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004 記憶の齟齬

 三日ほど経過して町まであと半分の道のりである。

 夕暮れにより周囲が赤く染まる。


 俺の能力の欠点は寝てしまうと全てが消える事である。

 仕事をサボって終わった幻を見せても、次の日には終わっていない状態に戻っていたからなぁ。


 起きている間に俺に懐いた幻の猟犬を出現させて周囲を調べる。

 特に魔物や魔獣はいないようだ。


 この三日の旅で町までの道に違和感を覚える。

 町までの道が、もう何年も誰も使っていない気がする。

 過去に道だった形跡はあるが、すでに道と言うよりも草が生え放題で獣道に近い状態だった。

 村には定期的に行商人も来ていたし、村の何人かは出稼ぎに町へ行き来していたはずだが?


 道の周辺にある安全そうな大木を発見すると、上まで登り自分を縛って寝る事にした。


 そして今日も一日が終わった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 六日目の昼に、町の入り口へたどり着く。

 町の入り口に武装した人物がいて話しかけてきた。


「ん? 子供? 何処から来たんだ? 俺は門番のモズだ」


「森の奥の村から来ました。十三歳になったら村の外で仕事をする習わしなので来たんです」


「え!? 森の奥!? 幻惑の森から来たって事か!?  十三歳だって? 十歳以下にしか見えないぞ? ちょっと付いて来い」


 困惑しながらモズと名乗った門番に案内されて、大きなお屋敷に案内された。


 屋敷の前で待っていると熊のような大きな男と門番のモズが出てきた。


「この町の冒険者ギルドのギルドマスターハクオウだ。おかしな子供がいると聞いたがお前か? 本当に森から来たのか?」


「はい。ここから歩いて七日程の所にある村です。実際は六日で着きましたが、村のみんなは七日て言ってました」


 ハクオウと名乗った大男の目が赤く光っている。


「嘘は言ってないようだな。だが、そうすると辻褄が合わない」


 嘘を見破る能力なのだろうか?


 門番と別れてハクオウが俺を別の場所に案内して行く。

 町の中を通るが多くの人々が生活をしている。

 出店も多く活気ある町のようだ。


 冒険者ギルドの看板がある大きめ建物の中に案内された。

 中に入ると冒険者と思われる武装した人々の視線が俺を見つめる。


「あら! 可愛い! ハクオウの隠し子!?」

「餓鬼が何の用だ?」

「誰だあの小汚い奴は?」


 多くの言葉が聞こえる。

 あまり意識していなかったが、俺の外見はぼろぼろの服に栄養が足りなかった為か十三歳には見えないで成人前の十歳に見えるようだ。


 奥の部屋に案内されて、ハクオウと詳しく会話する事になった。

 部屋には数個の椅子と大型の机がある。

 会議室のようだ。


 部屋に入ると話しかけられる。


「お前の名前は?」


 名前? そういえば村では俺はなんて呼ばれていた?

 思い出せない!?


「ど忘れでしょうか? 思い出せません」


 納得したような顔をして俺に席に座るように指示して、ハクオウは部屋の奥に移動した。

 俺が席に着くと部屋の奥から水晶をハクオウが持ってきた。


「手をのせてくれ」


 恐る恐る手を載せると水晶に文字が浮かぶ。


 名前 ゲンワク 十三歳 男 人間

 レベル I

 能力 無し


 ゲンワク!? これが自分の名前!?

 なんだ記憶に無いぞ。前世の記憶もそうなのだが記憶の欠落が結構ある気がする。自分の名前を忘れるって事は、長い期間に自分からも名乗らず誰からも呼ばれていなかった?

 能力はバレないようにと思っているので、無意識下で幻の能力が発現して水晶に無しとして見えるているようだ。


「レベル Iで能力無しか? こりゃダメだな。俺が面倒見るしかなさそうだな。俺の話をよく聴け。お前が来た幻惑の森は、迷い込んだ人間の記憶が混乱する。ぶっちゃけ俺の能力は嘘を見破る能力だ。お前が嘘を言って無い事はわかる。そうすると幻惑の森でお前の記憶がおかしい事になってるって事だ。思い出すまで俺が面倒を見るから安心しろ」


「え? 村は確かにある。村から来たんですが?」


「じゃあ、お前の名前は何故思い出せなかった? お前の村の名前は? 親や友達でも良いから名前を言ってみろ」


 言われて初めて自分の記憶がかなりおかしい事に気がついた。


 どう言う事なんだろう? 何故、今まで気がつかなかった?

 混乱したが今日からハクオウの養子として育てられる事になった。

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