FC SDガンダム外伝 ナイトガンダム物語
FCのマイナーRPGをやってみた感想文です。
サクッと昔ながらの定番RPGをやってみたいと思うなら、ちょうどいいゲームなんじゃないかと思いました。
『サクッとやるには』とは言いましたが、とある理由からクリアまでにそれなりの時間はかかると思います。その矛盾した言い方の理由として、一つに、このゲーム内の世界は非常に狭く、ワールドマップは画面で4×4くらいしかない『ご近所物語』でしかないため、行き先に迷うということはないということ。山に囲まれていない方にちょっと進めば村が見えて、『あぁ、そこに行けばいいのね』と誰でも分かります。しかしその、あまりのボリューム不足を補うために異常な高エンカウント率にして、さらにその異常な高エンカウント率によって高速でレベルが上がってしまわないようにレベルアップに膨大な経験値が必要となるようバランス調整しているため、クエスト自体は単純明快で簡単なのにクリアまでには結構な時間がかかるという仕様になっています。
ゲームの出来そのものは結構良いんです。キャラのデザインも元がガンダムなので総じて良いですし、挿入されるムービーも多くて描き込みもドラクエなどより遥かに緻密でFCソフトとしては断トツに良く出来ていると思います。
ただ、問題点も多いと思いました。
一番の問題点は、やはりエンカウント率じゃないでしょうか。五歩以内には確実に、一歩毎に敵が出る事もザラです。しかも敵は単体で出る事は稀で大概は群れて出る上にオートターゲット切替が無いので、Aボタン連射だけでは一掃出来ず。ドラクエ4のように『作戦』コマンドで味方全員が自動でそれぞれ別の敵を物攻する『分散』という作戦もあるのですが、この『作戦』がフィールドメニューではなく戦闘コマンドの一つとしてあるため、戦闘の度にいちいち作戦のコマンドを選択して作戦を選ばなくてはならず、それならばデフォルトの全員コマンドで戦う相手を選択していくのと手間がそれほど変わらないという、どちらにしても面倒な戦闘を高頻度で強いられます。当然、話がなかなか進まないし、それだけ戦ってもレベルは全然上がらないのもストレスです。
またこのレベルが上がりにくくするシステムというのも非常に良く考えられていて、このゲームでの経験値獲得というのが戦闘に参加している仲間に分配されるシステムとなっていて、味方が最大の5人で戦えば戦闘そのものは楽勝ですが、一人が獲得できる経験値は表示された経験値の1/5、ごく微量で100回戦っても誰一人レベルは上がりません。
少人数であるほど獲得できる経験値は増えるのですが、そこも考えられていて、主人公のガンダムはパーティーから外す事が出来ないようになっていて、例えばガンダム一人で進めて行けばガンダムのレベルは早い段階でMAXのLV50まで上げられますが、待機している他のメンバーのレベルは低いまま。ガンダムをLV50にしてからLVを上げたい仲間を次々と一人づつ連れて最小人数で最大限の経験値を集中的に注ごうと思っても、これ以上経験値を得ても無駄なガンダムに獲得した経験値の半分を持っていかれてしまうため、獲得した経験値の半分が無駄になってしまい全体のレベル上げには却って時間がかかるという秀逸な罠。このロスをプレイヤーの子どもたちに優しく説明してくれる待機所の受付キャラもゲーム内に配置されているのですが、果たしてこのシステムを理解して受け入れた当時の子どもっているのでしょうか。経験値の分配システムまでは気が付いたと思うのですが、少人数であればあるほどLVが早く上がり、4人パーティー+飛び入り1人じゃいくら戦っても全くLVが上がらなかったら、当然、より少人数で個別にレベルを上げようと思ってしまうのではないでしょうか。ほんとにコレ、悪魔のシステムです。
ただ、このゲーム自体は子ども向けに作られているので、普通に戦闘をこなして進めて行けば普通にクリア出来ます。レベルが足りなくてクリアできないというようなことは無く、逆に最後には攻撃力や素早さを2倍にするというようなゲームバランス無視のチートアイテムも出て来てラスボスはAボタン連打だけで余裕で倒せるような作りになっています。
この辺は、子どもたちに最後はガンダムが圧勝するという構図をどうしても見せたかったからこんな作りにしたんじゃないかと思いますが。
