表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/21

3 武器は使い方次第

 大きな交差点で、三十代の男性が背中に大きな切り傷を負い、倒れている。その横には黒髪ロングヘアーの女性。禍々しい雰囲気を放つ悪夢ん。通行人や車に乗っていた人達も恐怖でパニックになっている。

 パニックの数分前。三十代の男性と黒髪ロングヘアーの女性が交差点前で話をしている。


「どうして……。あの女は居なくなったじゃない……。あの女さえ居なければ私と結婚してくれるって言ってたじゃない!」


 周りの目など気にせず、女がヒステリックになっている。


「辞めろよ……。そんな大きな声で。……もしかして、妻を殺したのもキミが……?」


「違うわ! 私は何もしてない! でも、確かに消えて欲しいとは思ってたわ。天罰が下ったのよ!」


「天罰だなんて、妻は何もしてないだろ……。もうキミとは無理だ。別れてくれ」


「ヤダ! 待って! 貴方が好きなの! ヤダ……行かないで……!」


 交差点を歩き出す男性を追いかける女性。突如、黒いモヤが男性を包み、カマキリ型の悪夢んが、男性を襲う。


「キャ────!」



 駆けつけた赤井達。


「皆さん、この場から離れてください!」


 赤井が声を張り上げ叫ぶ。「誰?」「何あの全身タイツ……」と囁く声が聞こえる。


「俺達はSOGIESC(ソジエスク)だ」


 ニカッと笑う赤井。青戸も笑顔を作るがぎこちない。悪夢んが黒髪ロングヘアーの女性に襲い掛かる。既の所で赤井が大剣で庇う。


「今度は、そう簡単にやられねーぜ!」


 大剣を払い、悪夢んを後退させる。そのまま赤井は悪夢んに迫り、女性達と距離を取る。

 赤井が悪夢んと戦っている間に、青戸が男性の元へ駆けつける。


「大丈夫ですか? 今、ぼくが……。和泥合水」


 青戸は男性の傷口に向かい、大きなシャボン玉を放つ。出血は止まったが、赤井の時のように傷は消えずに残ったままで、男性も苦しそうにしている。


「ダメだ……傷が深過ぎる……。ぼくの力じゃ治しきれない……。病院に連れて行かないと……」


「こっちの方もどうにかせんとマズイぞ、祐よ」


 アライは女性を見ている。


「私のせいだ私のせいだ私のせいだ……」


 女性は地べたに座り頭を抱え、足元から黒いモヤが湧き出て、カマキリ型の悪夢んに流れて行っている。黒いモヤが、悪夢んに更なる力を与えているようで、悪夢んの足先にも鋭利な鎌が生えた。


「早く止めんと、どんどん悪夢んが凶悪になるぞ」


「でも、どうすれば……」


 青戸は、女性の事も心配だが、男性からも目を離す事が出来ず、右往左往している。その時、「ぐあぁぁっ」と赤井が唸り声を上げたかと思うと、青戸の目の前まで飛ばされてしまう。手も足も鎌が生え、黒いモヤを浴びて強力になった悪夢んに、赤井がやられてしまう。


「赤井さん!」


 青戸が赤井の元へ駆け寄る。

 悪夢んが放つ凶悪な雰囲気に負けず、青戸は両手を広げ叫ぶ。


「今度は……ぼくが赤井さんを守ります!」


「祐……逃げろ!」


 赤井が声を絞り出す。青戸は赤井の方を向き、ぎこちない笑顔を向ける。じわじわと距離を詰める悪夢ん。青戸は、その時を待った。悪夢んが鎌を振り上げ、青戸に襲い掛かろうとした瞬間。


「水滴石穿!!」


 至近距離から無数のシャボン玉を繰り出す。悪夢んの腹部に集中的に命中し、そのまま倒れる悪夢ん。

 青戸の作戦が功を奏した。シャボン玉の性質上、相手との距離がある場合、分散してしまい致命的なダメージを負わせる事ができないと判断した青戸は、悪夢んとの距離が縮まるのを待ち、失敗すれば青戸が致命傷を負うリスクもある中、勇気を持って行動し成功したのだ。ほっと息をついた青戸だったが、気が付いた時には腹部に激痛が走る。悪夢んが立ち上がり、鋭い鎌で青戸の腹部を切り付けていた。力無く倒れ込む青戸。


「祐──────!!!」


 赤井は喉が潰れるくらい叫ぶ。



(俺は、またあの時みたいに誰も守れないのか……。大切な人を、俺の目の前で失ってしまうのか……)



 赤井の頭の中に、辛い過去がフラッシュバックする。


(俺は、何の為にSOGIESC(ソジエスク)になったんだ……。大切な人を、もう失いたくない……。あの悪夢んをぶっ倒すって決めたんだろ……。させるかよ……! 祐は、俺が守る!!)


 赤井は、力を振り絞り立ち上がる。全身が熱気に包まれる。足に力を込め地面を蹴り、高くジャンプする。大剣から火の粉が迸る。


「風林火山!!!!!」


 燃え盛る大剣を振りかぶり、カマキリ型の悪夢んを両断する。刹那、塵に消える悪夢ん。



「祐、祐!」


 赤井が青戸を抱き抱える。


「……やっぱり……赤井さんは凄いです……。あの悪夢んを一発で倒すんですから」


 傷を負い、辛いはずの青戸だが、赤井に対して尊敬の念を込めて微笑む。


「くそっ……。良い顔で笑いやがって……」


 赤井は、青戸が傷を負ったが無事な事を確信し、笑いながら泣いていた。




 その後、男性も一命を取り留め、不倫相手の女性とは別々の人生を歩んだ。

 女性は、心療内科へ通い、精神も徐々に安定し快方に向かっている。

 SOGIESC(ソジエスク)は今日も街を駆け巡る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