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032 幻が交差

 ボプラ将軍は、今後に起きる予定の世界大戦に向けて軍備を増強していた。


 ヒューズ王国の陸戦部隊の中でも最強を誇るヒューズ第一騎士団の団長が、高齢の為に辞任するのだが、その後釜を誰にするかで悩んでいた。

 第一騎士団の元団長で六十歳を超えてもなお筋肉隆々なブラウドと会議室で会話をしている。

 ボプラ将軍は、神経質そうな痩せている小柄の人物だった。


「フォルト王は、何もわかっていない。勇者など呼び出すのに予算を使いすぎだ。所詮勇者などレベルⅦ程度で補助魔法でレベルⅧ程度の強さだ。強くても所詮単騎だから戦略を使えば第一騎士団のレベルⅥが五人もいれば倒せる。勇者召喚に使う予算を回してくれればレベルⅥなど二十人は育てられると言うのに!」


 胃が痛いのか、腹を抑えながらボプラ将軍が呻く。


「そうは言っても王は、御伽噺にあった世界を統一する国家が目標だ。ベルド共和国の魔王達は、単騎で強く卑怯だ。戦略が通用せぬ敵にも対応する為だろう」


「あんな不毛な土地など放置して、バビル帝国さえ倒せればいいんだ。獣人の奴隷は最高だ。すぐにでも戦争すべきだ」


 嫌な顔をしながらブラウドが黙る。

 ボプラ将軍の獣人愛好は有名で、気分が悪くなった。


「とりあえず、体力の衰えが酷い。儂は引退だ。後任に副団長のゼックを当てようと思うが臨時処置だ。あいつは頭だけだは良いが武力が足りぬ。そこで馬鹿でも良いから強い奴を探してくるが良いか?」


「ゼックは、私と同じタイプの戦略家だからな。わかった! 使える奴を引き抜いてこい。予算は割けないから自腹でやるなら許可しよう」


「……わかった」


 最後まで不愉快な会話しかしてこないボプラ将軍を睨んで会議室を出ると、旅の準備を開始する。

 自分の長年の共に戦った老飛竜がいる置き場へ向かった。


 ブラウドには、最近噂になっている冒険者が気になっていた。

 単騎で複数のドラゴンを討伐したと聞いた。

 通常は複数人で討伐するにも関わらず、単騎で挑んだと言う。

 それを聞いた時に、心が久々に熱くなり自分の若い頃を思い出してしまった。

 外見が冒険者と言うよりも騎士のようだと言われているので、何処かの貴族に仕えてる人物だと予測している。

 冒険者ギルドは、中立であって本部こそヒューズ王国にあるが、全ての国に支部が存在し治外法権が多少は認められている。

 その為に、ブラウドの立場でもその冒険者が何者かは、ギルドを通して情報を得られなかった。

 しかし、その人物が最後に受けた依頼の情報は密偵から得られた。


「ヒューズ王国で最大のバン盗賊団の壊滅か……確か本拠地は、不死王(リッチ)伝説が有名なビンベルト帝国の首都跡地でだったな」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 バンは、今日の収穫を調べていた。

 盗賊団を結成してから既に十年の月日が流れた。


 初期は苦労したが、未だに草木が生えず呪われた土地として誰も寄り付かないビンベルト帝国があった首都跡地の地下に拠点を作り、掠奪して集めた物品をアルス公爵に横流しする事によって、強固な拠点と貴族の庇護が受けれるようになった。


 それから、飛躍的に大きくなり今や王国最大の盗賊ギルドとも言われるようになった。


 倉庫には、掠奪する際に付いたと思われる血がついた穀物の山があった。


「あいつら! こんなに血がついたら売れないだろうが!」


 そんな事を愚痴りながら、自分が支配しているバン盗賊団の今後を考える。

 アルス公爵に戦争がもうすぐ起きる可能性がある事を聞いた為だ。

 この拠点は、ヒューズ王国とベルド共和国の国境に近いため戦争が起きた時に巻き込まれる可能性がある。


 そこに、手下の盗賊が駆け込んできた。


「お頭! 騎士団の奴らが接近してきています!」


「騎士団? アルス公爵からは何も聞いてないぞ」


「それも第四騎士団ですぜ! 逃げた方がよいですぜ」


「第四騎士団だと! 撤収準備しろ! あいつらは俺たちと同族だ!」


 そう言った瞬間に、盗賊が背後から襲われて両断された。


「ん? それにしても数が多いなぁ。倒しても倒しても無限に湧いてくる。どこまでやれば依頼完了なんだろうか?」


 血だらけの全身が黒鎧の騎士が現れた。


「誰だ! お前は?」


「冒険者ギルドの依頼でバン盗賊団の壊滅依頼を受けた者だ。それにしても既に二百人は倒したはずだけど、この盗賊団のリーダーに会えないんだ。オカシラさんかな? 案内してくれると嬉しいんだけど?」


 二百人って盗賊団の半分じゃないか!

 それよりコイツ馬鹿にしてるのか? お(オカシラ)の意味を知らないのか? そうだ、馬鹿なら第四騎士団にぶつけれるかもしれない。


「し、知っているぞ。案内するから命だけは助けてくれ」


「おお! 助かった! 依頼が完了すれば良いだけだから、命はとらないよ」


 コイツ馬鹿だ!


 黒騎士を、ここに迫って来ている第四騎士団の所へ案内する。

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