表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/62

025 ダンジョン攻略二日目

 朝起きるとドアを叩く音で起こされた。


 ダン!ダン!ダン!


「昨日の夜に、戻ってきたって聞いたんだけど!!」


 俺がいないはずなのに、部屋で寝ているのをフロイデに見つかって窓から脱出した。

 まだ、予定より早いのだがキティの部屋へ逃げて来た。


「おはようキティ」


「何故、私の部屋にいる? お前のせいでぐっすり寝れなかったぞ」


「早速行きましょう」


 キティの部屋に小型の転移門が現れる。


「私の部屋にあり得ない物が……飯ぐらい喰わせろ」


 昨日背負っていた荷物から朝食の干し肉と水を取り出して食べ始めた。

 食べ終わると溜息をつきながらキティが武装をして、すこし悩んでから荷物を持たずに転移門をくぐった。

 そのまま、二階層を進んで落とし穴から第八階層のフロアボス前に到着した。


 目の前に首が三本ある大型の狼みたいな魔獣がいる。

 大きさは十メートル超えている感じかな。

 前世の記憶だとケルベロスに類似している。

 まだ気がつかれていない。


「ゲンワクが、召喚術で何かを出して惹きつけてくれ。その間に私が首を叩き斬る!」


「無視して九階層行きませんか?」


「無視って? 奴の後ろに入り口があって倒さないと無理だろ!?」


 確かにケルベロスの後ろに大型の門があて、開けないと下に降りれない感じだ。


 誰が門をつくたんだろう?


『第九階層のフロアボスが作っています』


 無意識に賢者の石を触っていた。

 と言う事は第九階層のボスって頭良さそうだな。


『前世でいうと不死者、この世界だとヴァンパイアですね』


「どうするんだ?」


「やはり、九階層に倒さないで行きましょう。あ! こんな所に抜け道が!」


 ここから九階層への扉の裏に繋がる地下の隠し通路を幻で出現させる。


「……まさか本当に神様なのか? あり得ないだろ?」


「偶然見つけたんですよ!」


 隠し通路の入り口を開くと階段になっていて、門の方向に地下通路が伸びていた。


 通路を抜けると天井があって持ち上げると第九階層へ行く門の裏側に着いた。

 通路を通過中に幻を消すと生き埋めになるのかな?


「本当に門の裏に着くとは……」


「あ、今だけですよ! 明日にはないですからね!」


 目の前の今まで来た隠し通路が幻のように消えていく。


「わかった! もう慣れた!」


 気をとりなおしてキティが第九階層攻略を開始した。


 九階層の割には、弱い死霊系のモンスターであるスケルトン、ファントム 、ワイトばかりで強力な魔物はいなかった。


 十階層にいけそうな場所に、大きな洋館が建っていた。


「まじか? 何故家が? もうやだ。ゲンワクとダンジョン探索は二度としないぞ」


「これは、俺と関係ないだろ!」


 接近すると門が開いて行く。

 中からメイドの服装の若い女性が歩いてきた。


「ようこそ! 我が主人がお呼びですのでどうぞお入りください」


 話が通じるなら、すんなり十階層に行かせてもらおう。

 案内されるまま洋館の奥の広間に案内された。


 二十歳ぐらいの美形の紳士が座って待っていた。


「第八階層に扉を造って門番を置いたのだが、どうやってここまで来たのだ?」


 キティを見ると震えていた。


「ゲンワク、不味いぞ。こいつは生きて帰れない。ヴァンパイでも最悪の始祖だ。レベルⅧはある。絶対に無理だ。だからこのダンジョンは第八階層以降の攻略が出来てなかったのか……噂すらなかったから来訪者は全て確実に殺されていたんだな。逃げれない」


「だんまりかい? おかしい話だな? お前は処女だな。久々の食料だゆっくり味わおう」


「それは困るんですが? 十階層に用事があるんで通してもらえませんか?」


「なんだお前は? そこの女性の付き人じゃないのか?」


 賢者の石を触って弱点を探る。


『この世界に四人いるヴァンパイアの始祖の一人。メッキ・フォグ・レイターで弱点は無し』


 弱点がない?


