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041 調査不要

 さて、闇奴隷商人ギルドのネオンを消滅させる為に旅立ったが、もはや賢者の石があれば調査不要。

 (よいおこない)の眼鏡を使用して、過去に徳がプラスの人を殺したか判定したらネオン関係者の調書も不要だ。悪即斬という言葉を思い出す。


 賢者の石の事は伏せて、フロイデにネオンの詳細を説明する。


 世界の全てを知っている(下着の色など例外あり)賢者の石からの情報では、バビル帝国に誘拐部隊を秘密裏に送り込み獣人をさらってヒューズ王国の国境付近のアッシド町に集めて、各地に売却している。

 アッシド町がヒューズ国内の為に確実な証拠が無い限り、バビル帝国側から調査団や軍隊を送るわけにも行かず何年も進展していない状態だった。


 首謀者がボプラ将軍で、出資者がバース皇子とその勢力配下の貴族達である。


 アッシド町の地下に巣食っている闇奴隷商人とボプラ将軍を倒せば解決する依頼である。


「まさか、ボプラ将軍が首謀者だったとはね。解決しないわけだ。何人かクラスがゴールドの冒険者が対応しましたが依頼を受けてから諦めた人以外は帰ってきてませんでしたが、殺されている可能性もあるんですね。そんな情報を何処から仕入れて来たんですか?」


「主君は、なんでも知っているからな」


「ん? 冒険者の受付をしていれば噂を聞きますから話を総合的に分析しただけですよ」


 とっさに誤魔化してみたが納得するのか?


「さすが! 事務のプロは違うわね! 算数も教わってるし先生って呼ぼうかしら? ニュンぺーの真似をして主君が良いかしら?」


 納得してくれたよ! それより、数少ないゲンワクと呼んでくれるフロイデが……


「やめてください。ゲンワクで良いですよ」


「わかりました先生!」


 飛竜の上で強風の中会話のために大声で言い合っていたら喉が枯れて来た。フロイデが感想を述べる。


 国境付近のアッシド町までは、飛竜を使っても今日中に着かないので途中に見える村に一泊する計画になった。

 転移門の事を話してすぐに行くのもありだと思うが、たまにはこんな旅も良いだろうと思っていた。


「そこ! そこに降りてください!」


 フロイデが森が深い場所を指差して、着陸するように言ってくる。


「まだ、夕方でもう少し行けますけど?」


「今日は、私の実家がある町に来なさいよ」


「え? フロイデの実家!?」


「ちょっと興味があるが、森が深くて空き地がないぞ? 何処に飛竜を下ろせば良いんだ?」


「あ、今結界を一時的に解除するわね」


 フロイデの魔力が上昇したかと思ったら視界に町と大きな広場が見えた。


 広場に着陸すると主に弓武装したエルフ達に囲まれる。


「ただいま!」


「フロイデか! 三十年ぶりじゃないか!」


 エルフの武装集団のリーダーっぽい人が返答した。


「紹介するはこの二人は職場の同僚と仲間よ」


「なんだ? 身を固めたかと思ったぞ! その報告じゃないのか?」


 緊張していたエルフ達がフロイデを見て緊張を解いたが、更に結婚話になって笑い出した。

 それより三十年ぶりってフロイデって何歳だ!?


「な、なに言ってるの!! そんなんじゃないわよ!! そばを通ったからついでに寄っただけよ!」


「まぁ、話は家で聞こう! こちらに……」


 ここは、ヒューズ国内に五箇所あるエルフ達が住むエルフの森だった。

 結界で守られている森の中には、ポッシュの町がある。

 住人は全てエルフ族だが、ヒューズ王国の一つの町として扱われていて税金も払っており、冒険者ギルド支部もちゃんとある。住人がほとんどエルフと言う事以外は普通の町だった。

 フロイデは町長の姉の娘だったので有名人のようだ。

 町長以外にハイエルフの森長がいて、その人が一番強い権力を持っていた。

 町に宿泊するとの事で、寝る前に森長に挨拶に行くことになった。


 町の中心にある凄い大きな木の根本までいくと、扉が付いている。


「こっちよ先生!」


「いや、先生はやめて!」


 扉を開けると大広間になっていて、奥から森長らしき人物が歩いてくる。

 木の大きさより広間の方が大きい気がするので、ここは異空間なのかもしれない。


「フロイデ。久しぶりだな。森長のメロです。エルフが多いだけで普通の町とあまり変わらないがゆっくりしてくれ。一泊の予定だったな。全然許可しよう」


 エルフって痩せてて耳が尖っていて森の精霊みたいなイメージだったが、フロイデの胸もそうだが目の前の人は更に、ドンドンドンって感じでドラム缶のような体型の美男子だった。


 メロとフロイデが雑談を始めたので、放置してフロイデに教えられた宿屋に移動した。


「フロイデさんの仲間だってな? 飛竜の大きさがデカすぎてビックリしたぞ! それよりすぐに消えたから召喚獣だったんだろ! 兄ちゃんその歳でスゲー召喚術師だな!」


 少し照れるが、召喚術師でなんでも誤魔化せそうだな。


「一番良い部屋を用意するぜ。黒騎士の人は一緒の部屋で良いのか?」


「主君と同じ部屋で良いぞ。いや、是非一緒の部屋にしてくれ」


「わ、わかったよ。一部屋でベットが二個の部屋なら二階の一番奥だ。これが鍵だ。宿から出る時は鍵をフロントに置いて行ってくれ」


 鍵を渡されてニュンと一緒に部屋に向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 第四騎士団のレッド団長が再びマリファの都市の冒険者ギルド本部に戻ってきた。

 受付にいくと、前回の受付の奴がいなかった。


「おい! 前回受付だった奴は何処行きやがった?」


「ゲンワク先輩ですか? 休暇を取りましたよ」


「休暇? じゃあお前でいいや。ニュンぺーって冒険者は何処だ? 戻ってきてないか?」


「ニュンぺーさんなら、新しい依頼を受けて旅立ちましたよ」


「また、すれ違いだと! 新しい依頼ってなんだ! 教えろ!」


「それは教えられませんよ」


「ふざけんな! 教えないと暴れるぞ!」


「レッド! 過激だな? お前でもここで騒ぎを起こしたらギルドマスターにボコボコにされるぞ?」


 背後から元第一騎士団団長だったブラウドが、やってきてレッドを止めた。


「ジジー! あああぁぁ頭くるなぁ。依頼から戻ってくるまで待ってりゃよかったのか!」


「まぁ慌てるな。城に戻って報告するぞ。何やら雲行きがおかしい。勇者召喚が早まったらしいと密偵から連絡を受けた。聖女の件を考えるとバビル帝国と戦争が始まるかも知れん」


「そりゃ嬉しいね! やっと暴れられるぜ! おい! ニュンぺーが戻ったら第四騎士団に連絡しろ」


「え? ちょっとそれはギルドの業務では……」


 レッドに睨まれてゲンワクの後輩の受付が怯える。


「わ、わかりましたよ」


 そう言い残すと、レッドとブラウドが城に向かって冒険者ギルドから去っていった。

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