その他にも、ところどころBGMがホントにマヌケとしか言い様のない曲があったり、効果音が本当に不快なノイズだったり、リレミト、ルーラ、ベホイミにあたる魔法を使える唯一のキャラが戦闘で物攻が全く使えないザコのため4人パーティーの一枠が潰れてしまうとか、アイテム欄が個別で装備品もアイテムに含まれ、待機メンバーとアイテムのやりとりも出来ないため、すぐにアイテムが一杯になってしまうとか、新メンバー加入の都合で仲間がいきなりはぐれて離脱して隣町の林の中で昼寝しているという突発アルツな行動をとったり、最後まで用途不明な重要アイテムがあったり、なんのヒントも無い最初期の些細なイベントをやっておかないと魔物に騙されてヒロインの姫を刺し殺してしまい、そのムービーがリアルすぎて当時の子どもたちにトラウマを植えつけたり、戦闘でクリティカルとかわされたが同時に出たり、カードダスに凝りすぎていたり、挙げていったらきりがないほど問題点は多いですが、それはFCのRPGだからと思えばそう全体には悪い出来では無いとも思えます。
以下、ネタバレを含むストーリーです。
物語は『スダ=ドアカワールド』 という諸島のような小さな『世界』が舞台となります。
そこには人間とモビルスーツ、妖精、モンスターが共存していました。
そんな世界にある時、ジオン軍の魔王サタンガンダムが現れてスダ=ドアカワールドを支配し始めました。 やがて、サタンガンダムの魔の手は辺境の国、ラクロア王国にまで伸び、国王レビルの愛娘、フラウ姫がサタンガンダムの手下にさらわれてしまいました。レビル王は、伝説の勇者、ナイトガンダムを城に呼び、フラウ姫の奪還とサタンガンダム討伐をナイトガンダムに命じました。ナイトガンダムは「必ずやサタンガンダムを打ち倒してフラウ姫を救い出し、ラクロアの地に平和をとりもどしてみせます」 と王に約束し、城に仕えていた僧侶ガンタンク、戦士ガンキャノンを従えてラクロア城から出陣したのでした。
ここまでがプロローグ。まあ、ドラクエ1と2を合わせたような、何処にでもある話です。電源を入れると毎回このイベントが流れて、それからスタートメニューなんですよね。ロードするにも面倒くさいです。また、余談ですが、このSDナイトガンダム物語シリーズはセーブデータの保存に電池ではなくFCソフトでは唯一フラッシュメモリが使われています。当時としては、めちゃくちゃ豪華で電池切れでセーブデータが消える心配のない最先端技術搭載の仕様ですが、当時のフラッシュメモリのデータはレトロフリークでは読み込めずに誤変換されてシステム全体がバグってしまうので、レトロフリークに挿す前に必ず実機や他の互換機でセーブデータを全部消してから挿すようにして下さい。もし、セーブデータが残ったまま読み込んでしまって灰色画面になってしまったら、その後、セーブデータを消してから再読み込みしてもダメなままです。レトロフリークのシステム画面で本体内に残っているこのゲームのセーブデータとゲームデータを消去してからセーブデータの無い状態のこのソフトを挿せば正常に動き出します。ゲームプレイ中もゲーム内の宿屋でセーブしてしまってはダメで、レトロフリークのクイックセーブのみで進めるしかないです。そのため、宿屋に泊まると強制的にセーブされてしまう『SDナイトガンダム物語3』はレトロフリークでプレイするなら宿屋は使えません。
話を戻して、ゲームが始まり3人でラクロア城を出てからの流れは次のようになります。
すぐ近くに見える村にとりあえず入る → 村を出た途端にアルツハイマーキャノンが蝶々を追って失踪する → キャノンを追いかけてタンクも失踪する → 一人になったガンダムは、とりあえず次の町を目指す → 愛機をジオン軍と見間違えたアムロに襲われる → アムロはガンダムにぶちのめされると正気に戻り仲間になる → その様子を草葉の陰から見ていたタンクが出て来て仲間に戻る → 次の町で木陰で昼寝しているキャノンを発見、仲間に戻る。
ザッと流れで書かれると意味が分からない展開でしょう。狂気の沙汰です。
でもコレ、凄く考えられた流れだと思います。
