ずっとずっと大好きだよ
これは、私の実体験を元にしたフィクション作品です。
バラバラで、拙くて、幼稚な作品です。
いつ人がどうなるかは分からないことを大切な弟が教えてくれました。
──私には、弟がいました。同じ夏生まれで、誕生日も同じ。更には血液型も一緒の、喧嘩友達のような、姉御と舎弟のような、そんな関係の弟です──
珠羽ちゃんは7月生まれ。明るくて、元気いっぱいのやんちゃな女の子です。優しくて少し怖いお父さんとお母さん、おばあちゃんと一緒にくらしています
珠羽ちゃんが2歳の誕生日の日に、弟の裕翔くんが生まれました。血液型も誕生日も一緒で、生まれた時間も珠羽ちゃんと同じ時間帯です
珠羽ちゃんがその事実を知った時には「じゃあ、2年越しの双子みたいだね!」と、喜んでいました
裕翔くんが大きくなると珠羽ちゃんは姉弟喧嘩もするようになりました。本当にしょうもなくて、本当に些細なことの喧嘩です
お互いにパンチやキックをして痛い思いをして、それでも喧嘩をして一緒に怒られたりしたけど、美味しいご飯を食べて、ゆっくり眠ったら次の日には『ごめんなさい』をして、また一緒にあそぶ仲のいい姉弟です
珠羽ちゃんと裕翔くんが小学校に通い始めて、お互いに喧嘩する時も鉛筆を投げたりするようになった頃の話です
裕翔くんが交通事故にあいました
珠羽ちゃんはその日、裕翔くんよりも早く小学校から帰ってきて時間差で裕翔くんが帰ってくるのを家でおばあちゃんと待っていました。でも、裕翔くんは帰ってこなかったのです。珠羽ちゃんが心配になって『ちょっと見てくるね』と言って家を出ようとしたその時です。お父さんから電話がかかってきたのです
『珠羽か?なんか職場に珠羽か裕翔が事故にあったって連絡が来たんだ。お父さんはこれから搬送先の病院に行くから家でおばあちゃんと過ごしていてくれ。お母さんももう病院に向かってるから、今晩はおばあちゃんとご飯を食べててくれ』
そんな言葉を電話先のお父さんから聞きました。珠羽ちゃんはその時、なぜだか開放されたような感覚が湧きました。そして、おばあちゃんにこんなことを言ってしまったのです
「おばあちゃん、裕翔が事故にあったって。…交通事故だから、最悪の場合を考えていて」
その言葉におばあちゃんは不安になったのか珠羽ちゃんに『そんなこと言わないで!裕翔なら大丈夫!』そう、肩を掴みながら言ったのです
その時、珠羽ちゃんは自分がなんて酷いことを言ったのか、時間差で気付いたのです
そこからはあっという間でした。親戚のお爺さんがきて、珠羽ちゃんとおばあちゃんを搬送先の病院へと車で連れて行ってくれました。病院は隣の市にある大きな病院でした
そこで珠羽ちゃんはICUというところに裕翔くんが居ることを聞いて、おばあちゃんと2人で裕翔くんに会いにいきました
でも、そこには余りにも残酷で悲しい現実が待っていました
たくさんのチューブに繋がれて、点滴やお薬を打たれて、酸素マスクやらを付けている裕翔くんの姿でした。片目はぶつけたのか腫れ上がり、所々に切り傷の手当のあとも見えました。そして、隣に寄り添って泣いているお母さんと慰めるお父さん、声がけをしていた叔母さんがそこにはいました
珠羽ちゃんは裕翔くんのその姿をみると怖くなりました。今までもペットやひいおばあちゃんの死を見送ってきたはずなのに、目の前にいる裕翔くんに迫っている死にはとてつもない不安と恐怖が押し寄せていたのです
珠羽ちゃんは小さくて震える声で呼びかけました。「裕翔!裕翔!お姉ちゃんだよ!」でも、裕翔くんは、ただ天井を見るばかりでした。悲しくなって涙が溢れて珠羽ちゃんは泣き始めました。静かに、静かにポロポロと大粒の涙を零しました
すると、裕翔くんが左目から一滴の涙を零しました。それが余計に苦しくて、珠羽ちゃんは面会が終わるまで静かに泣くしか出来ませんでした
家に帰ってから寂しくて、小学6年生なのにおばあちゃんと2人で寝ることにしました。そうでもしないと悪い夢をみて、心が潰されてしまいそうだったからです
日付が変わる頃、お父さんとお母さんが帰ってきたのか、玄関が騒がしくなり、珠羽は目を覚ましました
そして、リビングへ行くとそこには目を閉じて、白い顔をした裕翔がいました
そこで珠羽ちゃんは全てを理解しました
「裕翔は、死んじゃったんだ」
その時、珠羽ちゃんは死んじゃったんだ。としか思えなくて、涙なんかは流れませんでした。だって6時間前までは元気に笑っていた弟が息をしないで、動かなくて、声を聞くことも出来なくなっているなんて、子供すぎた珠羽ちゃんには受け入れられませんでした
そこからはあっという間でした。裕翔くんのお葬式をして、お墓に埋めて、供養をしました
お母さんもお父さんもおばあちゃんも泣いていて、珠羽ちゃんは『私がしっかりしなくちゃ』という気持ちで涙を流しませんでした。実感が湧かなかったから、というのもあるのかもしれません
