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美しい薔薇にはマナがある!?

「今日はパンが安く買えたな~♪」


「なにのんきなこと言ってんのよ?撮影の方は行かなくていいの?」


「うーん。だって金欠過ぎて、特売日を利用しないと食費が……」


 リュートとティンクは、ずらりと商店が並ぶ市場の大通りを進んでいた。リュートはいっぱいになった紙袋を小さな体で抱えている。少しでも日々の昼食代を安く済まそうという悪足掻きである。そこへ唐突に甲高い悲鳴が聞こえてきた。


「や!やめてください!!」


「やっと捕まえたぜぇ!へっへっへ……。こっちへこい!!」


 見れば、嫌がる女の腕を強面の男が掴んでいた。痴情のもつれだろうか?と、リュートはなんとなくその二人から目を外せなくなった。すると女は腕を振って男の手を払う。そのままどこかへ行こうと踵を返した。しかしその金髪の長い髪は、男にとって都合の良い手綱となってしまう。


「いやぁっ!やめてっ!!はなしてっ!!」


「行かせるか!逃しはしねぇ!!しっかり体で払ってもらうからなっ!!」


 必死に抵抗する女と目が合った。目からは一筋の涙があふれて、石畳の地面にこぼれる。リュートは感情のままに口と足を動かした。


「その子を放せ!」


「あん?誰だ貴様ぁ?」


「僕はリュート。流されない男、リュートだ!そんなに嫌がってる子を放っといて、呑気に昼飯なんか食べてられるか!!」


「た、助けてください!!このままだと私、この凶悪な男に何をされるか……っ!」


「おいおい。凶悪な男はあんまりだろ……。へっへっへ、確かにそういう約束だったよなぁ?全身全霊で尽くしてくれるっていう……。イヒヒヒヒ……!」


「確かに約束はしました。ですがあなたが、まさかマナの力であんな事をする人だなんて知らなかったんです!ぐすっ……知ってさえいれば……こんなことには……」


「くそっ!()()()()()()な顔しやがってっ!そんな約束は無効だ!!」


「あんちゃん五月蝿いなー。ひょっとしてこいつの知り合い?ギルメンとか?」


「た、たとえ初対面だろうと、どー見てもお前が悪人でその子が被害者だろ!?」


 リュートは強面な男の顔面を指差して言った。いつの間にかできた周囲の人だかりから無言の視線が集まる。


「いやそれヒドすぎワロタ……。この顔にピンとこない?俺もこいつも、こう見えてなろうチューバーなんだけど……?」


 男はそう言うと女の顎を掴んで、顔をグイと正面に向けた。リュートに見やすいようにするためだ。


「その汚い手をどけろぉぉーーっ!!」


 リュートは渾身の飛び蹴りを披露した。男が油断していたのか、それは男の頬にクリーンヒットした。


「ひでぶっ!――ちょっと待て!俺は何も悪くない!話を聞け!」


「あーたたたたたたたっ!!!」


「うわぁーーーーーっ!!」


 リュートの連続パンチに男は思わず悲鳴を上げた。そんな男に向けて、すかさずトドメの一撃が入る。


「ったぁーっ!……お前はもう――死んでいる」


「あ、あ、あ……あ゛ーっ!!!!……」


 男は自分の体に違和感があるのか、体のあちこちをしきりに触っている。男の眼が、今にもこぼれ落ちそうなくらいに見開いた。


「――って何も起きねぇじゃねぇか!」


「えっ!?マジで……!?この流れ……リュート神拳、キマらないのぉ!?」


「ってか、キックもパンチもマジで弱ぇな……。()に本物なのかと思ったぜ」


「くそぉっ!!カッコつけたかったのにーっ!!」


「慣れないコト(パクリ)するからよ……」



「――そう。あれは俺がいつものように、自分よりも少し高いランクの敵が出るダンジョンに潜っている時だった……」


「唐突に〝世紀末〟が回想始めやがった!?流れが強引すぎるよぉっ!!?」


「そこには場違いなほど可憐な……じゃない。ダンジョンで煌めくクリスタルより美しい……じゃなく。数多の男が魅了されるという、セイレーンも霞んでしまうほどの……って違う!!!……と、とにかく女がいた――って、誰が〝世紀末〟やねん!」


「確かに可愛らしい顔してるわよね?」


 ティンクは傍らで大人しく話を聞いている女に目を向けた。目鼻立ちの整った顔に長いまつげ、少し赤らんだ頬と唇……誰もが口を揃える美少女である。


「いかにも世紀末らしい理由だ……」


「俺は彼女に声をかけた。決して邪な気持ちなどない。単にコラボした方が、ダンジョン攻略に有利だと思ったからだ。下心など微塵もない。断じて!彼女は俺の誘いを快諾してくれた。やった仲良くなれる!俺は心底嬉しかった」


