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028 受肉

 十階層の奥地にあるダンジョコアが存在する広間にリッチに案内される。


「これが、ダンジョンコアか!」


 菱形で五十cm程の赤い石。ちょうど広間の中心に一メートル程の高さに浮かんでゆっくり回転している。


『村人……いや、ゲンワクだったな。本当に我を人間に戻せるかの?』


「ダンジョンコアをいただけるのであれば、戻せますよ」


 賢者の石の知識に、リッチから人間に戻る方法が存在していたので、それを実施する予定だ。


「え? 戻るのにダンジョンコアは使うかの? 使ったら無くなるのじゃ?」


「賢者の石の知識から知りましたが、戻る方法は時間逆行ですね」


『そうじゃ。年間にダンジョンの余剰な魔力を集めてコンマ一ミリづつ大きくなっていくダンジョンコアじゃが最低でも四百ミリのコアと、フェニックスの羽、黒龍の鱗、キングスライムの核、そして賢者の石が必要なのじゃ。ゲンワクにダンジョンコアを渡せば材料が足りなくなるのじゃ。どうやって実施するのじゃ? 話が矛盾しているのじゃ』


「じゃぁ先に、人間に戻りましょう」


『私を騙しているのではないかの? おかしいのじゃ?』


 俺がダンジョンコアを欲しがっているが、人間に戻る際に使用すればなくなるので、矛盾する為に混乱しているようだ。

 俺の欲しいダンジョンコアは、俺が寝ても消えないダンジョンコアなので問題ないのである。


 幻の能力を使用してダンジョンコアをもう一つ出現させる。

 ん? 突然、体に力が入らない。気を失いそうになる。


「なんじゃと! ダンジョンコアが二個! 複製の能力かの? それだとしても五千年級のダンジョンコアなど複製したら魔力が尽きて……不可能なのじゃ! ゲンワクは何者なのじゃ? いや魔力枯渇の症状が出ているのじゃ? 大丈夫なのかの?」


 魔力枯渇? 幻でもダンジョンコアを出現させるのはスケールが違うのか? 目の前が暗くなった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ダンジョンコアが二つになったと思ったら、先程まで問題なく私と喋っていたゲンワクが倒れた。


 抑えている力が発動して生命力を奪ったのかと思ったが、魔力枯渇のような症状だと思った瞬間。


 ゲンワクが消えた。

 正確には服が残されていて、服の中に何かがいる。


 服をめくって中を除くと、想像出来ない何かがいた。

 新たなダンジョンコアを出現させた弊害だと賢者の石が教えてくれる。

 ダンジョンコアを出現させる為に使用した魔力が膨大だった為にゲンワクの幻の能力が低下している。

 ゲンワクが残した新たなダンジョンコアが点滅し始めた。

 もう長時間の間、ダンジョンコアを維持出来ない事も賢者の石が伝えてくる。


 今なら力が弱まったゲンワクが何者か知る事が出来ると思うが、急いでダンジョンコアと賢者の石と我が集めた各種秘宝を使って時間逆行を実施するべきだと判断した。


 今まで研究していた情報と賢者の石の知識を使って、時間逆行の魔方陣を出現させる。

 中心に我が立ち、全ての材料を設置し発動させる。

 骨だけだった体に、神経線維や肉が現れて我を構築……いや、元の姿に戻していく。


 無事終わると、広間には元から存在したダンジョンコアと服の中に入っている小さなゲンワクだった物が残った。


 ゲンワクだった物の横に座ると、丁寧に崩れないように、それを人間に戻った自分の膝の上に寝かせるように横たえた。


 まるで、昔聞いた御伽話の一シーンを思い出した。


「幻影騎士団達もこんな気持ちだったのか」


 新しく現れたダンジョンコアと賢者の石がなくなってから膝に乗せている物の魔力が増えていくのがわかる。

 もうすぐ強力な幻の能力が発動して、今見ている現実を忘れてしまうと予想がつくが大した事ではない。


 膝枕されているゲンワクが姿を現した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 目を覚ますと、十三歳程の黒衣をまとった可愛い女の子が俺を膝枕していた。


「ゲンワク、目が覚めたか? お前の正体を見た気がするがお前の目が覚めた瞬間に思い出せなくなった。お前の能力が戻った為だろう。何か神に近い能力を持っているのか? 我は、お前に永遠の忠誠を誓おう。主君よ」


 俺の顔に手を当てた。


「温かい。懐かしい感覚だ。長い夢を見ていたようだ。時間逆行の儀式は、無事に成功したぞ。ただし主君が持っていた賢者の石と主君が出現させたダンジョンコアは、無くなってしまったがな」


「他の材料は、持っていたんですね」


「そうじゃ」


「何故か俺の周りの関与した人々は、俺を主君と呼ぶようになるのですが、何故でしょうか?」


「うはははは! 主君は、世の中には疎いようじゃの。ダンジョンにこもっている我にすら知っている有名な物語を話すとするかの」

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