でも、全てが終わった時に理解しました。『あぁ、もう2度と会うことが出来なくなったんだ。もう2度と声を聞いたり、一緒にあそぶ事も出来なくなったんだ』そう理解した瞬間、珠羽ちゃんは泣きたくなりました。けれども、涙が流れることはありませんでした。いつの間にか、辛いという感情だけで、涙として外に出なくなってしまっていたのです
そして、珠羽ちゃんは1ヶ月ほど学校に行けなくなりました。朝になると頭やお腹が痛くなって、学校をお休みするのです
友達にも会えなくなって、1人でお部屋にこもって好きな本を読むようになりました。1日中お部屋にいるので、学校帰りの中学生や年下の子達の声が聞こえると、『学校に行かなくちゃな』と思うのです。だけども朝になるとやっぱり具合が悪くなって動けなくなるのです
そして、珠羽ちゃんが学校をお休みするようになって1ヶ月、お父さんに珠羽ちゃんはこう言われました
「珠羽、もしこのまま学校に行けないんだとしたら、それはもう、心の病気だよ。病院に行かなくちゃ」
その言葉を言われた時に珠羽ちゃんは『嫌だ』と思いました。『お父さんもお母さんもおばあちゃんも苦しんでるのに私まで苦しんだら家族に負担をかけちゃうんだ』そんな考えをしている珠羽ちゃんは次の日、頑張って小学校に行きました。学校のみんなは優しく迎えてくれて、裕翔の事もできるだけ話題に出さないように気をつけてくれました
そこから、珠羽ちゃんは頑張って勉強をして、中学校へと進学しました
そして、珠羽ちゃんは小学校の時と同じようにカウンセリングを受けながら学校に通いました
ある日、学校で定期的に開かれている『交通安全教室』を開くことになりました。先生からは『無理して受けなくていいんだよ』と言われたので、珠羽ちゃんは従姉妹と一緒に別室で過ごすことにしました
そんな生活が中学校生活の中で続いて、珠羽ちゃんはある時疲れてしまいました。人と合わせること、いつも笑顔で明るく振る舞うこと。それは、裕翔くんが死ぬまでは簡単にしていた事でした。でも、裕翔くんが死んだことで珠羽ちゃんは元気を装う為だけに必死に頑張って、笑いものになりながら、かつての自分のフリをしました
そして、悲しくて、苦しくて、自分を責めるようになりました。『あの時一緒に帰っていれば』『あの時の事故にあったのが私だったら』『私みたいな劣等生よりも裕翔みたいな優等生が生きていれば』そうやって自分から悲しみの海に沈んでいきました。そして、カウンセリングの先生にも嘘を吐くようになりました。心配はかけたくなかったし、自分が心の病気になっていると認めたくなかったからです
でも、そんな時に親友の2人が寄り添ってくれました。他愛ない話を笑いながらしてくれて、珠羽ちゃんの変化に気付いてくれる少ない人だったからです
そこから、珠羽ちゃんはまた出発しました。嫌いな勉強を頑張って高校生を目指したし、恋をして、失恋もしました。そんな、目まぐるしい日々である時気付いたのです。裕翔くんはどうして死んでしまったのかが。裕翔くんの死から4年経った中学3年生の時、ある言葉に出会ったから気付けたことでした
「神様は意地悪で、素敵な人から傍に置こうとします。だから、貴方の周りの人で素敵な人が死んだなら、神様が傍に起きたかったから」
誰かから言われた言葉でした。もしも、神様がいるとするなら、裕翔は神様の気まぐれや意地悪で向こうに行ってしまった。だから、気にしなくて良いんだよ。そんな気持ちになりました。それが、珠羽ちゃんを強くしました
苦しいことと辛いこと。たくさんたくさん乗り越えて、珠羽ちゃんはもう高校生です。高校生になってから、また怖い事も増えて、傷は癒えていません。でも、そんな苦しいことを乗り越えたからこそ、珠羽ちゃんはこうして元気に過ごしています
あの日、後悔して、苦しんでいた珠羽ちゃんはこうして頑張って普通を目指しています。例え、車が怖くても、友達となら怖くありません。大切な人の死を乗り越えて、珠羽ちゃんは1歩、また1歩とゆっくりだけど歩き続けています
──身近な人の死を迎えた貴方へ。苦しくても、頑張ればいつかは元気になれます。だから、一生懸命に生きて、がむしゃらになりながらでも生きることにしがみついて下さい。例え今は苦しくても、乗り越えられた時にはきっと大きく成長することができると思います──
この話を読んでくれて、ありがとうございます。
私自身、この作品を載せようかどうかとても迷いました。
でも、こうして形にして、苦しくても頑張って生きていけばきっと希望を見ることができることを伝えたかったのです。
嘘だと思われても構いません。でも、私が伝えたかったことは命の大切さと、希望を捨てて欲しくないということです。