コラボは綿密な打ち合わせと短期的な打算を兼ねて
「たのもぉぉぉぉぉぉうっ!!」
突如としてリュートの部屋にドアを蹴破る豪快な音が響いた。
「うわっはっはっはっ!来てやったぞ!リュートよ!」
「いや、呼んでないんだけど……」
廊下と筒抜けとなった部屋の入り口には、笑い声を轟かせる男が立っていた。
「ん?どうだ?ちゃんと勉強はしているか?学校も休まず行くんだぞ?」
「いや、学校行ってないから…….。なろうチューバーに勉強は必要ないし!」
「いやぁ~リュートさん。すんません。むっちゃお騒がせしてもうて――」
男の横から割って入ったのは、ティンクと同じ妖精であった。申し訳なさそうに頭の後ろに手を当てている。
「やぁ、チョッケル。おはよう。その馬鹿に、来る度ドア破壊するの止めるように言ってくれる?一話完結だから、次回は直ってるとはいえ……」
「えらいすんません。なんぼ言うてもきかへんのです。今日はどうやらリュートさんに話があるみたいやから、聞いてやってくれへん?」
「ぬぬぬぬ……」
妖精のお膳立てを受けて男が震えだした。眼鏡を掛けているが、光の反射のせいでリュートからは目元の表情が読み取れない。
「学校へ行けーーーっ!!!」
――バシンッ!
「なんでやねんっ!ちゃうやろ゛ぉぉぉっ!!!」
妖精が何処からか取り出したハリセンが、勢いよく男の後頭部にヒットした。男は微動だにすることなく、ズレた眼鏡を元に戻しながら続けた。
「知識はすべての源泉だ!知識がなければ、人は犬畜生魔族と同じ!人に与えられし学問という英智を、自ら放棄する!?それは愚行以外の何ものでもない!!何度言えばわかるんだ!?」
――バシンッ!
「それはこっちのセリフや!学者さんを目指しとるなら、その言い分はわかる。けれどジブンらはなろうチューバーやろ!?勉強ばっかりしとるんやのうて、魔族を倒せっていう話や!何回言えばわかるん?」
「なろうチューバーに学力は必要ないだとっ!?――」
――バシンッ!
「シカトしな!」
「――ふんっ!そんな考えは直ぐに時代遅れになる!!高学歴のなろうチューバーと、低学歴のなろうチューバー。同じ動画なら、リュートはどっちの動画を見る!?」
「うーん。強ければどっちでもいいかな?」
「そう!高学歴のなろうチューバーだっ!!」
「――相変わらず話が通じねぇ……」
「どうしてウチはこないな奴と契約してもうてん……」
「学校に行く理由は学歴だけじゃない!学校生活でしか体験できないことだらけなんだ!協調性!チームワーク!同年代の中で自分がどれほどの実力なのか!何が得意で何が苦手なのか!社会の中で自立したときにためになることが□△〇×§Ч‰㍵……」
「あ゛~!これじゃあ話が進まないよ!なんで来たの!?タイトルに〝コラボ〟って入ってるんだから、その話をしに来たんでしょ!?さっさと一緒に魔族倒しに行こうよ!?」
「リュートよ、さっきからメタ発言が目立つぞ!?まだ四回目だというのにネタが尽きてきているというのか!?作者大丈夫か!?――因みにメタ発言とは、メタフィクション発言の略で、フィクションと現実の境界を壊すセリフのことだ!そもそもメタとは高次元や超越するといった意味合いの単語で、それとフィクションを融合させた言葉がそれだ。それもこれも全部授業で習うぞ!」
「いや、どんな学校やねん……っていうか普通に僕、大学卒業してるから……」
「はははっ……!冗談はよせ!背伸びはよくないぞ!?」
「うわ、もうぶん殴りてぇー!!」
「これで千四百字稼げたからな!さっさと狩りに行こうぜっ!」
「字が違ぇぇぇょぉぉ!メタメタし過ぎなんだよ!!!読者が引いてるのがわかるよぉぉぉぉっ!」
・
・
「うわ~、私こいつ超苦手なんだけど……言葉通じないから。チョッケルよく続いてるわね……」
ここはヘキトウ町近くの森。ティンクとチョッケルが並んで飛んでいる。二人並ぶと年の近い姉妹のようである。一同は一緒に魔族を倒して、それぞれ動画をアップするコラボという戦法で一致団結した。
「いや、もう限界かもしれへん。リュートさんと出会う前は動画撮らんと勉強してるだけやったけど、最近撮影し始めて暴走がえげつないわ」
「ふんっ!聞こえてるぞ、デビラ達よ。これは勉学の重要性を広めるための布教活動なのだから、断じて暴走ではない!」
「違うよねぇぇっ!?マナをたくさんもらうための動画撮影だよねぇぇっ!?強い魔族倒して総再生時間増やすためだよねぇぇぇぇっ!!?」
「私は最高の教育機関を作る!!」
「なろうチューバー止めちまえよっっ!!??」
「はっはっはっ!今のは冗談だ。高学力冗談」
「……冗談に聞こえないよ。でもでも一人だと倒すのが難しい魔族でも、二人でなら倒せそうだよね!?これで再生数鰻登りだぁ!」
「そう上手くいくかしら……?」
一同は藪の影から森の一角を覗き見た。日の光がそこだけ射す、森の広場だ。大きな倒木の側では、大きな傘を揺らして化けキノコが動いていた。マイコニドである。