「下心マックスハートじゃねぇか……」


「俺は攻略すべく全力で進んだ。襲い来る魔族を華麗に仕留め、道に迷うことなく、分かれ道も円滑にエスコートした。なるべく優しく声をかけるように努め、休憩時間を挟んだり、困ったことがないか気を配ったりしながら攻略を進めた」


「もはやダンジョンを攻略してるのか、彼女を攻略してるのかわからないわね……」


「だが俺は気付いた。何かがおかしい……。彼女は攻撃魔法どころか、回復や支援魔法も発動してくれない……。隠れてデオドラントスプレーをかけていたから、俺の体臭のせいとは考えにくい。口臭もミントガムのお陰で爽やかなはずだ……俺は首を傾げた」


「体臭気にしてるのなっ!?その顔で!!偉いよっ!!」


「そして俺のデビラがその答えを運んできてくれた――その女は、迷惑系なろうチューバーとして知られる〝わらしゃんどえぞ〟だったんだ!!」


 (世紀末)は佇む女を指差して言った。鬼気迫る勢いである。


「迷惑系なろうチューバー??」


「ああ、そうだ。あんちゃんもなろうチューバーなら聞いたことあるだろっ!?」


「いや!ない!!」


「呆れるほど潔いな……」


「僕、こう見えてもなろうチューブあまり見ないので!ドンッ!」


「い、いや……見よう?少なくともそれだけ弱いんだから、見たほうがいいよ。先輩とかライバルの配信、研究したほうがさぁ……ってか、ドンって自分で言うのな?」


 すると黙って聞いていた女が口を挟んだ。


「迷惑系なろうチューバーって、誰のことですか!?まさか、リュートさんが!?」


「いや、あんただよ。あんた。話聞いてなかったの?エゴサしたら出てくるでしょ?なろうチューブのコメント欄でも言われてるし……」


「私、こう見えてもなろうチューブはあまり見ないので!エゴサとかよくわからないので!ドンッ!」


「お前もドンって言うのな!?いや、見よう?あんたそっちの界隈じゃ相当嫌われてるよ?アンチすげぇいるよ?エゴサはしなくてもいいけど、自分の動画のコメント欄は見よう……?」


 呆れ顔で眺めていたティンクがリュートに口添えをする。


「ちなみに迷惑系なろうチューバーっていうのは、売名目的で迷惑行為をはたらくなろうチューバーのことよ……」


「ありがとうティンク!Y○uTuberにも似たような人達がいるよ!!」


「それからは災難だった……そいつはあろうことか、HPを削った魔族に対して回復魔法を使ったり、俺に対して攻撃魔法を使ってきたり、落とし穴の方へ俺を誘導して落とそうとしたり、デタラメに周囲のヘイト集めて魔族の群れを差し向けてきたり……そうこうして気付いたときには姿が見えねぇし……うっ……うっ……」


 (世紀末)は両目に手を当てて泣き出してしまった。


「あー……相当怖い思いをしたのね……お気持ち察するわ……」


「……うっ……うっ……ありがとう。……それでやっとの事で町に逃げ帰ってきてみたら、悠々と買い物してやがって……!それで声を掛けたんだ!そしたらまた逃げ出すものだから……!」


 ティンクは気の毒に思ったのか、(世紀末)の背中をなでてやっている。リュートは女に視線を合わせた。


「でも、なんでまたそんな事を……?」


「だから、売名のためでしょ?わざと炎上させて、再生回数稼ぐためよ!」


「ち、違います!」


 女は必死の形相で身を乗り出した。


「そ、その男が魔族をやっつけていたからです!!」


「……」


 一同の時が静止した。


「……は?」


「で、ですから!その男が魔族を一方的にやっつけていたんですっ!!」


「それの何が問題なのよ?」


「何って……よいですか?魔族も生きているのですよ!?」


「はー……?」


「この世に生を受け、成長し、毎日を生きている。我々と同じように……!家族だっているかもしれません!それを一方的に蹂躙してよい道理などないのです!!」


「うわー……」


「それに我々の持つマナは暴力的な行為を行えば行うほど、汚れていってしまいます。ナマを綺麗に保ちましょう!それによって私達の日々も充実していくんです。マナの浄化です。私達の教えによって救われた信徒達が数多く……」


「……」


 女を残して、皆トボトボとその場を後にし始めた。


「えっ!?……ちょ……皆さん、どちらへ行かれるのですか!?まだお話が……!」


「残念だったわね……ただの美少女かと思いきや、とんだ電波ちゃんだったなんて……」


「うっうっ……!俺の時間を返してくれ……」


「世紀末さん!真っ昼間ですけど、呑みましょう!お金ないんで、世紀末さんの奢りですけど!!」


「この状況でたかるっ!?俺だいぶ傷心中なんだけどぉぉっ!!?……まぁ、でもいっか。俺の愚痴をたっぷり聞かせてやるよ……」

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