表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

プロローグ1

そういや主人公最強モノは書いてなかったなと思い、試験的に投稿。



 「キミ、3日後に死ぬけど」


 そう言われて


 「あ、そうすか」


 としか答えられなかった訳だが………オレはそれを後悔している。



 「誰か、救急………絡を……!」

 「な……交……事故……?」

 「え……………グロ……」


 どこか遠くの世界の様に聞こえる、ところどころ繋がらない言葉。

 上から冷静な男性の声、困惑した女性の声、吐き気を堪える学生の声だ。

 何を見たのかというと、やはりオレを見たのだろう。


 交通事故……まぁ、日常でもあり得る事故だろう。

 日本では年間何件と交通事故が起きている、とかレポートされるくらいありふれた事件だ。


 ___問題は、被害者がこの事故が起きることを前もって知っていた事。


 「ぁ………れ、……」


 「あれ、やばくね?」

 「いや、俺マジこういうの無理なんだって!」

 「ぐちゃぐちゃじゃん……」

 「救急車、まだなのか!?」


 ちょっとだけ聴覚が戻ってきた。

 それと同時に、身体が軽く、意識が薄くなっていく。

 ああ、死ぬんだな。と、少し残念に思う気持ちと、それ以上の自分への怒りがある。


 あのとき、あの死神を名乗るヤツの言葉をもっと重く受け止めていれば。

 ………もしかしたら回避できたのかもしれない。


 だが、事ここに至っては意味のない仮定だ。

 俺は忠告を無視して、有り得ないだろうと高を括って、そんで無様に死んだんだ。


 まぁ、これといって面白みのない生活ではあったが、死にたいと思えるほどでは無かった。

 そこそこ幸せな人生。それももう終わり。



 ___ああ、せめて来世でもあれば希望も持てるんだが、そんな都合のいい事は無いよなぁ……。











 5月末、29歳男性、死亡。

 死亡者、渡貫(わたぬき)ユウリ。

 死因、交通事故。

 担当死神、レイカーベリー。





 「という訳でキミは死んだわけなんだが」

 「はぁ……」


 死んだと思ったんだが、いつの間にか墓地の様な所でオレは目覚めた。

 目の前には、黒いマントに黒い軍服を纏ったいかにも中二心を擽る服装の少年がいる…………少年、だよな?

 ちょっと中性的で幼い感じなので性別はわからないが、多分少年だ。口調で判断してる感は否めないが。


 「………聞いてるか?」

 「え、あぁ……すいません」

 「はぁ……まぁ、結論から言うと君には『死神』になってもらいたい」

 「死神……っスか」


 ああ、と肯定する目の前の少年。

 死神というと、アレだろうか。死んだ人間の魂を冥界に持っていくとかいう。

 良いイメージはあんまり無いが。


 「どうも最近、死ぬ筈の無かった人間が死んだり、死ぬ筈だった人間が生きたり……色々とぐちゃぐちゃでな。

 人間の死期……運命とも言うべき流れが乱れているんだ」

 「それと、オレになんの関係があんの……っと、関係があるんスか?」

 「いちいち変わった運命の流れに合わせて死期の特定をするのも面倒でな。そもそも人手があまり無いのに仕事がこれ以上増えるのは望むものではない」

 「はぁ」


 意外と現実的な悩みだな、というのが正直な感想。

 確かに『当初の予定と違う』というだけで今後の仕事に与える打撃は大きいだろう。オレ無職ニートだからそこら辺想像でしかないが。

 何にせよ、死神様もあの世では社会を回す歯車の一つでしかないらしい。


 「そこで、我々は考えた。こうも運命が乱れているのは最近の人間達の何かに原因があるのでは無いか、と」

 「ワンチャン死神側がミスってる可能性とかないんスか?」

 「無いな。これでも千年以上は変わらずに業務を回してきた。今更問題が起こるというのもおかしいだろ?」

 「……………それで、なんでオレを死神に?」


 逆に千年もやってれば、どっかにガタがくるもんじゃねの……?という言葉は喉元で抑えた。

 とりあえず今は話を聞こう。


 「ああ、先の言葉で大体わかったと思うが、つまり『最近の人間側の変化』が問題な可能性があるわけで、それなら『最近の人間視点で』働ける人材がいれば問題がわかるのではないか、という意見が出てな」

 「…………」

 「それで、試験的に人間の魂を死神にしてみよう、という事になった。できるだけ近代の魂が望ましい。それも、若くて勤労意欲のある人間だと尚良し。実用化されれば人間側から死神を登用する事も出来るようになるし、人手も増えるという意味では一石二鳥という訳だ」


 オレが勤労意欲のある人間に見えたのか、この死神さんは………小学校からずっと引き籠もってるエリートヒッキーなのに。


 「まぁ、元よりあまり期待はしていない。合わなければ本来の予定通り君の魂をあの世へ送るだけだ。…………やるかね?」

 「ちなみにあの世に行けば何があるんスか?」

 「なにもないぞ?…………ほんっとぉに、なにもないぞ」


 これは、あの世は無しだな。

 真顔で言う彼の言葉に籠められた意味に気づいてそう思った。

 ………やりゃいいんでしょ??


 「じゃ、お願いしますッス」

 「つまり?」

 「死神、やります」

 「……おぉ、歓迎しよう!!」


 明確に言葉にした途端に隠し切れない歓喜の感情を浮かべて目の前の少年は微笑んだ。

 本人は隠してるようだが、その喜びようを見ると、多少のだるさとか気にならなくなるから子供の笑顔は本当に強いと思う。


 ………っと、先に確認して置かなければならない事があったんだった。


 「ちなみに、業務内容ってどんなもんなんスかね?」

 「ん?大した事ではないぞ。余命が3日以内になった人間に余命宣告をして、然る後死亡した人間の魂を刈り取るだけだ」

 「え」




 ……………え??



 「何か、おかしなことを言ったか?」

 「え、えーとぉ、余命、宣告しちゃうんスか………?」

 「当たり前だろう?」

 「………………………」



 これ、運命が乱れている原因って………。


 気づいてはいけない事に気づいた気がしたのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