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中世初期の建築

次は貴方の「町」のランドマーク要素に使えるかもしれない、中世初期(ここでは8世紀から9世紀まで)の建築です。


ただ、本当はローマでキリスト教の教会が作られる許可の降りた313年からの建築史を書きたかったのですが、ちょっと考えがまとまらなかったのと、なるべく北西部ヨーロッパにフォーカウスしたかったので、端折らせて頂きます。しかし、本来ならば本作の建築史に、少なからず影響する分野でした。上手く取り込む事の出来なかった、私の力不足によるものです、すみません…


が、前話でチラッと書いた、「大半の人は町で暮らさなかった」事と、「ローマ帝国より文明がちょっと退化している?」理由も、少し書きます。


今回は、あの有名なカール大帝が中世建築において、どの様に影響したのかを見ていきます。次回の「ロマネスク建築」の導入になる部分ですので、是非読んで下さい!


また、以下が本作で語るカロリング建築の例一覧です。このエッセイを読む前に、以下の単語をグーグル画像で検索し、新規タブで開けながら比べる方が、解り易いと思います!


Palatine Chapel, Aachen

Abbey Gatehouse, Lorsch

Oratorio of Germigny-des-pres

Saint John Abbey, Müstair

westwork of Corvey Abbey

Plan of Saint Gall

中世建築に入る前に、少し知るべき情報があります。


キリスト教の時代が始まってわずか一世紀以内、四世紀後期からローマ人は所謂バーべリアン(蛮族)の被害に、本格的に合うようになります。しかし、410年にはアラリック一世率いる西ゴート族が、都市ローマを攻め落とし(410年のローマ略奪)、445年にはガイセリック率いるヴァンダル族に攻め落とされ(445年のローマ略奪)、そして476年に遂にオドアケルによって西ローマ皇帝ロムルス・アウグストゥルスは廃位させられます。

実質、西ローマ帝国の終わりです。


しかしその後、東ローマ帝国…ビザンティン帝国はその後も続き、イスラム文化同様に、建築という面でも大きく文化を発展させます(詳細は割愛させて頂きます)。


一方、かつてローマ帝国の一部であった北西部ヨーロッパは、寧ろ一時的に衰退を経験したと言えます。これらの土地に、件の"蛮族"達が住む様になり、彼等はやがてキリスト教に改宗します。しかし、続いた戦の混沌もあり、当初は読み書き等の必然スキルがかなり欠如していたせいか、ローマ帝国の様な都市を拠点とした、中央政府機関を再現する事は叶いませんでした。


ローマ帝国の貨幣経済も、地元の豪族が自身の土地内に住む人々を、奉公と引き換えに守り、統治する社会システムへと移ります。ざっくり言うなら、後の封建制の土台です(諸説アリ)。これが前話で「大半の人は町で暮らさなかった」という理由の一つであります。この時、多くの地元に基づいたヴァナキュラー建築があった事が予測されますが、不安定な時代だったのもあり、5世紀から9世紀にかけての建築物はほとんど残っていません。


さて、ここでフランク王にしてローマ皇帝、カール大帝の登場です!知っている人もそうでない人も、神聖ローマ帝国とは切っても切れない人物です。カール君の話はそれだけで長くなりますが、今回はなるべく建築と関係ある部分だけを書きます。取り合えず、以下の三つを抑えて下さい:


1.カール君は西と中央ヨーロッパの大半を統一した人物であり、カロリング帝国の創立者である

2.800年に教皇レオ3世によって、「ローマ皇帝」として戴冠される

3.カール君本人はフランク人であり、ローマ人からすればバーべリアン(蛮族)の子孫である


故にこのカール君は、かつてのローマ帝国の様な力、政治機関と威光を求めました。カロリング・ルネサンスとも呼ばれる動きですが、その中には建築や芸術も含まれていました。事実、この目的を達する手段の一つとして、カールは征服した土地に教会や修道院を建て、霊的指導の他に、古代ローマの学問やラテン語を研究させていました。また、教会内に限っては、まだローマ帝国と類似した政治システムが、少なからず残っていたのも理由の一つです。


