045 奥の手
かなりしくじったと思っている。
アッシド町の半分がネオンの関係者と言う事は知っていたが、冒険者ギルドまで取り込まれているのは予想外だった。
せっかく賢者の石があるのだから、もう少し情報を賢者の石から取得すべきだった。
フロイデにムストを付けたが不安が残るので、地下でニュンにネオン壊滅を継続してもらい、俺はフロイデの所に途中で出会ったケイトを連れて行くことにした。
初めは危険な依頼の遂行は幻の冒険者のニュンにすべてを任せる予定だった。
しかし、ニュンが傷つく事が辛かった事があって考えさせられた。
そこで危険な事に付き合っても大丈夫になれば良いのではないかと考えて、前世の近代武器で武装することを考えた。そこで素晴らしい発見をする。攻撃力の為にライフルを幻で出現させる練習の際に、前世において防御力が高い空想の産物も出現させることに成功したのだ。
前世において電磁シールドは、実際に存在していて実用化されている。だがこれは物理的な攻撃には有効ではない。そこで物理的な攻撃を防ぐ電磁バリアを発生する超小型装置を幻で出現させた。
※電磁バリアは、実際に特許を取得しているシステムだが実用化はされていない。
ベルトに括り付けてスイッチを付けると、私の周囲が薄く青く光った後に普通の状態に戻る。
半径二m以内で俺に対して急接近する物質を全て跳ね返すシステムだ。
幻で出現させた弾が無限のライフルと電磁バリアの組み合わせは、もはやこの世界には敵がいないと考えているが……弾丸を剣で落とせると言ったレベルⅥ以上の化け物には不安が残る……やはり今回で依頼に付き合うのはやめておこう。
ケイトの案内で、ネオンの地下通路から町の中にある冒険者ギルドへ急いだ。
途中に出会う人物は全て赤色である。ライフルで倒し続けながら前進していく。
ケイトが一緒に走りながら質問してきた。
「お兄さんたちは、勇者様なの?」
プシュ!プシュ!
「え? お兄さん? いや冒険者だけど勇者じゃないぞ?」
「お前ら何も……プシュ!プシュ!……うぎゃぁ」
「お前らど…プシュ!プシュ!」
「何もだおま……プシュ!プシュ!プシュ!」
「さっきの黒騎士の人がかっこよかったな! お兄さんは従者なの?」
「そ、そんな感じだな!」
得体のしれない武器でバタバタ倒している特徴がない同い年ぐらいの奴よりも、ニュンみたいに剣でかっこよく斬っていく方が印象に残るんだろうなと感じた。
「あ、あそこを曲がって階段を上がれば冒険者ギルドにある秘密通路にでられるよ」
言われた場所を曲がろうとすると、背が高い痩せ形の男が現れた。
プシュ!プシュ!
キン!キン!
なんと! 銃弾を剣で弾かれた!
「なんだ! お前たち! ん? おまえ武器屋の……」
プシュ!プシュ!
キン!キン!
また弾かれたが、ニュンに聞いているので動揺はしなかった。
剣で打ち落とせるが避けるのは困難だったな。避ける奴はヤバイと思うが打ち落とす奴はまだ勝てる。徳を見る眼鏡で見ても真っ赤だから問答無用だな。
ライフルをフルオート設定にして連射した。
プシュ!プシュ!プシュ!プシュ!プシュ!プシュ!………
「喋っているさい……に……攻撃…」
キン!キン!キン!キン!キン!……
何か言っているようだが無視して撃ち続ける。
パキン!!
剣が折れたようだが、構わず撃ち続ける。
プシュ!プシュ!プシュ!プシュ!プシュ!………
「ぎゃぁ! う! ああぁ! 助け……」
剣が折れてから避ける事もできずに弾丸を受け続ける。
何も喋らなくなって動かなくなった蜂の巣の男に近づく。
ケイトが唖然としている。
「この人……この町のギルドマスターだよ? お兄さん凄いんだな! いや、その武器が凄いの?」
「え!?」
まさかのギルドマスターだったのか?
問答無用で倒した俺をどう思うんだろうか?
「ま、まあ、気にしなくて大丈夫だよ! この人は悪い奴だったんだよ!」
「知ってるよ! ねーちゃんが連れて行かれたから冒険者ギルドに助けを求めに行ったら、コイツにネオンに入ったら助けるって言われて入ったんだ。もう信じてないから大丈夫! ありがとうお兄ちゃん」
さっきから俺の呼び方が何故にお兄ちゃん!? 同い年ぐらいだと思うんだが?
