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暗闇の中で。(2)

「ねぇ、ねぇ、ちょっとぉぉ、寒いんだけどぉ。

 いい加減に起きてよぉ」


聞き覚えのない声が、頭の中に響く。


身体中がだるい。

何か生暖かい物が胸にあたっているが、確認する気がおきない。

完全に血圧が低い状態で目が覚めた状態で、しんどい。


何かが頬を突いてくる。


『うざい...もう少し時間をくれ...』


心の中で突いてくる何かに答える。


「きみさぁ。ホントは起きてるよねぇ?

 もう意識あるよねぇ?」


はっきりと女の声が聞こえ、閉じていた目をぱっと開ける。


目を開いたのはいいけど、真っ暗で何も見えない。

誰かがすぐ近くにいる。

その気配だけはしっかりと感じる。

だけど誰かはわからない。


「やっと起きたぁ。

 定着までに結構時間がかかっちゃったなぁ」


暗闇の中、女の声が聞こえる。


「私の言葉、ちゃんと通じてるぅ?」


姿の見えない女の声に恐怖して声がでない。


「通じてるはずなんだけどなぁ。」


何者?なんなんだこいつ?なんか変な奴に捕まった?

頭の中で、声の主について考える。

どんなに目を細めても、声の主が暗くて見えない。

声に聞き覚えがない。

しかし、人とつながりをずっとさけて生きてきている為、

まったく知らない人という言う自信がない。


「どちらさまでしょうか?」


いろいろと考えて、最善の言葉として思いついたのがこの言葉だった。


「まずは、私の質問に答えてくれるぅ?私の言葉はつうじてるの?」


暗闇の中から、ものすごく不機嫌そうな声が聞こえる。


「はい。わかります。通じています。」


「ちっ...」


返事をしたら、まさかの舌打ち。

今の返事って悪かったのか?

何が間違ってた?

心の中で焦りが走る。


「まぁ通じてるならいいよぉ。 少し話そうかぁ?」


「・・・」


暗闇の中、相手の姿はまだ見えない。

姿の見えない相手から話をしようと言われても、返事に困る。

断って大丈夫だろうか?

もし、それで相手を怒らしたら...

その先を考えた瞬間、焦りが恐怖に変わる。


「話そうかぁ?」


女の声は威圧的というか、ほぼ命令口調。


「はい」


相手の姿がわかるまで、相手を怒らせないようにしよう。

自分の中の何かが断ったら危険だと言っている。


右腕に、生暖かい感触が伝わる。

暗闇の中なので、ぶっちゃけ気持ち悪い。

もう恐怖でしかない。

この防空壕は、夕方や夜には不良もやってくる。

たばこの吸い殻や空き缶など、ゴミが散乱している時もあり、

放っておくと自分が過ごせなくなるので、掃除してやってる。

ただ、実際に遭遇するという事は今まではなかった。

不良だったら、速攻でお金をだして、逃げ去ろう。

指先が震える。

もう完全にこの震えは相手に伝わっているだろう。


暗闇の中、頭の中で必死に逃亡手段を考える。


「君さぁ。さっきから私におびえてるみたいだけどぉ、

 ちょっとそれひどくない?」


・・・どう答えるのが正解なんだろうか・・・

こんな暗闇の中で、まったく見えない相手に恐怖しない人間なんているんだろうか?

さっきの舌打ちが頭の中をよぎる。

これからどんな事がおきるのか、頭の中で考える。

お金だけで許してもらえるか、

許してもらえるとしても1回だけですむのか。

変な写真とかとられたりしないか。

人間はわからない物に恐怖を感じる。

わからないから恐い。


うわぁ・・・


頭の中で、必死に最善の答えをさがす。


「君は面白いねぇ

 私は不良じゃないし、別にお金とか渡されても困るからぁ。」


頬になにかで円を描かれる。

頬に触れたなにかが、あまりに冷たくて声をあげそうになる。


・・・んっ?

さっきの女の言葉が引っかかる。

考えていた事を声に出してただろうか?

それとも、よく不良と勘違いされるから先手をうったのか?

暗闇の中、ずっと続いている心的ストレスにより、

ノルアドレナリンがどんどん分泌され、

頭の中で恐怖が膨らむ。


恐怖に支配された身体は、完全に硬直して動かない。

頭の中はすぐ隣にいるはずの相手の事を考える。


「君は声に出してなんかないし、私は先手をうった訳でもないよぉ。

 よぉく聞こえてるからね。君の心の声がねっ」


・・・頭の中が真っ白になり、言葉を失う・・・


沈黙が続く...


・・・


・・・・


・・・・・


ああ、これはきっと夢だな。


「そうだねぇ。夢の中かもねぇ。

 仕方がないから、私が起こしてあげるねぇ」


頭に衝撃が走り、同時に重い音が防空壕に響く。


「イッ・・・」


その衝撃に耐えられず、思わず口から声が漏れる。


「夢の中でも痛いものは痛いのかなぁ」


なんと返せば良いのだろう。

こんな事を言われたら、人はどう答えたら良いのだろう。

頭の中で、次の言葉を考える。

何を言えば良い?

何を話せば良い?

何を返せば良い?

これは自分がコミュニケーション不足だからなのか?

普通の人は、すぐに何か返答ができるのか?

言葉のキャッチボールができない...


「君って面白いよねぇ。」


暗闇の中から聞こえる女の声。

・・・何が面白い?

・・・何も話してないじゃん。

・・・ただ固まってるだけじゃん。

・・・今の俺の対応って変なの?

・・・ ・・・ ・・・

もしかして、からかわれてる?


「ピンポーン」


「えっ」


・・・

・・・

・・・


「せ、い、か、い。

 君は、心はとってもおしゃべりさんなんだねぇ。」


暗闇の中、「クスクス」と笑ったような音が響く。

暗闇の中の声はものすごく楽しそうだ。


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