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プロローグ2



 現在、死神の職場を案内されている。


 途中、廊下で


 「おっす、室長〜、そいつ新人すか?」

 「レイカーベリーに余命宣告されたの? 羨ましいな!」

 「室長〜!今日の配給、ちょっと足りないんですけどー!」

 「フィアノのヤツまだ寝てるんすよー、室長からも言ってやってくださいっ!」


 これらの野次?を「後でな」と、適当に捌きながらオレを抱えて歩く少年。

 周りから室長と呼ばれている所を見るに、この少年はかなり偉い立場だったようだ。ついでに親しまれていることもわかるが。

 ちなみに、29歳の男性を抱える少年とかシュール…と思った人もいるだろうが、どうやら今のオレは魂だけの状態のようで。

 端的に言うと、白い泡がフワフワ浮いてるように見えるらしい。


 自分としては感覚がしっかりし過ぎていて気づかなかったし、このままでも問題ない気がしないでもないが、少年__いや、『室長』的には「このままだと危ない」との事で、現在、魂が剥き出しの状態を何とかするべく、ある場所に行っている。


 「ついたな」


 そしてついた場所には、ひと目で厳重とわかるセキュリティの配置された重厚な扉と、『関係者以外立入禁止』の文字。


 「大丈夫なんスか、ここ?」

 「重要な施設ではあるが、危険な施設では無い。そこの……」

 「あっ、ハイ!……何用でしょうか」


 不安を零すと安心させるように端的な言葉をくれる室長。適当に警備の死神に話しかけると、何かボソボソと会話した後、警備の死神を案内にして動き出す。


 「それにしても、新人ですか、レイカーベリーの次ですから……何年振りくらいですかね?」

 「大体二十年振りくらいだな。……ああ、ここまででいい」

 「二十年振りか〜、こうも連続で新人が来ると働き甲斐がある職場みたいですね〜。……あ、了解っす、お気をつけて〜」

 (二十年の間があって『連続』と……? 人間だとベテランでもおかしくない年月をかけても新人なのか……)


 しばらく歩いていたが、警備の死神が呟いた言葉に律儀に反応した室長との会話に少しだけ驚く。

 同時にレイカーベリーさんに憐れみを感じる。そんな年月頑張っても新人(オレ)とほぼ同期扱いとは……。


 そんなこんなしていると、扉の先に辿り着いた。

 あの重厚な扉はフェイクだったのか、今まで通った道は迷路のような構造ではあったが扉は少なく、歩いている内にあの重厚な扉の裏側についていた。


 室長曰く、扉でわかりやすく『この先に大事なものがある』と思わせて、その実扉は壁でしかなく、迷路が正規ルートらしい。そして迷路は案内役が居なければ基本的に抜けられないレベルのもので、この先の施設を守っているとか。

 「扉が壊されたら直通な訳だし意味ないのでは?」と聞いてみたが、死神の職場は基本的に『オブジェクトの破壊禁止』というルールがあるらしく、これは法律のような個人の意思で破れるものではなく、世界の理のような強制力があるルールな為安全なのだとか。


 ゲームみたいだな、迷路の抜け道とか破壊できない壁とか、なんて思いつつも、目的の施設に辿り着く。


 室長はオレを抱え直すと、ボタンを押してインターホン?を鳴らした。


 ボーン……、という独特な音が鳴り、奥から「はーい」と声がする。

 音はともかく、やり取りは普通だ。


 「いらっしゃい、室長。………そちらは?」

 「新しい新人だ。前に議題に上がったやつだ。……何時までも魂のままではな」

 「ああ……人間ってそんな感じなのね。いいわ、来て」

 「たすかる」


 出てきたのは、看護師らしき格好をした少女だった。

 室長と二人でこちらを見て納得の感情を浮かべた後、案内するように奥に入っていく。


 「あの、どこに行ってるんスか?」

 「簡単に言えば保管所だ。ここで、君の肉体を見繕う」

 「それはどういう………」


 「はい、ついたわよ〜。好きなのを選んでね。彼らもこの時をきっと待っていた筈よ」


 その言葉に振り向くと、そこには










 ___眠るように身を横たえる、数百を超える死神の姿があった。





 「なに…これ……」


 「死神は死んでも肉体が劣化しない。物理的な法則が無効化されるのもあって、火葬だろうが土葬だろうが、その身体は滅びない。死してなお、意思なきままに、滅びることなくそこにある彼ら…………そんな彼らが目覚めないと知ってはいるが」

 「諦めきれなくてね。子供たちの要望もあって、死んだ死神の肉体を保管しているの」


 つまり、ここは、死神達にとっての墓地……というか…なんというか、そんな場所なのだろうか。

 でも、なんで死体なんて見せる?オレは確かに死んでいるが、これから死神になるのであって保管される訳では無いはずだ。


 「死神は余程の事がなければ寿命で死ぬことはない………この死神達は、つまりそういう事だ」

 「それでも、保管していたのはこのような時のためでもある。死体に想いを募らせるだけでは意味がない。……その死に、意味を与えなければ彼らが報われない」


 寿命では死なない。つまり外的要因で死んだということか?

 それで、保管するにも死体を思うだけでは非生産的すぎるから有効活用すると。

 …………正気なのか?


 いや、待て。ここには、オレの肉体を探しに来た筈だ。


 まさか。


 「彼らが疲れてしまってもう動けないなら、最後に『その命を有効活用する』という形で報いたのだ。………この千年間、その約束が果たされる事は無かったが……」

 「やっと彼らがまた活躍する所を見れるのね!」

 「つまり、オレの身体って……」

 「先に言っただろう? 好きなのを選べ。死体といえど人間と違い動作に異常は無いはずだ」

 「複数使っても問題ないわよ〜?肉体によって習得しているスキルも違うから有効活用してね?」


 ………まじか。


 まじか。


 死神稼業………死んでも休みが貰えないのか……。



 「オレ、早まったかも知んないっスね……」

 「「?」」


 そんなキョトンとした顔をするな。ブラック共め。

 死んだらその人に思いを募らせて当人の中で折り合いをつけていくものだろ。

 何を思ったら、死後も有効活用するから安心して眠れ!みたいな思考が出るんだ………。


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