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051 巣立ち

 冒険者ギルド本部に戻ってきた! 今回は疲れた気がする。やはりクラス ゴールドの依頼は重い。

 ゴールド依頼を甘く見すぎたのが痛い。

 事後処理が半端なかった。


 フロイデが真実を公表すると冒険者ギルドとヒューズ王国で戦争になると言うので対策を練る必要があった。

 俺としてはネオンの出資者だったバーズ皇子は現地にいないと思っていたし、組織を殲滅すればボプラ将軍が恐れて抑止力的な効果で依頼を遂行する予定だったのだが、現地でバーズ皇子をニュンが殺してしまったし、影響されて真実を知っているフロイデがボプラ将軍を暗殺してしまった。

 これでは、依頼を受けたが達成した報酬を受けとれない。受け取ったらバーズ皇子やボプラ将軍の殺害犯人になるためだ。

 私達が依頼を受けた事は、極秘裏にギルドの資料を全て燃やしたので証拠隠滅は完璧だ。


 第二騎士団団長のバーズ皇子と第二騎士団副団長のマッセ・ボブレイは、ヒューズ王国が裏から手をまわして証拠を全て握り潰し、ネオンの関係者で悪い事をしていたわけではなく、潜入捜査してたテーラと同じようにネオンを調査するために潜入して殺されたことになって、殉職した英雄扱いになっている。そのため英雄として国葬が盛大に行われた。情報操作とは恐ろしいものだ。


 俺とフロイデは、フロイデの実家に遊びに行っただけという事で無理やりアリバイを作ったので今回の件の襲撃者達の仲間だった嫌疑を回避できた。

 これも、アッシュ町で共闘したり目撃した町民たちが、詳しく私達の特徴をばらさなかった事のおかげなのだが、どうしてかばってくれるかは謎のままで、賢者の石を使って調べても人の心はわかりませんと回答された。


 重要参考人として手配されているのは黒鎧のニュンペーで、もはやヒューズ王国で活動はできないかもしれない。

 通常時の黒鎧の姿が襲撃犯の特徴とおもいっきり同じだからな……


 戻ってから毎日のようにマッチョな老人が、冒険者ギルドにニュンペーに関して聞きに来るが、俺が出現させない限り会えないから大丈夫。

 一番厄介なのが、第四騎士団の団長レッドだった。

 王都中を第四騎士団を使って強引にニュンペー調査にのりだして、一軒一軒に強制捜査する力の入れようだ。

 俺の冒険者ギルドで使用している仮眠室にも押し入って来た。


 大きく変わったの事はフロイデがギルド職員を辞めてしまった。

 巻き込まれて俺が副ギルドマスターに選任される流になったので、逃げるためには俺も辞める羽目になった。


 俺が辞退したのは、本部の副ギルドマスターの業務時間が前世のブラック企業も真っ青な内容だったのが主な理由だ。


 フロイデと算数の勉強から数学の勉強へシフトした朝の勉強会で、朝食を食べながら感想を述べる。


「よくまぁ、副ギルドマスターをずっとやってましたね?」


「あ! わかってくれる! 本当にひどいのよ! 理由が無いと休みも取れない! 業務時間は朝早くから遅くまで! 寝ててもトラブルがあれば起こされる! 実家にもほとんど帰れない! 最悪でしたよ! マスターはボケ老人だし!」


「引き受けなくて良かった……」


「まぁ、先生の作製したマニアルのおかげで誰でも勤まるから大丈夫でしょ! ただ拘束時間だけがねぇ」


「これから、フロイデは冒険者に戻るんですか?」


「そうよ! 先生と一緒に旅をするの!」


「え? どういう事ですか?」


「知らないと思ってるんですか? ヒューズ王国じゃもう徳を稼ぐのが難しいから獣人の国であるハビル帝国に行ってニュンさんとまたパーティ組むつもりでしょ?」


 女の勘ってやつか? なるべく一人で行きたかったんだが、信用できる現実の人を一人ぐらいは連れて行った方が良いかな?


 口に、朝食のサンドイッチを入れようとすると小さな手がそれを奪った。


 ムシャムシャ!


「やっと……ムシャ…ムシャ…戻ってきたのじゃ! 我もついていくのじゃ!」


「ルヘン!?」


 ボロボロのローブをまとった、十二歳ほどの女の子が俺の朝食とフロイデの朝食を横から奪って食べていく。


「先生? この女の子は誰かな?」


 フロイデにめっちゃ睨まれる。


「主君、この弱いエルフの女は置いていった方がいいのじゃ。主君に相応しくないのじゃ」


「なんですって!」


「喧嘩はやめてくれ。ルヘンは、今までどこに行ってたんだい?」


「これじゃ。これを回収しにいってきたのじゃ」


 ルヘンが杖を俺に見せる。


「そもそも、そこのエルフは真実を知ったら、主君と共に動けぬのじゃ。主君よ、真実を知る勇気はあるかの?」


「え?」


「この杖は、【開眼の杖】と言う杖じゃ。魔力使用量によって左右されるが幻を無効化する効果がある。御伽噺にいた幻の能力者の主君が、自分の幻に呑み込まれないために幻影騎士団の一人に持たせていたものだ」


「幻に飲まれる?」


「そうじゃ。御伽噺の主君と言われた人物の記録は、一切処分されて名前すら残っていないのじゃが、幻影騎士団の記録は各地に残っていのじゃ。その中で主君は愛していた人が殺された時に、その現実を受け入れられず生きている幻と勘違いして生活をしていた時期があり、それを見かねた幻影騎士団のローズ・タンミラクがこの杖で助けた話があるのじゃ」


「俺とニュンの関係に似ているが、ニュンは死者だと認識していますが?」


「え! ニュンさんを愛していたんですか!!」


 フロイデが過剰反応する。

 う! 少し否定できないかもしれない。結構、付き合いが長くなってきて美人だし性格も真っ直ぐだし……


「お前は、黙っているのじゃ! ここから重要な話なのじゃ! 主君とニュンの関係は、勘違いしていないから大丈夫なのじゃ。それとは別に主君は……大きな勘違いを一つしているのじゃ。だが、それを主君が知ると主君が消滅してしまう恐れがあるのじゃ。それでも主君は真実を知りたいか聞きに来たのじゃ」


「大きな勘違い?」


 過去の三歳から十三歳までの幻の生活の様な勘違いなのだろうか? 消滅してしまう? 一度気になると我慢するのはつらい。


「知りたいが、正直怖いな。消滅か?」


「ここでは、不味いからハビル帝国に行くのじゃろ? その道中で話をするのじゃ。ついてくるのは勝手じゃが、死んでもしらぬからなエルフの女よ」


「フロイデです! 子供のくせになんて口のきき方をするの!」


「我は数千歳なのじゃが?」


「え!?」


 フロイデがルヘンの年齢に驚くが、フロイデだって結構な年齢だった気がするんだが……

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