まず、3人でラクロア城を出てすぐに気が付くのはキャノンとタンクが裸状態で物凄くモロいということ。一回の戦闘で半壊してしまうくらいモロいんです。城を出るときに王様が500Gも持たせてくれて、近所の村には何故か防具だけは豊富に売っている。ならば先ずはキャノンとタンクの装備を整えようと思ってしまいます。二人分の装備を全部揃えると王様から貰った支度金がスッカラカンになるくらい。ガンダム用の上位武器『鉄の剣』は700Gするので近所でザコを狩って後から買えば良いと思ってしまうでしょう。そんなスッカラカンな状態で町から出た途端にキャノンとタンクが失踪、金も仲間も失った状態で一人放り出されてしまいます。それにもバランス調整の理由があって、次に襲ってくるアムロがそこそこ強いんです。ただ、こっちに仲間がいたら余裕で勝ててしまうし、全員のレベルが低いままだと次のエリアでザコにすら勝てずに詰まってしまう。そこでガンダム単体で経験値総取りにして鉄の剣を買えるくらい金が貯まる頃にはLVが5くらいにまで軽く上がるようにしたのでしょう。そのためにこんな無茶苦茶な話の流れになってしまったのでしょうけど、これで次のエリアまでの短い距離の内にガンダムのLVを5以上にするように話の流れの中でプレイヤーを誘導出来ているのは見事と言って良いのではないでしょうか。
また、この最初の村には、全くヒントも何も無い状態で、このゲームの評価を二分する最大のマルチイベントに繋がる重要なアイテムがあります。
ネタバレですが、そのアイテムとは、さらわれたフラウ姫が落としていったペンダントで、村の端にある民家の中にいる子どもが拾って持っていて、それを取り返してラクロア城に戻り、フラウ姫の寝室にいる犬にペンダントの匂いを嗅がせておくという、攻略情報が無ければ絶対に分からないようなフラグ立てがあるんです。
後にフラウ姫が幽閉されている洞窟に行った際、フラウ姫は魔導師ララァによって魔物の姿に変えられていて本物の魔物4体と一緒に並べられ、ガンダムがロシアンルーレットのように一体づつ魔物を殺していって最後にフラウ姫が残ったら返して貰えるというイベントがあるのですが、その並びは毎回変わるランダムで(どうやっても最後の2匹目がフラウ姫になるようプログラムされていて)、前述のフラグを立てておかないと確実にガンダムがフラウ姫を斬り殺してしまい、当時のプレイヤーの殆どは自分が斬ってしまったフラウ姫が流血しながら死んでいくムービーを観るのがこのゲームの本筋だと思っていたのではないでしょうか。
それが、最序盤でヒントも無い、意味も無いようなイベントをこなしておくと、フラウ姫に斬りかかれる前に犬が割って入ってきて魔物の正体はフラウ姫だと気が付いて斬らずに済んで無事救出という流れとなるのですが、これほど天と地の差がある分岐を左右する伏線が最序盤にノーヒントで、しかも話の本線と絡まないところに置くというのも凄いというか、フラウ姫を斬ってしまう流れのほうを本筋として採用したかったんじゃないかと思えるほどです。この分岐はゲームの中盤で、フラウ姫を斬ってしまっても、姫は後になって教会の力で蘇生されて復活はするのですが、しばらくラクロア城には出禁になってしまうし、斬った後にタンクがフラウ姫の死体を見ながら『まあ、やっちまったもんはしょうがねぇ』みたいなセリフを冷静に言ったりする場面って、ホントに子ども向けじゃないもので、残りの後半を進めていくモチベーションが下がります。
ここで斬らずに済むとフラウ姫はFF2のヒルダ王女のような存在になるので、中盤のゲーム全体の雰囲気が結構変わります。
そんな感じで、フラウ姫救出までにセイラが仲間になるのですが、このセイラというキャラは惜しい。見た目が可愛らしいし最初は強いので愛着も湧くキャラですが、レベルアップしても能力が伸びず、LV50の最終では能力的に最弱となるのでどうしてもメインパーティーには入れない。
さらに、フラウ姫のイベント後にスレッガという剣士が仲間になるのですが、このスレッガも惜しい。スレッガは強い剣を装備出来る上に基本的な攻撃力も高い物攻に特化したキャラなので最終までパーティーに居ても良い感じなのですが、デザイナーの悪意を感じる田舎のナルシスト的な中途半端にブサイクなデザインなんです。
ここまで仲間が揃い、旅の目的の一つフラウ姫の救出作戦を終え、一行はサタンガンダム討伐のためサタンガンダム城に乗り込んで行きます。
サタンガンダム城ではフラウ姫を監禁していたララァと戦い、連戦でサタンガンダムと戦って倒す事になりますが、RPGのお決まりといいますか、サタンガンダムを倒すと黒幕のブラックドラゴンが現れて3連戦に突入します。ただ、ブラックドラゴンはある程度ダメージを与えると逃走します。
