題:先人に学ぶ
不運な人のお話です。
浮遊感さえある、夢だと信じたい、それでも目の前のそれは現実だった。
血だまりに沈んだ身体。それも──自分の。
一体何が起こったのかわからない。俺はやることがなかったから何の気なしに散歩に出ただけなのに。道端で第一発見者になるとは誰が思えようか。それも、自分自身の。
思わず目を逸らしたくなるが、眼がガッチリ固定されたように動かない。瞼は閉じることを拒み、視界の享受を強制してくる。まるで見逃してはならない何かがそこにあるかのように。とはいえ間違い探しでもなし、間違いというならば生きているはずの俺が死んでいるのが何よりの間違いだが、見た以上の情報があるとも思えない。ただ俺が倒れている、だけ。
だけ、か?
血は頭から流れ出ている。そこには何かがぶつかった跡がある。まるで上から何かが降ってきたような。
咄嗟に後ろに飛び退く。何の根拠もない。通行人がいたら不審に思うだろうその行動は、果たして正解だった。目の前で砕け散る植木鉢は、俺だった俺を欠片でかき消した。やっと動かせるようになった視線を上に向けると、誰もいなかった。代わりに、少し危ない位置に並べられた植木鉢があった。そのうち一つが落ちてきたらしい。
はああ。大きく、息を吐く。何だったのかはわからないけど助かった。今日はもう帰るとしよう。
踵を返した俺の視界に、また血だまりが広がっていた。
読了ありがとうございました。




