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散逸した草稿 - 短編集。  作者: 毒島複廊
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題:逃げ出した

病室の女の子のお話です。前回のつづき。

 病室から逃げ出した私は、まず廊下をバレないように進んだ。電気は点いてるけど暗い気がすると思ったら、窓が全然ついてなかった。閉鎖病棟というやつだろうか。ますます怪しく感じる。


 廊下は一本道なので迷うことはないけど、どこまでも続いているような気がして怖い。途中には病室の扉が並んでいるだけで、前におばあちゃんのお見舞いで行った病院にあったようなベンチとか自動販売機とかは一切ない。それに角が多いから一生脱出できない迷路に入り込んでしまったみたいだ。


 聞いたことがある。こういう病院とか学校みたいな場所は、テロリストに襲われないように複雑な構造をしているそうだ。ここもきっとそういう風に作られているに違いない。本当は人を守るための仕組みが、今は私の脱出を邪魔するものになっているなんて、皮肉なものだ。


 ……トン……。


 遠くから、足音が聞こえた気がする。角を挟んで向こうだから姿は見えないけど、私は抜き足差し足で歩いてるから少なくとも私のじゃない。


 もしこの足音が私をさらった黒服のものだったら。また気絶させられて、今度は本当に体中をいじられて、ロボットにでもされてしまうかもしれない。そんなのは嫌だ!


 私は急いで、でもできるだけ音が立たないように、近くの病室の扉を開けて、そっと忍び込んだ。ベッドの下に隠れるのは定番でホラーだとすぐバレるけど、私はかくれんぼで最後まで見つからなかったことがある。この病室を開けるとは限らないし、開けたとしても隠れ通してみせる。


「お嬢ちゃん、どうしたんだい?」


 背後から声がして飛び上がる。高校生くらいに見えるお兄さんがこちらを不思議そうに見ていた。私としたことが、廊下に注意してばかりで病室の中の人のことをすっかり忘れていた。


「あの、ここにかくまってください!」


 私は大慌てでそう頼んだ。この人は患者さんみたいな服を着ていたし、黒服の人みたいな怪しい感じもなかったから。


「? いいよ、こっちのベッドに隠れておきなよ」


 お兄さんは首を傾げながらも私を自分のベッドに入れてくれた。シーツの中に潜り込むときに男の人の匂いがしてドキっとしたけど、今はそんなことをしている場合じゃないのだ。目をつぶって、早く通り過ぎるように祈る。


 やがて、ガラっという乱暴な音とともに、病室の扉が開かれた。

読了ありがとうございました。

まだつづきます。

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