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055 賢者の石

 魔人の国であるベルド共和国には、四人の魔王と言われる存在がいた。

 それをベルド共和国では、四天王と言っていた。


 この四天王が同盟を結んでベルド共和国としてヒューズ王国とハビル帝国に対抗していたが、実際はこの四天王が常に小競り合いをしており、危ういバランスを保っていたのだった。


 その四天王の一人にパーマと言う女性の魔人がいる。

 人型だが頭には羊のような角とグラマスな体型で、胸を強調する服を着ていた。


 四人の魔王の中では、一番若輩であった。偶然にも人間の狂信者を襲っていた時に賢者の石を手に入れた事から、前四天王のモルモッサの弱点を知って打倒した事によって成り上がったにすぎなかった。


 他の魔王はレベルⅩを超える強さであったが、パーマはレベルⅨで伸び悩んでおり、ほとんど賢者の石の知識を利用した策略のみで勢力を維持している。


 少しでも油断すれば他の四天王に殺される恐怖で、パーマは一人で寝室に篭って今後の対応を悩んでいた。


 突然、パーマの目の前が光ったと思ったら、小型の転移門が現れた。

 通常よりもかなり小さい転移門を見て驚くが、すぐに指輪につけている賢者の石で調べる。


「小型の転移門? そんな物が存在するのか?」


 門が開いて、人間の村人のような特徴がない男が現れた。


「先程、お城の門番に門前払いされたので、仕方がないので直接賢者の石の所有者の前に出てきてしまったが、貴方が賢者の石の所有者ですか?」


「な、何故それを知っている!」


 偶然に人間の狂信者を襲った際に司祭が身につけていた賢者の石を手に入れた。

 まず、調べた事はこの石を持っている事を知っている存在だったが死亡した司祭以外にはいなかった。


 それと、世界に存在する個数を調べた。

 二個ある事がわかった。

 この情報を考えるともう一つ存在する獣王の王冠を使用するしか、私が持っている事を知る存在がいないはずである。

 しかも、獣王の王冠の賢者の石に関しての伝承が失われて、大会の優勝者が儀式的に被るだけで使用はしないはずだ。


 その疑問に現れた村人があり得ない回答をすぐに答えた。


「賢者の石の知識で知り得ました」


 よく見れば村人の首から下げているネックレスに賢者の石があった。

 三個目の賢者の石だと?


 すぐにパーマが調べると男が持っている石は、確実に賢者の石と判定が出る。

 何故? 再び世界に存在する賢者の石の個数を調べると過去は二個しか無かった筈だが、四個になっていた。

 所有者は、現獣王のゲンブと私とニュンぺーとゲンワク?


「その賢者の石を譲って頂けませんか?」


「馬鹿な事を言うな! 殺されたいのか? 既に持っているではないか! 魔族は自分よりも強い者しか従わぬ」


「あ! いま元の姿に戻りますね。それから判断をお願いします」


 目の前の村人が、突然消えた。

 いや、小さな子供? いや幼児の骨が立っていた。

 全身が硬直する。


 膨大な魔力を感じたと思ったら急激に自分の生命力が奪われていく。


「ちょ、ちょっと待て! わかったから元に戻ってくれ。私が死んでしまう」


 すぐに元の村人の姿に戻ってくれた。

 助かったのか?

 まさか、目の前の人物が他の四天王など話にならない魔力を秘めた存在だと予測できなかった。

 常識を超越した偽装か隠蔽の能力か?


 邪神なのか?……いや、もっと身近な死神……

 そう、死ぬかと思った際に感じる死の匂いがする。

 とにかく逆らって死ぬイメージしか出来ない。


「タダでとは言いません。なにかと交換や願い事があれば手伝いますので譲って頂けませんか?」


 私達と同じ悪魔の取引みたいな事を言う奴だな。


 現状で賢者の石を渡したら、弱い私は他の四天王に殺される。

 指輪に嵌っている賢者の石を触って男を調べるが、先程の正体に関して全くわからない。

 こいつは、賢者の石すら騙す事が出来るのか?


