。過去に戻れたら、とも。でも、それでも、私は夢を叶えたかった。ただ、それだけだったのに。

読了ありがとうございました。

飛びたいもんですよね、空を自由に

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