題:グレイブ・バリヤー
埋める人の話です。
黒と白が均等に混ざった空から、涙のような雨が降っている。この町ではいつものことだ。
どこにも行けない人たちが、最後にたどり着いた場所であるこの町では、毎日のように誰かが目覚めなくなって、土に埋められている。
好きなものも、嫌いなものも、趣味も、年齢も、名前さえ知らない誰かを、等間隔に並んだ穴に投げていく。
一つ一つ投げていくたび、何かできたことはないかと考える。骨ばったこれは、パンをあげていたら救えたんじゃないか。枯れたこれは、水を汲んできたら助けられたんじゃないか。黒く斑点のできたこれは、薬を分けられれば守れたんじゃないか。
無力感に苛まれながらも、今日ここに埋まったのが自分でないことに安心を覚える。誰も救えない僕は、誰にも救われることなく終わっていく。
でも、それでいいんだろう。僕も誰かを助けてきたわけじゃない。実際に手を差し伸べて、最後まで守れるかわからないから。そして駄目だったとき、きっと今以上に、ずっと確実に、自分の非力さを思い知ることになるだろうから、僕は誰かを救えない。
全ての穴に「それら」を入れたら、土をかけて見えないようにする。直視するには苦しすぎるから。誰一人として、安らかな表情で止まってはいないから。
僕がそうなるのは、明日かもしれないし、明後日かもしれない。いずれにしても、僕は埋め続ける。救えなかった贖いとして、あるいは、自分もせめて土の中で眠りたいから。
読了ありがとうございました。またよろしくお願いします。