033 ミラク王国の遺産
ゲンワクと別れてから、不死王だったルヘンは元ミラク王国の城だった、ビンベルト帝国の首都跡地に向かっていた。
ビンベルト帝国は、ルヘンを手に入れる為にミラク王国を滅ぼした際にミラク王国の城へ首都を移動しルヘンを利用して絶対防御の結界が可能なビンベルト帝国の中心としたのだった。
「年齢が低い外見で、来るのに時間がかかってしまったのじゃ」
外見が若い為に、馬も借りれず乗合馬車にも断られたり、誘拐されそうになったり、散々な旅だった。
ボロのフードを目深にかぶって、草木が生えていない道を城に向かって歩いていたが、やっと城が見えてきてルヘンがホッとする。
城のそばのにある倒壊して原型をとどめていない納屋らしき所で、地下の秘密通路へ行く入り口を掘り返していると、そばをヒューズ王国の旗印を付けて荷馬車が大量に城に向かって走り抜けて行くのが見えた。
「なんじゃ? こんな城に用がある奴がいるのかの?」
やっと掘り出した入り口の蓋を開けると、地下への階段が現れる。
幼少の時に城を抜け出すために使用したのを思い出して懐かしむが、最近も使用された形跡が残っていた。
やな予感通りに隠し通路の奥に隠されていた隠し部屋にあった国宝が全て奪われていた。
「まぁ、予想通りじゃな。だが、甘いのじゃ!」
ルヘンが自分の魔力を部屋全体に流す。王族の魔力に反応して隠し部屋の壁が変形を始めて新たに隠し通路が出現する。
「こちらは、大丈夫だったようじゃの」
更に隠し通路を進むと、赤い十字架が描かれた朽ち果てた扉があった。
ガタ! ガタ!
壊れてもよい勢いで扉を動かすと、扉が壊れて反対側に倒れて埃が舞った。
扉の向こうに、小部屋があり杖と剣が置いてあった。
「破邪の劔と開眼の杖じゃな」
破邪の劔は、刀身しかなく持つところがなかった。
「劔は、ゴミじゃな、使えん。まさか、我の先祖の幻影騎士団の首領のような人物に出会えるとは思わなかったが、主君の為にこれを使うのじゃ」
置いてあった、開眼の杖と言っていた杖を手に取る。
今まで、ゲンワクに幻を魅せられていた事が全て解凍していく。
開眼の杖は、御伽話の幻使いの少年が自分自信が幻に飲まれる事を恐れて、部下にもたせていた杖だった。
杖を触っている対象に、杖に流し込む魔力によって幻の能力が無効になる効果がある。
ゲンワクによってルヘンが見せられていた幻が全て無くなると、自然とルヘンの目から涙が溢れる。
「思い出せなくなっていたが思い出したのじゃ。主君の正体は私と同じじゃな。それにしても流す魔力を少しでも下げると主君の正体を忘れてしまうのじゃ。とんでもない主君なのじゃ。
過程は違うが主君の方は、私よりもっとやばいのじゃ。しかし、これをそのまま教えると主君が壊れてしまう可能性があるのじゃ」
考え込みながら、元来た道をルヘンが引き返していった。
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バンとニュンペーが、大広間の吹き抜けになっている三階部分から下を見下ろしていた。
視界の先には、城に突入して大広間に整列し始めた第四騎士団が見える。
「あれが、盗賊団の親玉だ」
「少し変な装備だが盗賊ではなく騎士に見えるが?」
「実はこの盗賊団は、貴族と繋がっていて奴らがその影の支配者って事だ」
「本当だ。真っ赤だな! わかった奴らを全て倒せば依頼が完了だな」
「真っ赤?」
「ああぁ、実は主君から良い人を誤って殺さぬように、徳を見る眼鏡を借りて来ている。わかりやすく言えば悪い奴は赤く見えるんだ。お前は赤くないから行っていいぞ」
「え!? 俺が赤くない?」
バンの疑問には答えずに、三階の踊場から第四騎士団がいる下にニュンペーが飛び降りた。
「俺が、良い人だと? 訳がわからない」
あとは、ニュンペーを第四騎士団にぶつけたから時間が稼げるはずだが、何故か今のニュンペーが気になってその場を離れないで隠れて観察することにした。
「情報取集であって、他意はないはずだ」
自分に言い聞かせて、黒騎士と第四騎士団の衝突を見守った。




