ロマネスク建築【基本特徴】
ロマネスク建築。ゴシックに並び、中世建築といえば、この様式を思い浮かべる人も多いでしょう。また、主に西ではありますが、ロマネスク様式はヨーロッパ全土に見られる、ある程度統一された建築スタイルなので、正真正銘の「中世ヨーロッパ風建築」です。
「じゃあ、これから『中世ヨーロッパ風』じゃなくて『ロマネスク風』って言う!」と思ったそこの貴方!残念ながら、それでもひとえにロマネスク建築と言っても、当たり前ですがヨーロッパ各地の地域によって大分違います。
故に、今回は予定より大分…随分…かなり長くなりました。ロマネスクだけで、全部で四部です…当初と言っていた事が違うって?……ゴメンね?
ま、まあ…別に嫌なら全部読まなくて良いので…取り合えず投稿しておきます。何なら2~4はエクストラと言う事で。以下が部分別に見る内容です。
1.ロマネスク様式の基本特徴
2.ロマネスク宗教建築について
3.ロマネスク非宗教的建築について
4.地方別に見る、ロマネスク建築の特徴・違い
と言う訳で、まず第一部目、ロマネスク建築の基本特徴です。
さて、ロマネスク建築とはそもそも何でしょうか?名前に「ローマの子孫」という意味合いがある様に、ロマネスク建築にはローマ建築と似通った部分が確かに多いです。アーチ、半円筒天井等が特に連想させる特徴ですね。他にも、太めの柱や壁、装飾に凝ったアーケード等をイメージする人もいるでしょう。建築物の具体的な細かい特徴はこれから説明しますが、ロマネスク建築は主に10~13世紀半ばの建築物とされています。故にこの前に存在した、カロリング建築、そしてそれに続いたオトニアン建築等は、差別化の為に「プレ・ロマネスク」と呼ばれる事もあります。ロマネスク建築には、このカロリングやオトニアンから派生した物もあれば、その前のキリスト教初期教会や、ローマ建築の影響を直接受けている物もあるので、注意が必要です。そして共通するのが、必ずローカル要素もあります(第四部目でこの辺りの細かい説明をします)。
ロマネスク様式で最も有名なのは宗教建築です。宗教建築は前話で話したように、カロリング時代から多く作られていますが、ロマネスク教会はその数を更に上回ります。今日に至るまで、ロマネスク様式が沢山残っている理由の一つです。この様に、宗教建築が多く作られる様になり、その建築スタイルにも大きく反映された要因だとされているのは、修道院制度や巡礼のメジャー化、十字軍やその結果入手したとされる「聖遺物」の存在等です(これらの細かい説明はニ部目にします)。
また、ロマネスク様式は建築物は、砦、城、宮殿、家、城壁、橋等の、非宗教建築にも多く影響を与えます(これらの細かい説明は三部目にします)。この頃には封建制も広く導入されていました。同時に全体的に非常に不安定な時代だった為に、非宗教建築は宗教建築と比べると、あまり残っていません。基本的に、これらは特定の人物の力を示し、維持する為に必要でした。多くのロマネスク建築が建てられた際、宗教的思想のみでは無く、政治的思惑が絡んでいたのです。
前書きが長くなりましたが、次が基本特徴です。
【壁、バットレス(控え壁)と開口部】
基本石造りかレンガです。この石の種類、レンガもまた、地域によっ違ってきます。ロマネスクの壁は非常に太く、重く、窓が小さい事が特徴です。理由としては、使用する石やレンガのサイズが比較的小さく、これのみを使って天井を支えられる壁を作るのが困難だったからです。また、開口部は壁を弱くする要素の一つであり、構造の完全性を損なうリスクを減らす為にに、窓などの開口部は少なく、小さいのです。また、壁が太いからこそ、ロマネスク建築はゴシック建築と比べ、バットレスの使用が少ないです。
小さな扉や窓なら、まぐさ石を用いて作る事もありましたが、基本的に大きな開口部はアーチを使って作ります。故に、ロマネスク建築は全体的に薄暗い傾向があります。
【アーチとアーケード】
ローマ建築同様、ロマネスク建築のアーチは殆ど半円型です。しかし、半円型のアーチは実の所、構造的には非効率的でした。故に、この半円型のアーチがおこす外向きの推力の対策としてサポートの壁を作るのですが、これもまた壁が太くなる原因の一つでした。
また、一つのアーチの中に、二つの小さいアーチが収められている物もありがちです(以下スケッチ)。