「では分担を決めよう。リュートは直接攻撃が得意だから、前衛。私は指示を出しながら、魔法や飛び道具で支援する後衛をしよう」
「うぉぉぉっ!キンチョーする!コラボなんて初めてだから……!絶対成功させようね!」
リュートは武者震いを抑えきれなかった。そればかりか表情にも強張った顔が出てしまっている。眼鏡の男はそれを見かねてか虚勢を張った。
「当たり前だ。私の天才的な頭脳にかかれば、あのレベルの敵を倒すことなど朝飯前だ」
「うん!……期待してるよ!」
二人はせーのの掛け声で同時に飛び出した。マイコニドは直ぐさま、自らに近づく異変に気づいたようだ。鍋に入れる椎茸のように、傘に星形の切れ込みが入る。そしてそこからは大量の触手が伸びてくるのだった。
「回転斬り!」
リュートの剣はそれらを一網打尽にした。剣の残像が消えた場所からは、パラパラと切り離された触手達が落下する。リュートは更に敵との距離を詰めるべく一歩踏み込んだ。しかしマイコニドはそれを予期していたらしく、リュートの動きと同時に後退りをする。そしてリュートの目の前には、マイコニドが出した丸い胞子の爆弾が風船のように浮かんでいた。
その風船は大きく息をするように、周囲に胞子を吐き出した。間一髪リュートは服の袖で鼻と口を覆い、それを体内に入れるのを防いだ。
「これじゃあ、迂闊に近寄れない!何か対策は――」
「はい。じゃあ前回の続き、参考書十三頁から始めまーす――」
リュートが振り返ると、眼鏡の男は大きなホワイトボードを背景に教鞭を執っているところだった。
「うぉいぃぃぃぃっ!授業始めてんじゃねぇぇよぉぉっ!?今戦闘中ぅ!!」
「今回の配信では、魔法や飛び道具を意識した支援法を紹介します。皆、是非参考にしてくれ!」
「驚愕だよぉっ!!それ今やることぉっ!?僕戦ってるんですがぁっ!?」
「そこぉっ!授業中にやかましいっ!!皆の邪魔にならないように立ってなさい!!」
「合ってる!!合ってるよ!?その注意は正解だよ!!でも今戦闘中なっ!!??既に立ってるどころじゃなく、戦ってるんだよぉぉっ!!」
マイコニドは絶好の機会とばかりに、胞子爆弾を次々と放出した。そのまま逃げ回るリュートに触手攻撃を続ける。リュートは辛くも倒木や水たまりといった障害物を乗り越えて逃げ続けている。
「チョッケル!!!私の戦闘、撮ってるか!!??」
「悲しいことに撮っとるわ!意味あるのかわからへんままにねぇぇっ!これどないすんねん!?このままアップするのぉぉぉぉっ!!??」
「当然だ!私の戦闘を楽しみしている生徒が全国で待っているのだ!!私は最後まで戦うぞ!諦めてたまるか!!」
「字ぃぃぃっ!さっきから字が違ぇんだよぉぉぉっ!?少しは戦闘に貢献しないと!動画、BANされるよっ!?」
リュートが胞子爆弾の間を縫って、マイコニドとの間合いを詰めた。身を翻して、華麗に伸びてくる触手を避ける。リュートの剣が体の半周を回って、綺麗な軌跡を描いた。
「授業中だが、仕方がない――」
「回転――」
その時、眼鏡の男の手が光った。それと同時にリュートの足を掬うように、木の根がせり出した。
「――ぎぃ、りぃぃぃっ!?んなーっ!!」
リュートはバランスを崩してよろめいた。それまで綺麗な弧を描いていた剣が、デタラメな軌跡を描き始める。そしてリュートの体は、そのまま地面に吸い寄せられるように倒れこむのだった。
「んのぉぉおぉっ!!負けるかぁぁぁ!!!」
しかしである。リュートは倒れる寸前、腕を振り回した。地面に勢いよく胴を打ち付けたリュートの手に、剣は握られていない。剣は確かに、マイコニドの額に突き刺さっていた。顔を上げたリュートは歓声を上げた。
「やったぁあ!見たか!」
ところがである。マイコニドの様子がおかしい……どころか、平然としている。見れば緑の光と共に額の傷が塞がっていっているではないか。
「な……!」
「はっはっはっ!どうだ!?私の天才的な回復魔法は!?傷は癒えただろ?これでBANとは無縁だ!折角の授業が無に帰するのは避けられたな!」
「無に帰ってくれぇぇぇっ!!てめぇ!何してくれてんじゃーっ!!!」
彼の名前はがりべん。青年革命家がりべんである。リュートはマイコニドから逃れるべく全力疾走しているがりべんに尋ねる。
「……はぁ、はぁ。ってか、がりべんってどこの学校通ってるの……?」
「私は三浪中だ!」
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※著者は動画の配信活動はしておりません。
現在のストックはここまでになります。今後当話のテンションで更新していければと考えております(#^.^#)。「ノリがキツい……」という方には折角お読み頂いたのに申し訳ありません。
追記
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