題:私の正義/前
正義の味方のお話です。
硬質なスーツにたなびくマント。その手のガントレットは輝いている。
私の名前は「ロンリー・オーダー」。合言葉は「マイ・ジャスティス!」だ!
今日も町中をパトロールする。怪人はもちろんのこと、最近はヒーローですら秩序を乱す者が多い。なんとも嘆かわしいことだ。
だが問題ない。このロンリー・オーダーの目が黒いうちは、何者にも秩序を破らせない。私の熱く燃える心臓に誓って。
パトロールコースの途中で、捨て猫に餌をやっている少年を発見した。自分で責任を持って飼えないのに餌だけをやるのは褒められた行為ではないな。排泄物が町を汚すし、感染症の原因になるかもしれない。能力を行使して少年の目の前に移動する。ちょうど少年と猫の間に位置する形になる。
「おわっ……なんですか」
少年は面喰らっている。仕方ないだろう、ヒーローがいきなり目と鼻の先に出現したのだから。私の能力はまあ、有り体に言えばテレポートなのだが、町全体に目と手を行き届かせるには大切な能力だ。距離にも限界があること、使った後は飛んだ距離に応じたインターバルが発生するのがデメリットではあるが、今のところ問題になったことはない。
それより今は、少年だ。別にこの少年も悪意があってやっていたわけではないだろう。捨て猫は可哀想だし、この年頃なら自分と重ねて庇護欲を煽られても仕方がない。
とはいえ、秩序を乱す行為であることに変わりはない。
「即刻、この猫に餌を与えるのをやめたまえ」
「誰ですか、そんな権利あなたにあるんですかっ」
少し怯えた様子で反駁してくる。もしかすると、少年にとって数少ない憩いの時間、そして場だったのかもしれない。それを侵してしまったのは申し訳ないが、秩序を乱す行為であることに変わりはない。
「私はロンリー・オーダー。秩序を守る者だ」
「もしかして……ヒーロー?」
「その通り。気持ちはわかるが、責任を持って自分で飼えないのならそれは偽善的な行為に過ぎない。大人しく猫を引き渡してもらおう」
「引き渡すって……どうするんですか?」
こちらを若干警戒しているようだ。もしかすると、捨て猫を悪だとして粛清するのだとでも思っているのかもしれない。もちろん、そんなことはしない。
「然るべきところに連絡する。処遇はそこで決まるだろうさ。私とて飼えないのだから仕方がない」
「然るべきところ……でも、ヒーローが言うなら……」
「悪いようにはしない。約束する」
「わかりました……」
少年は少しの間項垂れた後に猫に目を遣ったが、別れが惜しくなると思ったのかそのまま大通りへと走り出した。これでよかったのだ。携帯を取り出し、保健所へと通報する。後は専門家に任せるとしよう。
読了ありがとうございました。
これも続き物になると思います。タイトルに前ってつけたし。




