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散逸した草稿 - 短編集。  作者: 毒島複廊
15/36

題:私の正義/後

怪人のお話です。

これは後編なので前編から読むともっと楽しめると思います。多分。

どうでしょう。

 硬質なスーツにたなびくマント。その手のガントレットは輝いている。

 ()()「ロンリー・オーダー」。己の正義を執行する怪人。


 今日も彼はパトロールと称して町の一定のコースを巡回する。彼の定義する「悪」を見つけるために。時折ヒーローがルートを特定して待ち伏せすることもあるが、その能力から確保には至っていない。


 暗がりの路地裏──彼が最近パトロールコースにしたところ──で、学生が不良にカツアゲされているのを、ロンリー・オーダーが発見した。社会通念上も悪とされる、ごく普通の悪。特に怪人が発生するようになって以降、治安は悪化の一途を辿っている。こんなカツアゲも、警察に通報すればよくある事件の一つとしてすぐ問題なく処理されるだろう。だがしかし、ロンリー・オーダーには目の前の悪を放っておくことなんてできなかった。


 現場を目にしたロンリー・オーダーは、まず怒りに震えた。それから、おもむろに拳を不良に向けた。とはいえ両者は横断歩道を挟んだうえに路地に入り込むので数十メートルはあった。そのままならば拳は空を切るだけだ。そう、そのままならば。


 次の瞬間、不良の頭が弾ける。地面に落ちた柘榴のように、砕かれた西瓜のように、赤と黒の混じった液体が辺りに飛び散る。頭部があったはずの場所には何もなくなり、血を溢れさせる首の断面が本来そこに位置しているはずのものの存在を訴えていた。


 これは紛れもなくロンリー・オーダーの能力によるものである。彼の能力は空間移動であるのだが、それに伴う慣性操作に秘密があった。


 例えば実際にコンマ一秒にも満たない時間で数十メートルの距離を飛んだ場合、周囲への被害はどうなるだろうか?ソニックブームが発生し、人間はもちろん、建物でさえ重大な被害を追うだろう。しかし、空間移動ではその過程を無視するため、移動前と移動後の二点間を結ぶものに影響はない。では、彼自身はどうなのか?いくら過程を無視しているとはいえ事実として移動したその距離が負荷をかけ、まともに食らえば身体がバラバラになるのである。彼の能力は正確に言うならば「自身を高速で射出し、目標座標までの因果を自身を除いて無視することで空間移動する」能力なのだ。そして、それをコントロールするために無自覚に生み出した副産物。それが慣性操作だった。


 難しいことは何もしておらず、自身に与えられた強大な慣性を自身にストックしておいたり一点に集中して放出することで、生身には出しえない威力を誇る。ただそれだけのことで、不良を首無しにするには十分。


 凄惨な状況にカツアゲされていた少年が腰を抜かすのは至極当然のことで、そんな少年の様子にロンリー・オーダーはカツアゲに怯えていたことが原因だと思ったのか、

「もう大丈夫だぞ、少年ン!」

 とサムズアップと共に元気づけた。ついで手を差し伸べるも、後退りする少年。これも仕方がないだろう。自分を脅かしていた不良を一撃で吹き飛ばした更なる脅威。次のターゲットは自分だと思うのも無理はない。


「おや、後退りのまま道路に出たら危ないぞ!私はパトロールに戻るから、君は落ち着いたら帰りなさい。大丈夫だからな!このロンリー・オーダーがいる限り!」


 少年は目の前の存在の機嫌を損ねないようにとにかく頷いた。ロンリー・オーダーは満足げに


「また困ったことがあった呼んでくれ!合言葉は『マイ・ジャスティス』だ!」


 ガッツポーズしながらそう高らかに宣言すると、能力を使って反対側の道路に抜ける。


 そうして彼は拳を振るい続ける。己が正義を貫くために。

読了ありがとうございました。

後編を書きましたが、続いたら続きます。

マイ・ジャスティス!

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