冒険者ギルドがネオンの人員勧誘の窓口だったのかな?
今や知る事はできないが……
「お兄ちゃんじゃなくてゲンワクと言います。ゲンワクと呼んでください」
「ゲンワクって言うんだお兄ちゃん! 覚えたよ」
「いや、だから……ゲンワクです」
「だからお兄ちゃんの名前はゲンワクなんだね」
何故か調子が狂うな。あくまでお兄ちゃんと呼ぶつもりらしい。
そして、地下から冒険者ギルドに侵入した。
「今からいろいろ起きるので、安全な所に避難しててください」
「わかったよお兄ちゃん!」
危険なので冒険者ギルド侵入してすぐに見つかった裏口からケイトを逃した。
最後までお兄ちゃん呼びだったが、真剣な顔で逃げていったので大丈夫だと思うんだが……一緒にいるよりは安全なはずだ。
裏口からフロイデを探し始めたが、結構広くて迷った。ギルドの受付にたどり着くとムストが三人の人物に囲まれている。
「主君! こいつらヤバイです。逃げてください!」
ムストが俺に気がついて話しかけるが、ここは黙っているべきだったと思うんだが……
三人とも赤判定だな。
問答無用で奥の男にライフルを発射する。
プシュ!プシュ!プシュ!
男がいた所から消えたと思ったら、二m手前のちょうど俺の顔と心臓を狙ったナイフが青いスパークをしながら停止していた。
しばらくして地面に落ちる。
防ぐではなく避けるか……この状態は不味い。ニュンより強いかも知れないって事だ。
電磁バリアがなかったら死ぬ所だった。
「いきなり殺意を向けてくるなんて過激だな。それにしてもその鉄の塊を飛ばす魔道具スゲーじゃん。閃光のピューマの投げナイフレベルでびびったぜ。俺の方が速いがな。俺は見えないナイフ使いのジャックスって言うんだ。俺の投げナイフを防いだ奴は一年振りだな。名前を聞いといてやるぜ」
「なんだい、私に優しいとか言っときながらすぐに殺してないじゃない。代わりに私がやってあげるよ」
剣を持った女が、凄い速度で俺に近づいて剣を叩きつけるが、ナイフと同じく二m手前で見えない壁に阻まれて青白くスパークして、後方に下がる。
「あら、手加減したわけじゃないのね。結界か? 私の斬撃が止まるって凄いわね。私は辻斬が趣味のトアスよ。私も貴方の名前が知りたくなったかしら」
「二人が興味を持つとは珍しいな。私はノブスレイアラと言う。クラス シルバーの冒険者だが依頼をこなしていないだけでクラス ゴールドの強さはある。特殊な魔道具に見た事もない結界。君は何者だ?」
三人に目をつけられてしまった。目立ちたくないので今後のために倒さなければいけない。
「主君は、お前ら雑魚など相手にならない程のお方だ! 降参するなら俺みたい……グハ!」
ムストが余計な事を言った瞬間に、頭にナイフが刺さり胴体が上下に分かれた。
「雑魚!? 言葉に気をつけろ」
「雑魚はお前だろ」
トアスがムストを両断して、ジャックスがナイフを投げたようだ。
ノブスレイアラが、冷や汗をかいている。
「二人とも、まだ殺すと決まった訳ではないのだが?」
「やば、手がすべっちまった」
「私もちょっと興奮してて気が立ってたみたい」
「痛い……ん? 死んでないぞ。主君!? また、能力変更したのか?」
「すまんムスト。用心で不死身の能力を付加したんだ。痛いなら消すけどどうする」
「教えてくれれば玉砕で一人ぐらいなら……痛すぎる。主君消してくれ。絶対また呼んでくれよな!」
俺とナイフが額に刺さって体が二つになっているムストの会話を聞いて三人が凍りつく。
「不死身の能力!? まさか、あんた魔族か!」
「不死!! まさか不老も出来るの! 私老けたくない」
「そいつは何故生きている?」
問答無用でムスト殺した時点で、会話する気はないんだが強すぎて倒せない。これは奥の手を出すしかないんだろうか?
ムストが幻のように消えて行く。
「「「消えた!?」」」
小型の転移門を三人の真ん中に幻で出現させた。
「「「転移門!?」」」
転移門から一人の男が現れた。