「名前は、ゲンワクで良いのか?」


「そうです。貴方の名前はパーマで良いのかな?」


 ゲンワクもネックレスの先についている賢者の石に触れて私の事を調べているようだ。


「何故。二つ必要なんだ?」


「実は、俺の賢者の石は偽物なんです。説明するよりステータスの偽装というか勘違いを戻すので、俺の能力をその賢者の石に聞いてください」


「え?」


 言われたように確認してみる。

 先ほど見えなかったゲンワクのステータスがわかった。


 名前 ゲンワク 不死王(リッチ)

 レベルⅠM

 能力 幻 錬金術 魔法適正


 リッチ!? 納得だが幻の能力だと? 御伽噺にはよく聞くが初めて見た。賢者の石を幻と錬金術で出現させているという事だな。

 レベルのⅠMの意味を賢者の石に聞いた瞬間に、目眩がして来た。

 レベル九百九十九!?

 なにかの間違いかと思ったが、魔力を調べて納得した。


 四天王の魔力が百だとすると、ゲンワクの魔力は千億を超えていた……

 本物と能力は変わらないが偽物の賢者の石の仕組みはわかった。

 偽物とはいえ魔力で賢者の石を出現させる自体、もはや不死王(リッチ)じゃない存在ではないか?

 まさか、今の状態も本当の姿ではないのかもしれない。


 そして、彼の過去を知った。


 元人間だったが無自覚の不死王(リッチ)になってしまったお人好し。

 徳を稼ぎたいのと人間に戻りたい為に賢者の石の本物が必要。


 驚いたのが、ゲンワクが異世界転生者で、世界の人々は来世の幸せの為に徳が必要と言う知識だった。


 わ、わたしは、徳どうなんだろう?

 こ、この人に頼めば私の願いが叶うのでは?


「全てわかった。ではお願いする。今まで死にたくないから生き残る為に行動して来た。私を守ってくれ」


「具体的にどうすれば?」


「ベルド共和国を統一してくれ」


 ゲンワクが驚いたが、すぐに回答した。


「お断りします。無理です」


「即答!?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 賢者の石を譲ってもらう為に、ベルド共和国の四天王の一人であるパーマの所に来た。


 賢者の石でパーマの事は大体分かった。


 ベルド共和国では、弱者は搾取されて役に立たない者から死んでいく。

 生存する為に強く賢くなったパーマだったが、他の四天王を超える力が足りない。

 このままでは、他の四天王に倒されるか自分の部下から下克上的に襲われる恐怖に耐える日々を送っている。


 パーマは徳を見る眼鏡で見ても、自分の意思で人を襲った事がないようで、赤くなかった。

 赤い方が倒して強奪出来たので楽だったかもしれない。


 お願いを聞いて譲ってもらおうと単純に考えていたが、恐ろしい提案をされて、硬直した。


「具体的にどうすれば?」


「ベルド共和国を統一してくれ」


 な、何を言ってるんだこの人は!?

 お願いの規模が国家レベルってなに?


「お断りします。無理です」


「即答!?」


「どうすれば統一できるかなんて、想像もできませんが?」


「簡単な話だぞ。毎月開かれている四天王会議で私以外を全て倒せばそれで解決だ」


 恐ろしい事を言う人だな……だが、今の俺なら余裕で勝てるのか?


 賢者の石を触る。四天王の戦闘力を数値化してもらう。


『マスターの強さを百とすると、パーマが六です。ヒルドが九です。ウィオクが八です。ボックが十です』


 ちょっと待って? そんなに強くないのか?


『マスターが規格外なだけです』


「それだけならどうにかなりそうだが、会議はいつ?」


「今日だ」


「え!? ここで!?」


「いや、四天王の領地が重なるベルド共和国の中心にあるグッス城で行われる。この転移石を壊せば一人だけ直接行ける。あと半刻もせずに始まるだろう。一人分しかないから行って来てくれ」


「丸投げ!? 一緒に来てください!」


「無理だ。後は頼んだ」


 余程、四天王の集まりに行くのが嫌なようだ。

 逃さないよ。

 賢者の石で転移石の転移地点の座標をしると転移門を開いた。


「な! 転移門! い、いや。私は行かなくても良い。行って来てくれ。待て笑いながら手を引っ張るな!」


 逆らうパーマの手を掴んで強引に一緒に転移門に移動していく。

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