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003 幻(まぼろし)の能力

 俺の能力は、(まぼろし)を見せる事である。


 実際は何も起きていない為か何かが変化するわけでもないので、体内にある魔力と言われる物も殆ど使わずに大変強力に作用するようだ。


 多くの実験を重ねると、(まぼろし)と言うより勘違いと言った方がわかりやすい能力かもしれない。人間の思い込みも関与するかもしれない。


 前世の記憶が消されなかった事から、神に近い存在にも効いたと考えている。その為に効果には結構な自信がある。

 いや、神に近い存在に転生の際に使ってしまった為に、効果がおかしいのかもしれない。


 結果から言うと誰かを指定して幻を見せる訳ではなく、世界規模で世界が幻を本当だと勘違いするような効果である。更に自由な内容で出現させられて、出現消失オンオフも自由自在。継続時間は寝なければ無制限のようだ。


 (まぼろし)で騙せる内容は、初期は視覚だけだったが使っている間に進化していった。

 現在は、視覚、味覚、聴覚、嗅覚と気配迄は実験で成功した。


 ただし、(まぼろし)に触れる事は出来ないし俺が寝ると幻は消えてしまう。


 いまだに触覚(さわること)だけは、成功していない。

 幻の本から仕入れた情報だと、この世界の人々が持っている特殊な能力は使用すればするほど成長する。

 能力が進化したら触覚までも幻を見せれるのだろうか?


 幻を利用して色々な事をして来た。


 俺が常に十メートル前に位置情報がずれていると世界に勘違いさせれば、十メートル前に幻による自分の後ろ姿が見える。

 そこを俺によく絡んでくる村では珍しい腕輪をした虐めっ子が、悪戯で攻撃するが当たらない。


 俺の幻を攻撃している虐めっ子を背後から殴った。


 不味い食事も前世に食べた美味しい食事と世界に勘違いさせれば、自分にも適応されるのか美味しい食事になった。

 しかし、美味しいと勘違いしても実際は貧しい食事で栄養は騙されない為に、俺の体は痩せ細っていた。

 幻の霞を食べて生きて行くことはできないようだ。


 村人から仕事を頼まれたら終わった幻を見せれば終わったと勘違いして、駄賃をくれるが次の日には何も終わってない。


 こんな事をしていれば、家族や村人から気持ち悪がられて追い出されるのも当然な気がしないでもない。

 町まで七日かかるにもかかわらず二日分の食料しか持たせない所から、完全にそうなのだろう。


 村を出て数時間歩くと一匹のゴブリンという人型の魔物に出会う。

 小柄の体格で全身緑色。粗末な服装と武器を装備している。

 安全確保の為に俺の姿は、前方十メートルに自分の位置がずれて見える幻を実行していた。


 十メートル先を歩く幻の俺が襲われていた。

 (まぼろし)なので、ゴブリンの攻撃は何も当たらない。

 世界が俺の位置情報を十メートルずれて認識しているので、俺が動くと幻も同じ動きをするし相手から本当の俺は見えない。


 ゴブリンから見ると実際の俺がいる場所と十メートルずれた位置に俺がいると思い込んでいるので、当たらない攻撃を繰り返していた。

 力尽きるまで見守る事にした。


 世界に幻を見せている為に、俺自身も十メートル前に自分が見えるので不思議である。


「村……なくな……」


 ゴブリンが諦めて何かやっと聞き取れる声でゴニョゴニョ言って去っていた。


 狙い通りなので立ち去るゴブリンを追いかける。

 追いかけたゴブリンの腕に苛めっ子と同じ腕輪らしき物が付いている。

 苛めっ子はゴブリンが落とした物を装備していたのかな?


 しばらくするとゴブリンの集落が見えた。

 不味い食料でも幻で美味しく食べれるので、ゴブリンが蓄えている粗末な食料でもよいから町迄の食料を奪う計画を立てていたのだ。


 集落には三十匹以上のゴブリンがいた。

 妙に村から近い場所である。村の人達は今までどうして気がつかなかったのだろう?

 一瞬だけゴブリン達に村が襲われる心配をしたが、落ちついて考えたら村には俺より強い人物が沢山いるので無用な心配だった。ゴブリンであれば余裕だろう。


 (まぼろし)しか使えない為に、俺の戦闘力は一般人以下である。

 ゴブリンと言えば成人寸前の子供でも一対一であれば一匹は倒せるレベルの強さだが、自分一人でゴブリンの集落を相手に戦闘する気は無い。

 村を出る前に考えた能力の応用を使用する。


 世界に上空十kmに俺の位置情報がずれている幻を見せる。

 そうすると、ゴブリンの目の前に行っても上空に俺がいるのだから、ここには居ないと言う判断なのか誰からも認識されないのだ。


 過去に消える方法を模索したのだが、俺が空気と同じ幻を試せば見えなくなると思って実験した時は、自分も空気になった幻覚をみてしまう為に目の前が真っ暗になってしまった。

 前世の記憶から考えると自分が透明になると光を透過するので見えなくなる為だろう。


 では、その場から自分が消える幻を見たらどうなるか?

 本当に消えそうで怖くて出来なかった。

 その為に、この自分の位置をずらす事によって見えなくなる幻に落ち着いた。


 見えなくなった俺はゴブリンの倉庫を発見して漁ると、木の実や果物、肉などを発見した。驚く事に人を襲って手に入れた物だと思うが金貨まであった。

 村では銀貨迄しか見なかったので少しだけ興奮する。

 戦闘せずにゴブリンの集落から食料と金目の物を持ち去った。

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