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005 幻の過去

 ハクオウの養子になってから冒険者ギルドの手伝いをはじめて二年が経過した。


 今はロッチの町の冒険者ギルドの屋根裏に住み込みとして住んでいる。


 仕事は冒険者ギルドの手伝いと掃除洗濯からハクオウの世話である。

 ハクオウから戦闘技術を学び、剣もそこそこ使えるようになってきた。

 栄養価が高い食べ物も食べさせられて、やっと普通の十五歳の外見になった。


 そして多くの事を知る事になった。

 まず、俺が過去にいた村は十二年前に魔物に襲われて滅んでいた。

 今が十五歳なので俺が三歳の時だ。

 襲われた報告を受けて多くの冒険者が救助に向かったが、戻って来ない冒険者や記憶に障害が生じる冒険者が後を絶たなかった為に村は見捨てられた。


 戻って来た冒険者の証言は支離滅裂であった。


 村があった場所には死体しか無かった。

 村は襲われてなかった。

 普通に村人が生活をしていた。

 夜になると建物が消える。

 冒険者なのに自分が行商人になっていて村人と取引した。

 死んだはずの過去の冒険者を見た。

 冒険者の自分が村人になって畑を耕していた。

 何もない場所に朝になると建物が現れる。


 それから村の付近の森は、幻惑の森として立ち入り禁止になった事を知る。


 結論から言うと俺の三歳の時の僅かに残っていた記憶が答えであった。


 三歳の時に、幻の能力を色々試している際に村が多くの魔物に襲われた。多くの人々が死んだのだが、これは自分の能力の制御失敗で実際は平和な村だと思った時が一度あった。

そうすると平和な村に戻ったので、何も考えずにそのまま生活をしていた。


 そう、本当はその時に村は滅んでいたのだ。


 実際の事を自分の幻の能力だと思って、村が平和な幻を発動していたのだった。

 俺は自分の幻と共に、気が付かないまま十三歳まで幻の村で生きていたのだ。

 今思えば、村の近くにあったゴブリンの集落のゴブリン達が、村人の幻に囚われていて俺と平和な村を演じていたのだった。

 村に来ていた行商人は、幻によって自分が行商人と思い込んだ冒険者だったのかもしれない。


 友人も出来ず、家族とも疎遠だった理由がはっきりわかる。


 三歳までに知った村の情報と幻の本の知識しかないので、ロッチの町に来たばかりの時は村の名前すら覚えていなかった事になる。


 最後に俺を襲ったゴブリンは、俺を村でよく虐めてきた子供だった事に気がついた。


 そう、気のせいだと思っていたが俺を襲っている際に微かに声が聞こえた事を思い出す。


「お前が村を出て行ったら村がなくなる」


 ゴブリン達も薄々は気がついていたのだろう。

 俺が寝て夜になれば幻が消えて目が覚めるだから。


 しかし、昼間は平和な村に住む人間だった記憶も混在して距離をおきながら俺と共に生活してくれていたのかもしれない。


 それを知ってから今も幻の中にいて、俺は存在していないのではないかと毎晩寝る際に恐ろしくなる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 幻惑の森から現れたゲンワクと言う少年の面倒を見てから二年になる。


 初めて出会った時は栄養不足のためか十三歳のはずが十歳前後にしか見えないボロボロの少年だったが、今は見違えるほど立派な成人男性になった。


 ギルドの手伝いも職員より優秀にこなすし、町の民が嫌がるような清掃活動や、高齢の人々の世話の対応などこなしてくれる。


 しかし、護身用に剣を教えたが素質はゼロのようだ。

 才能が無くてもある程度は、扱えるようになるのだが全然ものにならず弱い。

 ゲンワクは冒険者にはむいていない。

 不思議に思うのが、弱い場合は町の小悪党などに目を付けられて利用されるものだが、そう言う話は全く聞かない。

 話術に優れている気はするので、言葉巧みに上手くやっているのだろう。


 一番ビビったのは計算能力だな。算術のレベルを超えている気がする。そのおかげでゲンワクが手伝いに来てから、本部ギルドへ送る色々な書類がすぐに片付くのだ。戦闘力は低いが、俺的にはゲンワクはロッチの町の冒険者ギルド最強と言える。


 気になるのは、俺以外と業務的な話以外を全くしない事だな。内向的な性格は治してやりたい。


 ゲンワクの今後を考えると、力だけの俺と違って頭が切れそうだ。辺境の町ではなくもっと大きな場所に行ければ成長する予感がする。

 機会があれば、送り出そうと考える。

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