アーケードはアーチが並んだ物です。基本的に教会内における身廊と側廊を分ける役割を果たし、偶に宮殿の大ホールにも見かけます。また、修道院や宮殿等で見かける、クロイスター等にも頻繁に見られます。アーケードは一段の物も、二段以上の物も、アーチは柱で支えられる事もあれば、ポン・デュ・ガールみたいな橋脚を用いて作られる場合もあります。また、橋脚と柱の両方を交互に使う場合もあります。
小規模な物は装飾品である可能性が高いですが、大体の場合、アーケードは建物の構造上、欠かせない要素です。
また、少数ですが、後期ロマネスク建築には後のゴシック建築を発展させた要素とされる、尖頭アーチやリブボールト、そしてバラ窓を使用したロマネスク建築も、幾つか確認されています(ダラム大聖堂等)。
【柱、柱頭】
装飾にも支えにも使える柱。ローマで使われていた柱を、使いまわす事もありました。ロマネスク建築の柱は基本太く、ドラム柱と呼ばれる事があります。以下の図の様に、ドラム型の石を積み立てながら作る方法です。また、更に大きい柱を作る際は、中心部を空洞にし、最後に割栗石を詰める、というやり方もあります。柱の外側にもまた、装飾となる柄が刻まれる事があります(ダラム大聖堂等を参考に)。
柱頭もまた、様々な姿かたちで作られます。それでいて中々「地元感」が出る部分です(貴方のファンタジー建築における柱頭も、オリジナルデザインにするのが良いかもしれません)。
ギリシャ・ローマ建築で見られるコリント式から派生したデザインは、イタリア、時にはフランスで好まれました。
強いて言うなら、以下の形が「ロマネスクの柱頭」のベースです。簡略化された、コリント式みたいなものです。
こちらは装飾がある物の例です。
また、聖書の一部を表すもの、怪物や化け物を削った物、もしくは地元の聖者を表した物等と、バリエーションは非常に豊かです。グーグル画像検索で、「French Romanesque capitals」か「Spanish Romanesque capitals」で検索すると、面白いデザインが沢山見れます。
【天井 (ボールトとドーム)】
大半の建築物の天井はトラスを使った木造でした。「San Miniato al Monte」の身廊等みたいに、剥き出しの事もありましたが、火事などで消失する事が多かった為、ボールト(下に説明あり)の裏に隠れる事が多くなったとされています。また、身廊でボールトを使わな無かった場合は木の板で隠し、この板の上に絵を描く場合もありました。
また、ボールトは以下の二つが最もメジャーでした)。
半円アーチボールト(Barrel vault)
ある意味ロマネスクで最初に思いつく「天井」です。構造上、両サイドは基本的に太い壁、そして窓は少なく小さい、がセットの天井です。主に身廊で見られます。
半円アーチ交差ボールト/グロイン・ボールト(Groin vault)
シュパイアー大聖堂等が有名です(初だとも言われています)。主に身廊で見られます(リブ・ボールトが出来てからは、建築物内でも小規模にしか使われなくなりました)。半円アーチボールトを90度に交差して(クロスして)出来た形です。
尖頭アーチとリブ・ボールト(ribbed vault)
主にゴシック建築と連想される要素ですが、ロマネスク終盤には発展が始まっていました。代表例はダラム大聖堂です。リブと呼ばれる骨組みを作り、石のパネルで間を埋めるやり方であり、これらは主に尖頭アーチ型に作られました。リブ・ボールトは上記の二つと比べ、構造的に効率的でした。先ず、この「石のパネル」を用いたやり方は重さを大分軽減し、外側への推力を減らすのと、骨組みが荷重を特定の場所に、上手く誘導出来たからです。故にこれ以降、天井は高くなり、窓も大きくなり、壁が細くなります。ゴシック建築の発展が始まったのです。
ドーム
クロッシングの部分(十字形教会堂の4つの腕が交差する部分)に八角形ベースのドームがある場合があります。クロッシングの部分には塔かドーム、もしくは塔付きのドームが建てられる事が多いです。
以上がロマネスク様式の基本特徴です!お疲れ様でした、しかしまだ始まったばかりです。次回はロマネスク様式の宗教建築要素を中心としたものとなる予定です。もう少し、実在の参考建築物等も出すつもりなので、お楽しみに!
全ての写真はジャガイモが撮った物です。