『この世界では無敵に等しく倒されても灰から数年で復活します。封印されても数年で自力で解除して出てきます』


 仕組みはわからないがファンタジーだな。弱味は?


『最高級のワインを探しています。ワインには糸目をつけないです』


 げ……想像の斜め上だな。


「メッキさ…様? ワインが好きなんですか?」


 メッキの目が驚きで大きく開かれる。


「何故、私の名前を知っている! 答えなければ今すぐ殺す」


 話が通じようなので、説明するよりも直接知った方がよいかと考えた。

 首からかけている賢者の石を取り外して渡した。見たことがあったのか、それが何かを知っていて震える手で俺からメッキが受け取った。


「……お前は……これは賢者の石だと……いや答えなくて良い。石から情報を…得られる……レベルⅠM!?……」


「とりあえず争う気は今のところ無いです。メッキ様がワインに目がない事を賢者の石で知りました。今日しか飲めないですが、これで十階層へ通してくれませんか?」


 この世界で最も貴重なワインを幻で出現させてみせる。


「いえいえ、ゲンワク様、私ごときに様はいらないですよ。メッキとお呼びください。ワインの件ですが、既にそのワインは我が酒蔵にありますゆえ、ゲンワク様が来られた異世界のワインを頂きたい」


 賢者の石を私に返して、さっきの偉ぶった態度から一変して下手になってしまった。


 戻ってきた賢者の石を触って確認した。


『マスターの正体とステータスを見たためです』


 レベルを誤認したのかな? レベルⅢに偽装したレベルⅠなんだが?

 メッキに、前世の記憶があるワインを片っ端から出現させて渡した。

 私が寝ると消えてしまうので、今日中に飲むように指示した。


 洋館の奥に第十階層への入り口があって、案内されて別れた。


「始祖だったのだが? 始祖が怯える? ゲンワク……お前は……いや、なんでもない」


 不味いな。ありのままを話さないと別の意味で誤解しそうだな。キティが化け物を見るような視線で私を見つめて距離を感じる。


 十階層の入り口で転移門を開いて、戻ってから寝ることにした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 数年振りに地上の冒険者がやってきた。

 今回は処女の女性と荷物持ちの下男だけで無粋な集団ではないから屋敷に案内する事にしよう。


 前回は、巨大な蜘蛛を門番にしていたがレベルⅥ程度の冒険者に倒されたので、支配している中で最強のケルベロスを置いたが、それを倒したのだろうか?


 会うのが楽しみだ。


 会ってみると女性から濃厚な恐れと畏怖の感情が感じられる。大変美味しそうだ。

 特徴がない下男からは、何も感じない。

 おかしな話で、弱いとしても弱さを感じる筈だがそこに存在していないような不思議な感覚だ。


 下男が、数百年間伏せていた私の隠された名前を言い当てた。

 あり得ない! しかも……賢者の石? 知識では知っていたが初めて実際に見たぞ!

 下男から無造作に賢者の石を渡された瞬間で全て理解した。


 この世に存在を認識し初めて恐れた。

 私に恐れを与える存在がいたとは。

 絶対の不死の自信が一瞬で粉々になった。


 この下男、いやゲンワク様は……それ以上思考すると思考が停止しそうになる。触れてはいけない感じがする。

 意識などない筈の賢者の石から異世界の様々なワインの情報が求めていない筈だが流れてくる。確かに飲みたい!

 賢者の石がゲンワク様の支配下にあるからか?

 石を返却してゲンワク様に従う事にする。


 十階層にいるルヘン様もわかってくれるだろう。

 いや、賢者の石があるのだからルヘン様の願いが叶う可能性がある。


 ゲンワク様に頂い大量のワインを飲みまくって酔ってきた。

 本当に異世界のワインは、美味しいな!

 帰りにもまた頂きたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