5. 魔女
二つの巨大な左手が、出鱈目な向きで悪魔を包む。そして手のひらが合わさった瞬間、そこには何も無かったようにそれらは消え去っていた。
『...想像以上ですね』
そう言って***を睨む女、手には俺のとは別の人形を持っていた。
『おかしいな、『防御』使ってたはずなの...』
『に』
その言葉を言い終える前に、***は首から血をまき散らす。見ると女は、首に針を刺された人形を持っていた。女の片手はいつの間にか爪が全て剥がれている。
『おおよそ『契約』で威力を増したとかかな? 使い勝手いいね、コレ』
瞬きをした瞬間、傷はなくなっていた。
『じゃ、次はこっちの番』
見ると手には可愛らしい人形を持っていた。
それは既に針が腹部に刺さっている。
『あぁ、なんてこと』
女は血反吐を吐き、腹をさすった手には血がべっとりとついていた。
そして女はその場から消える。
去り際の彼女の顔は、どこか悲しそうな、なにか結末が分かったような顔をしていた。
俺を拘束していた力も消え、空中から放り出される形でそれから開放される。
『飛んだね。たぶん自分の要らない臓器を犠牲にして、ここから離れたとこに転移したんだと思う』
『...いやぁ〜危なかった。あのまま悪魔が野放しになってたら俺ヤバかったかも』
『一応あの別嬪さんには呪いを残しておいたよ。消えることない呪い...『呪詛』ってやつだね。まあ意味ないだろうけど』
そう陽気に言い放つ。さっきまでの攻防が全て嘘のように、顔の傷や衣服の損傷などが綺麗サッパリ消えてなくなっている。俺は幻でも見てたのだろうか。
『...あの女、素直にくたばると思うか?』
***は少し笑みを浮かべる。
『ああいうとてつもなく綺麗な人はね、自分の気に入らない人間を潰すためならなんだってするんだよ』
『だから必ずまた来るよ。彼女かそうでないか...どっちにしろ、『契約』と名につく何かとはまた会うだろうね』
『これは力でも何でもない俺の直感。でも力以上にハッキリわかる』
だから、
たぶん決まってることなんだと思う。
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酷い夢だ、思い出したくもないくらい。
夢から覚めた原因、ドアのノック音に感謝をしつつ扉を開ける。
「監査官、至急渡したいものが...」
そう言って監査局の局員が小包を手渡す。
「なんでも『知識』がこれを至急渡してほしいとのことで...。中に入ってるのは手紙だと思うんですが...」
「ありがとう、戻ってくれ」
そして局員を持ち場に返した後、俺は部屋でその中身を確認する。それは先程の局員が言った通りの手紙だった。その内容を確認する、一字一句間違いがないように丁寧に確認する。
これは...間違いじゃないんだよな?
そして俺は駆けだす、向かうのは当然あの場所。頭の中では焦りと不気味さが織り交じり、混沌とした状態になっていた。
さっきの夢といい、どうも今日はツイてないみたいだ。曇天模様だった空は、次第に雨雲へと変わる。
今日は最悪の日になりそうだ。
大元をコピペするだけだと思ってたけど結構手間かかって悲しい。