長くなりましたが本題です。「ローマ帝国」の再現を目的としたこの動きに置いて、建築は例外ではありませんでした。そして「ローマ帝国」建築を再現しようとしたものの、叶わなかったこの建築スタイルを、「カロリング建築」と呼びます。


このカロリング建築は、主にローマ建築を元にしたものの、同時に初期キリスト教建築とビザンチン帝国建築、時にはイスラム建築にも、かなり影響されました。以下が主に採用した特徴です:


1.円型アーチの使用

2.半円筒天井や交差ボールト(二つの半円筒を直交させ、交差して内側に入った筒を取り除いたもの)の使用()

3.基本、バシリカを使う(Wikipedia抜擢「長方形の建物で、短い辺の入り口を入ると長い身廊があり、左右の壁側には側廊があり、一番奥は何かの儀式があればそれに使われる」)

4.モザイクタイルや大理石の使用(参考「oratorio of germigny-des-pres mosaics」)

5.左右対称


また、カロリング建築が新たに加えたとされる特徴は:


1.西構え(westwork)の導入(教会における、基本西向きのモニュメンタルな入り口。二つの塔を繋げた数階建ての物が多い。「westwork of corvey abbey」の画像で見れます)

2.教会付属の、カンパニーレや鐘塔の一般化


等です。


さて、このカロリング建築は、8世紀半ばから9世紀半ば辺りまで約400以上の修道院と約100の王宮という形で作られましたが、画像を見れば解るように見た目的にかなり「重い」です。どうしても先人のローマと比べると、劣化感が拭えません。中には元々ローマ建築で使われていた石を持ってきて(盗ってきて)作られた物もありますが、これでも「再現」は今一つ叶いませんでした。


例えば、カール大帝はローマの凱旋門に強くインスパイヤされたともされていますが、「コンスタンティヌスの凱旋門」と「Abbey Gatehouse, Lorsch」を比べて見て下さい。前者がローマ、後者がカロリングです。…ね?


この理由の一つとしては、単純にローマ人の建築技術が今一つ理解されていなかった事(そもそも石造建築自体がまだあまり馴染みなかった)、またはコンクリートが使えなかった事が大きいです。「ポッツォラナ」という、コンクリートの製作に必要な材料が、入手困難だったからです。


ですが、中世建築において、カール大帝が残したものも大きかったのです。まず、この動きは各地で石造りのモニュメンタル建築技術を導入、もしくは活性化するのに一役買っています。これは後の、素晴らしい石造建築が作られる様になる「キッカケ」だとすら言えます。

また、「Plan of Saint Gall」で見る様に、バンバン建てられていただけあって、この時代から中世の修道院建築の定義が作られつつあったのです。


カロリング建築は、後の中世建築と比べ、確かにやや地味です。このスタイルを、貴方のファンタジー世界に採用したくない、と考えても、まあ解ります。

しかし、これからどんどん凄くなるのです!カロリング建築は、北西中世ヨーロッパ独特の進化を遂げる事となるのです。建築スタイルの発展オリジンや、その裏にあった考えを知って、損はありません。


何なら貴方の世界では、ここから別の進化を遂げる、もしくは同じ状況でありながら、根本的に違うベースが出来た、何て事をしても良いのです(例:貴方のファンタジー世界版カール大帝は、「否、木造建築こそ至高…!木のみを使ってローマを再現するのだ!」みたいなトンデモ展開にしたって、アリだと思います)。オリジナル「中世建築」の発展なんて、面白いと思いませんか?


さて、今回はここでは終わりです。次回はロマネスク建築について書きます。お楽しみに!

前話にしれっと、入れ忘れていた「市場が開かれる中心広場」についてちょこっと加えました。結構大事なのにすっかり忘れていた…!失念…!中心広場が無いなら、どこで公開処刑を行えば良いのだ…!


それと、いずれ本作のエッセイに、もう少し解り易くする為に画像を入れたいと思っていますが、それはまず一回完結してからの予定です。それまでは、取り合えず冒頭に参考画像として使える建築名を書く感じでやります!

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