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058 竜王

 グラ地下迷宮にルヘンが入って結構な日数経過していた。


「思ったより時間がかかるのじゃ。まさか、更に奥があるとは……聞いてないのじゃ」


 十一階層の入り口を見て、げっそりしていた。

 やっと十階層に辿り着いたのだが、平均して十階層迄のダンジョンが多い中で厄介な事にグラ地下迷宮は更に奥があった。


「やっと、追いつきましたねぇ」


 背後から美形の紳士がやってくる。

 ダンジョンに関わらず、仕立ての良いスーツを着こなしている。


「メッキ? 思ったより早いのじゃ」


「こんな楽しそうな事をルヘン様だけで楽しませてませんよ。十一階層ですか……ワクワクしますね。人間の姿のルヘン様を見ると食べたくなりますが、食べたら私が死んでしまいますかね?」


不死王(リッチ)が人間になる事は不可能だが時間逆行の術式で、身体を過去に戻して無理やり人間になっておるからの。メッキが我を襲えば術式を維持できずにリッチに戻って、メッキが取り込んだ制御出来ない我の血肉がお前の生命力を全て吸ってしまうから死ぬじゃろな」


「それはそれでゾクゾクしますね」


 雑談をしながら十一階層の奥へ進んでく。

 魔物に多数出会うのだが、魔物が避けるように二人の視界から消えていく。


「さすがに十一階層になると、戦闘もせずに相手の強さがわかる魔物が多くて助かりますね」


「そうじゃが、これはこれで暇じゃな」


「そういえば、貴方が主君と崇めるゲンワク様なのですが、実は貴方と同じ存在ではないですか?」


「ほう、何故わかったのじゃ?」


「伊達に長く生きてませんからね。再びダンジョンコアを求めている点と賢者の石を求めている事で、すぐにわかりましたよ。ただその推測が正しいときは、既にゲンワク様は、不死王(リッチ)の上の存在かもしれません」


「ほう、それはなんじゃ?」


「それは、死神……」


 アンギャアアアア!


 地面が崩れて十一階層より下の十二階層だと思われる穴に二人が落下した。


 下には、広い空洞になっていて骨だけのドラゴンが待ち構えていた。


「スケルトンドラゴンかの?」


「いや、これは不味いですね! 竜王は既に死んでいたようです。目の前にいるのは竜王のドラゴンゾンビだと思います。レベルⅨの竜王ならば二人でどうにかなると思っていましたが、レベルⅩ相当の魔王級ですね」


「しかも、胸にあるはずのコアが……ダンジョンコアになっとるのじゃ。コアを破壊して倒す事も出来んのじゃ」


「こんな楽しそうな事が起きるんですね。竜王が死んだ所にダンジョコアが出来てしまったのでしょうか? 竜の死体がドラゴンゾンビになるのも稀で、それが竜王だった。しかもコアがダンジョコア! もうびっくりですね。どうしますか?」


「この地点をマーキングして主君を連れてくるのじゃ。我らじゃ無理じゃ」


「レベルⅩかもしれない魔物に主君を連れてくる? そんな素敵なルヘン様にはこれを」


 メッキが懐から丸い石を取り出した。


「転移石か?」


「一度しか使えませんが、登録はハビル帝国の闘技場観覧席になっています」


「ん? 凄い微妙な場所じゃの?」


「年に一度の大会は、楽しみで必ず見にいくので」


「納得じゃな。だが一人しか行けぬぞ。我が残ってメッキが呼びにいくか?」


「いえいえ、不死王(リッチ)といえども、竜王のブレスで消滅する可能性があります。逆に不死者でしかない私ですが、これでも始祖ですので完全消滅からの復帰は容易ですから安心して行ってきてください」


「前から思っていたのじゃが、お主は始祖ではなく真祖じゃなかの?」


 メッキが口に指を立てて沈黙のポーズをする。


「なら、任せるのじゃ」


 転移先が登録されている貴重な転移石を割ると、ルヘンが光出して消えた。


「レベルⅩぐらいと思いましたが、コアがダンジョコアに為にレベルⅪを超えているようですね。ゲンワク様なら余裕でしょうが、私ではどうでしょう? 久々に……」


 メッキが血の涙を流し始め魔力が爆発的に増加した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 数千年前から現在へ


 グラ地下迷宮の十二階層で老竜が最後を迎えようとしていた。


 元は幻影騎士団の竜騎士であったグロウ・ゼウス様に仕えていたが、人間共の策略でグロウ様が殺されて怒りに任せて国を一つ滅ぼした。

 地上では竜王と言われる存在になったようだが、もはやどうでも良い。

 全ての事に興味を失いグラ地下迷宮の奥に引き篭もって死ぬ事ばかり考えていた。


 稀にやってくるダンジョン攻略者と戦うが弱かった。

 攻略者が来るたびに前の攻略者よりも弱く感じる。

 年月が経過すると自分が強くなっていくようだ。


 竜王と言われるほど強くなってしまった自分の体を倒してくれる存在などいないと悟っていく。

 強くなり過ぎてしまった為に自殺すらままならぬ。

 あえて、力を放出して早く寿命を迎える事にした。


 グラ地下迷宮のダンジョンコアを見つけて食べた。

 体内の力が、ダンジョンコアに吸われていくのを感じる。

 数千年でも生きる自分の体が一気に老化していくのがわかる。


「やっと、グロウ様に再び会えるのだな」


 ゆっくりと目を閉じる。


 再び目を開けると体が腐っていた。

 何故? 何故死なない?


 起き上がって暴れると自分の腐った肉が飛びちる。

 これは? ドラゴンゾンビなのか? 老衰ではなくダンジョンコアによる魔力枯渇で死んでしまった弊害か?

 ならば、完全に朽ちるまで眠ろう。


 再び目を閉じる。


 強大な魔力を感じて再び目を開けると……

 骨だけになっていたが、意識があった。

 一体、自分はなんになってしまったのだ?


 上の方からグロウ様よりも強い気配を感じる。


 アンギャアアアア!


 上に向かってブレスを吐いた。

 二人の人間が落ちてきた。


 人間? グロウ様を殺した人間だ!

 憎しみと期待を持って襲いかかった。

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