一行は『今のはなんだ?』みたいになりながらも、とりあえずサタンガンダムを倒したんだし、ラクロアに戻って報告しようと帰還し始めると、今まで通ってきた町や村もラクロア城も崩壊しています。突然、超巨大なモビルスーツが現れて世界中の町や城までもが崩壊していました。この時のムービーはナウシカの巨神兵っぽい地味に怖い感じが出ていて結構良いです。この時、ラクロア城のレビル王は地下に逃げ込んで無事でしたが、近所の村に住む友人に会いに行っていた(復活した)フラウ姫の安否が未だ分からず心配だとのこと。そこで、王の近衛兵で武闘家のネモがフラウ姫を捜しに村まで行くことになったのですが、ガンダムたちにも同行してほしいと頼まれます。勿論、ガンダムは同行すると言いますが、ここでまたアルツキャノンがとち狂ってテンションが上がり、パーティーから外せなくなってしまいます。これが非常に厄介。この時点で仲間になるネモは後に最強のキャラに成長します。武闘家なので武器も装備も殆ど要らず、素手で強い。しかもレベルが上がるほどクリティカル率が上昇し、LVをMAXの50まで上げれば殆どの攻撃がクリティカルとなります。素手で通常ダメージが250を超えてくるので、ほぼ毎回クリティカルならコンスタントに500〜600近いダメージを叩き出せる超優秀な物攻キャラです。ただ、このゲームの場合、仲間は加入時点で総じてLV1なので、とにかくネモだけはムダが出てもいいので少人数で早くレベルを上げたい。そんな大事な時期にパーティーから意地でも抜けないキャノンの空気読めなさ。開発の人たちに嫌われ役を背負わされてるのかな、とかも感じてしまいます。
結局、隣町にいたフラウ姫は何事もなく無事で、ラクロア城の地下に戻って主人公達の戦略の指揮をとるような逞しい存在となり、その後、主人公達はフラウ姫の指示の下に動くようになります。
ここからの流れは定番です。
サタンガンダムという手下を倒されてしまった真の黒幕ブラックドラゴンは一気にスダ=ドアカワールドを征服しようと巨大MSサイコガンダムを起動して各町の破壊を始めたのでした。
フラウ姫の集めた情報によって、三種の神器を持ってすればサイコガンダムにも勝てるんじゃないかとの事で、ガンダム達は船を調達して三種の神器を集めるため近所を廻ります。
しかし、サイコガンダムも三種の神器は取らせまいといて、それぞれの神器がある祠に手下のゴーレムを配置して神器を守らせています。(なぜそれぞれの神器を速攻でぶっ壊すとか海の底に沈めるとかしなかったのかは『ゲームのストーリー上』だからなのでしょう)
それぞれのゴーレムを倒して神器を回収しても、三種の神器はいずれも錆び付いていて弱いです。そこで、近所の浮島に住む3人の修理屋仙人にそれぞれの神器を磨いてもらい、強くなった三種の神器を装備してサイコガンダムを倒します。しかし、まだそれでもブラックドラゴンには勝てないと言われ『勇者の証』という通行証のようなものを受け取り、それを持って『ムーンムーン』という異次元に行って、そこに住む仙人から攻撃力を2倍にする石板を貰い、ブラックドラゴンとの最終決戦に向かうという流れになります。
ここまで来て主人公の攻撃力が2倍にもなれば最後は圧勝、大して面白くもないですが、最終決戦の直前に少しだけ熱い演出があります。
最後のフロアでラスボスのブラックドラゴンに近づくと、ブラックドラゴンの側近4人がワサワサと寄ってきます。当然、ラスボス戦前の連戦になるんだろうなと思っていると、ラクロア城に置いてきた4人の控え連中がガンダム達の背後からやって来て、それぞれが側近4人の前に立ち「ここは俺たちが食い止める。お前は先に行け。」と言います。控えの連中はセイラをはじめザコばかりなので、ブラックドラゴンの側近とタイマン張ったら確実に死ぬメンバーです。それを分からせておいてのこの演出はアツイ。
結局、主人公のパーティーが難なくあっさりとブラックドラゴンを倒して他の控え組も無事に救出してエンディングとなるのですが、万が一ここで主人公組が負けたとしたら、その全滅感は当にトラウマ級なものになると思います。
まあ、そんなこんなでいろいろ粗いところもあるゲームではありますが、王道のRPGをサクッとやってみたいと思う人にはお薦めの一本だと思いました。
レトロRPGの王道だと思いました。