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036 クラス昇格

 バン盗賊団の壊滅の証明が一カ月かかる為に他の案件に着手しようと思っていたが、塩漬け案件が伝説レジェンド級のものしかなくなってきた。

 伝説級の依頼を受けるには、ゴールド以上のクラスが必要でパーティーを組んでいてもシルバー以上のクラスが必要だ。

 秘宝などの探索や、未開の地への調査、国と国とのトラブルの解決の依頼が多い。

 一つの依頼が長いと年単位の時間が必要なときもあり、さすがゴールドクラスの依頼と言えよう。


 ニュンと私のパーティでも自分のクラスが低い為にシルバー迄の依頼迄で、ゴールドの依頼は受けれない。

 ニュンに昇格試験を受けてもらってシルバーまで上げる予定だ。

 俺は強くないので現状のブロンズのままのつもりである。


 朝食の時に、フロイデに相談すると既にニュンは完了依頼数と評価と人柄は合格していて、昇格試験を受けなくてもクラスがシルバー以上の三名の冒険者推薦があればすぐに昇格だった。


「私とギルドマスターの推薦が受けれれば、あと一人の推薦だけですね」


「あと一人の推薦をどうやって貰えば良いでしょうか?」


「クラスがシルバーの冒険とパーティー組んでその人からもらってくれればすぐですよ。私からの推薦は今すぐに出しますよ。ギルドマスターの推薦は、塩漬け案件を減らす功績を押せば、私が無理に取ってこれるから安心してください」


 フロイデがやに協力的で下心がありそうな顔をしている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 キティが依頼を受けているミドルデビルの討伐案件にニュンがついて行く事になった。

 通常だと二週間はかかる依頼であった。

 俺がいなくても依頼がちゃんと出来るかの判定なので、飛竜(ワインバーン)も貸さずニュンとキティが陸路で旅だつ予定である。

 キティは俺の転移門の事を知っているので、二人とも毎晩転移門で帰ってくる計画になっている。

 これで夜に消えてしまうニュンも遠出が可能だ。


 マリファの都市の入り口で、キティとニュンを見送りに来た。


 黒騎士と男の様な女戦士のキティが馬を跨いで、出発しようとしている。

 今回はキティが全然荷物を持っていなかった。


「キティ。急にお願いしてすまない。よろしく頼む」


「ダンジンコアの一件で返せない程の恩義があるから、お安い御用だ。主君が夜に戻ってこれる転移門を出してくれるなら、逆に不要な荷物がいらないので助かるよ。依頼終了後にニュンぺーのを評価してシルバーの推薦状を書けば良いのだな? 大船に乗った気でいてくれ」


「主君行ってくるぞ」


「ニュンはキティよりも強いのでキティが怪我をしないように気をつけてくれ」


 そう言うとキティが不機嫌になった。

 何か言いたそうな顔をしていたが、馬を走らせて行ってしまった。

 なんで不機嫌になったんだろうか?


 そのまま、ギルドに戻ろうとするとニュンとキティが行った方向と真逆から、馬が泡を吹いた状態で高速で近づく小柄な騎士が見えた。

 すぐに、目の前まで来ると、馬から降りて門番によってくる。

 馬は、そのまま倒れ込んで痙攣していた。


「門番! 俺を冒険者ギルドまで案内しろ!」


「ちょっと待ってください。門番の仕事があるのでここから動けませんって!」


 門番に断られたら近くにいた私を見て、腕を掴まれた。


「お前でいい。急いで冒険者ギルドへ案内しろ!」


「え!? 案内なら別に良いですが……」


 小柄の騎士と二人で冒険者ギルドへ移動した。

 移動中に質問されまくる。


「俺は、第四騎士団のレッドだ。冒険者ギルドに黒騎士の冒険者はいるか? ニュンぺーと言う奴だ」


「ニュンぺーが何かあったんですか?」


「知っているのか? お前の質問に答える必要はない。教えろ!」


 下手に関わると巻き込まれそうだが、名指しでニュンを指名している。何があったんだ?


「確か、冒険者にそんな人がいたかも知りませんが思い出せないですね」


「クッソ! 役に立たない奴だな。早く歩け!」


 頭に来るが我慢して冒険者ギルドに到着すると、フロイデの受付で筋肉隆々の高齢の騎士が、フロイデと口論していた。


「ですから、いくら貴方のお願いでも冒険者の情報に関してはお伝えできません! あ! 良いとこにゲンワクが来た! ゲンワク! ニュンぺーさんの家を教えろってこの人が!」


 高齢の騎士が振り向いて、私と案内した騎士を見て驚いた顔をする。


「レッド! もう着いたのか!」


「ジジー抜け駆けしようとしてないか? 何が共同戦線だ!」


 騎士に悪態をついたら俺の首を捕まえて激怒した。


「オメーも嘘つきやがったな! 話を聞くとニュンぺーの事を知ってるみたいじゃねーか!」


 散々だな。ニュンぺーは何をしたんだ?

 先日聞いた盗賊討伐では、怪我したが通りかかりの騎士から聖杯を借りて無事に完治した話しか知らないぞ。

 もっと詳細を聞いておくべきだった。

 対策を考えながらギルドの会議室へ移動した。


 フロイデは『受付やってるからよろしく』とか言って逃げた。


 レッドと言われる小柄の騎士とマッチョな老騎士に睨まれて席についた。


「「黒騎士について教えてもらおうか?」」


 二人で同時に質問してくる。


「ニュンぺーでしたら、依頼で遠くに行きましたよ」


「なら、家を教えてもらおうかな?」

「その依頼とはなんだ?」


 二人いると対応しづらい。


「どちらかの質問に決めてください」


「じゃぁ俺だな! ジジーは黙ってろ」

「なんだとレッド! 表に出ろ」

「上等だ!」


 ああ! なんだこの人たち!


「黒騎士の家は、ギルド職員もだれも知らないです。依頼は二週間程で戻ってくる依頼ですから待てば帰ってきます。後は本人から聞いてください」


「わからないだと! 冒険者の管理ぐらいやっとけよ!」

「二週間も待てるかボケ! 依頼の内容教えろって言ってんだろ!」


「ミドルデビル討伐でアルス公爵領に行きましたよ」


「アルス公爵領のミドルデビルだと! そんな物を解決できるのか?」

「アルス公爵領だな!」


 レッドと言われる小柄な騎士が、部屋から飛び出して行った。まさか、すぐに追うのか?


「じゃぁこれで、俺は業務に戻りますね」


 部屋には眉間に皺を寄せているマッチョな老騎士だけが残った。

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